「中心となる活動の工夫」

 中心となる活動とは,単なる一行事ではなく,それに取り組む過程を大切にしながら,発生した問題を話し合ったり,良さを認め合ったり,達成感を味わったりして,自分を高め,仲間関係を深め,学級集団を高め,学級目標を達成していくための活動すなわち、学級目標具現の場の中心としてとらえました。
 発達段階に応じた中心となる活動は,学級単位ではなく,学年単位で設定しました。活動を仕組む上での留意点を次のようにしました。
活動のレベル
・低学年は、仲間と仲良く助け合って活動する。
・中学年は、仲間と協力し合って活動する。
・高学年は、仲間を信頼し支え合って活動する。 
 活動の内容
・1回の行事ではなく,繰り返し継続できること。
・徐々に発展できること
・学年目標や学級目標の具現をめざせること。
・年の発達段階に合わせた活動を設定すること
・全校的な系統性

 以上の留意点を踏まえ,本年度は,次のように学年ごとに中心となる活動を計画しました。




 つづいて意識の変容と手立てを明確にした学級経営構想図や題材指導計画の作成と評価についてです。特別活動年間計画では、学習指導要領の特別活動の共通内容(1)のアに、年間15時間ほど本研究に関わる話合い活動などを位置づけるようにしました。内容(1)のアは,「学級や学校における生活上の諸問題の解決」をねらい、話合いが,集団討議による集団目標の集団決定として行われ活動の成功や、それによる自己肯定感に結びつくと考えられ、本校の研究主題の具現化にとって、重要なはたらきをすると考えたからです。



 学級経営構想図は、いわゆる学級経営案のことで、中心となる活動と話合い活動を位置づけ、それによって予想される学級目標到達までの学級集団の意識の変容を入れるようにしました。学級経営構想図における中心となる活動は、学級の実態に合わせ、特色を出します。また、日常生活とつなげる工夫をしました。



 題材指導計画は、中心となる活動ごとに作成するいわゆる単元指導計画のことで、中心となる活動と話合い活動、教師の出場、それによる児童の意識を構造的に示し、意識の変容について見通しがもてるようにしました。また、道徳の導入や振り返りで中心となる活動を生かし、活動における自分の良さを自覚する場面を設定しました。

 活動の節目で、それまでの成果の評価をし、次に生かすことは大変重要です。そこで、評価について次のように工夫しました。自分や学級の高まりが分かる評価について工夫をしたのは,児童個人へのアンケート方式や作文などによる自己評価と学級の話合いによる集団評価です。個人へのアンケート方式は,たとえば、学期末に学級目標の各観点について,個人、学級別々に◎○△で評価し、集計することで、個人の頑張りや、学級の学級目標への到達度が見えてくると考えました。
 また,学期の振り返りの話合いを毎学期行うことで,その学期の宝物をみんなで認め合い,次の学期への課題を確認することができると考えました。さらに、学級目標へのあゆみの分かる教室環境についての工夫をしました。 学級で話し合って決めたことが学級の宝として,いつも全員に意識されるよう、話合いで決まったこととよかったことを記録していくこと、背面掲示に1年間の学級のあゆみを掲示していくことの2つを大切にしました。学級のあゆみの掲示物については,行動目標のキーワードを付けたり,色分けをしたりして、学級目標に関わってどのような価値があるか分かるようにしました。






「話合いの活動の工夫」
 話合いをどのように進めていくか,本校の基本的な流れを決めました。見つける段階では、学級会の前に担任と係や司会者が話合いの議題や進め方について準備します。学級会の話合いの時間は、5つの段階に分けました。議題を提案する段階を「つかむ段階」とし,必然のある議題を設定します。導入の話合いは,「気づく段階」とし、今できていることの価値観や課題の共有化をねらいます。次の議題に迫る話合いを「深める段階」とし、価値の模索と深化をねらいます。話合いの出口の段階を「決める段階」とし、目指すべき価値観の共有化や実践化をねらいます。終末の価値づける段階を「まとめる段階」とし、学級目標と関わらせての価値付け、実践への見通し、話合いの評価をします。事後の実践を「やってみる段階」とし、話し合うことの良さを実感することをねらいます。また,児童が司会を務め,児童主体で話合いを進めることを目指しました。しかし,初歩の段階では,教師の指導・援助が必要であるため,学年の発達の段階に合わせて,次のように話合いのレベルを決めました。
・低学年は、教師が教えながら,教師と一緒に
・中学年は、教師の助言を受けながら
・高学年は、自分たちが中心となって
このように話合いの段階とレベルを全校で統一しました。


