「市場調査」について 

 始めに、「『商品を売る』こととはどういうことなのか」考えさせた。普段は「買う立場」、つまり消費者である子どもたちが、今回は売る立場になる。自分が物を「買う」と決める時は、「デザイン」「味」「値段」「使いやすさ」「必要性」など、買う物によって、いろいろなことを基準にしていることに気づかせた。せっかく自分たちが考えたのに、売れないのでは意味がないため、「売れる和菓子にするためには、どうしたらよいのか」ということを課題にして話し合いをした。

「安いものだったら、みんな買う。」
「でも、おいしければ少しは高くても買うと思う。」
「見た目がよかったら買うんじゃない?」

 話し合いの中で、好みや年齢などによって、その「買う基準」が違ってくるということに気づき始めた。今回、自分たちが売ろうとしているものは和菓子である。一体、どんな人が、どんな物を求めているのか、知ることが必要になってきた。
 売るときに大切なのは、売る相手「ターゲット」を決定すること、買う人の好みに合わせた商品にすること他の商品との差別化をはかることということが分かった。
 そこで、買う人のニーズを探るために、近くのスーパーで市場調査を行うことにした。まず、自分たちが知りたいことをまとめ、アンケートの項目を話し合って決めた。全部で10項目の質問を考えた。次に、市場調査をするときに、どのように声をかけたり質問をしたりするとよいのか考え、シュミレーションをしながら練習をした。子どもたちにとって、市場調査が初めて外に出る活動になる。そこで、知らない人とのコミュニケーションをどうやって取ったらいいのかを考えた。

 調査をはじめても最初は、子どもたちは、なかなか声をかけられなかった。もじもじしているうちに、お客さんは過ぎ去ってしまうこともあった。勇気を出して声をかけても、断られることもあった。しかし、そんな時でも「ありがとうございました。また、お願い致します。」と答えることを事前にみんなで決めていた。最初の10分間ほどは不安いっぱいで過ぎていった。しかし、あきらめず何度もやっていくうちに、消極的だった子どもたちの姿勢がだんだん変わっていった。丁寧に答えてもらったり、「がんばってね」の声をかけてもらえると、うれしくなり、次々にお客さんに声をかけていくようになった。
 たとえ失敗しても、次にチャレンジしていくことの大切さを、子どもたちは感じることができた。いつもは、家族、友達、先生と、知っている人とばかり話すことが多い子どもたちが、知らない人に話をしに行くというのは勇気がいることだったと考えられる。「一人だったら恥ずかしくてだめかもしれないけれど、ペアの子が助けてくれたから、頑張れたよ。」と発言している子どももいた。
 人と話すのが得意な子、不得意な子がいるので、ペアの組み方も工夫していた子どもたちだったが、「Fさんが、すぐお客さんの所へ行って、びっくりした。いつも、そんなに話すほうじゃないのに・・・」と、友達の意外な一面に驚いていたペアの子もいた。多くの情報を手に入れるという目標に向かって、どの子も一生懸命に取り組むことができた。


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