 次に話合い活動の工夫についてです。まず必然のある議題の設定の工夫についてです。全員が自分のこととして切実に考えられる議題が必然のある議題であり,最も大切なことです。そのために、つかむ段階で、児童の日常の生活を改善する議題を提案したり、気づく段階で今の良さを確認し合った後、作文やアンケートなどで切り込みを入れたりしました。こうしたことは,向上心を喚起したり,新たな問題意識をもったりすることに有効であると考えたからです。
 学級目標への意識を高め、価値観を共有する話合いにするための手立てについて説明します。児童主体の話合いであるべきとはいえ,全てを任せていては,学級集団の向上につながる望ましい話合いになるとは限りません。そこで4つの工夫をしました。
 1つ目は、議題に対する事前意識調査です。児童は,自分の考えをもって話合いに参加できるうえ、教師は個々の考えを把握して話合いの流れを予想し,出場を精選できると考えました。
 2つ目は、司会者用の「話合いの進め方マニュアル」と「学級会計画表」の作成です。「マニュアル」は,事前に教師と打ち合わせ,どこでどんな言葉を言うか書き入れて、司会に臨めるようにしたものです。学年の発達段階に合わせて作成しました。「学級会計画表」では、学級ごとに議題や提案理由を書いて掲示したり,学級会が終わった後は、決まったことと、良かったことを書き加えたりして、教室に掲示して児童が常に意識できるようにしました。
 3つ目の工夫は、理由のある発言のうながしです。低学年から、理由を付けて発言することを意識しています。意見の裏にある各児童の価値観を引き出すことに有効であると考えたからです。
 4つ目の工夫は、教師の出場の精選です。大きく3つの場面に精選しました。第1は,意図的指名です。学級目標に関わるような価値観を持った子を事前調査でつかみ、意図的に指名して、それを学級全体に広げることをねらいました。第2は,切り込みです。教師が児童の意識アンケートや画像などの資料を示すことで、思考の転換やより高い価値に気づかせることをねらいました。第3は,価値付けです。児童の意見や決めたことに対して,学級目標と関わらせながら価値づけをすることで、全員がその価値観を共有できることをねらいました。
 教師は,この3点について事前に計画して学級会に臨むことにしました。さらに、教師の出場を、発達段階に合わせて低学年は多めに、高学年は少なめになるようにしました。これら4つの工夫によって、練り合い、深まり合いのある討論へつながると考えました。

 次に実践化の在り方についてです。話合いで高まった意識を実践につなげるため,決める段階で,次のことを工夫しました。
 1つ目は、決定事項は具体的にすることです。いつ,どこで,誰が,何を,どうするなど,詳しく決めることで,その日の内にすぐ実践に移せると考えました。
 2つ目は、班や個人の目標をカードなどに書くことです。学級の目指す方向がまとまった後,その具体的方法を練り,書くことによって、個人の意識を高め確固たるものにできると考えました。
 3つ目は、話し合った後すぐに実践することです。意識が高い内に実践することは、活動の成功を生み、児童の自信につながると考えました。

成果と課題

成果
  1. 日常生活を改善する議題を取り入れることにより、自分たちの問題に気づき、解決することができるようになってきたこと。
  2. 学級目標に誇りをもち、何事にも自信をもって取り組めるようになったこと。
  3. 学級の高まりを自覚でき,学級の宝物とすることができたこと。


課題
  1. 本音を出し合うことでさらに練り合い,深め合う話し合い活動ができるようにすること。
  2. 板書計画や意見の価値付けを大切にすることで,高い価値に気づくようにすること。


今後は、自分たちで問題を見つけ、マニュアルなしでも話合いを行って、その問題を解決できるようにする必要があることです。

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