飛騨市立神岡中学校

           滝村 一彦 教頭



テーマ

「神岡中学校における 連携型中高一貫教育」



  飛騨市神岡町は、岐阜県の北部に位置し、昭和35年は27,603人で人口のピークを向かえました。このときの神岡中学校は全校生徒数1031人でした。 この後、高度経済成長期に入り、神岡鉱山所の合理化、山村地域の過疎化などにより現在の人口は9,404人です。今年度、神岡中学校は全校生徒212人です。 平成20年に策定された岐阜県教育ビジョンでは、連携型中高一貫教育校を拡充し、中山間地に新たに設置するとあります。この方針に基づいて飛騨市神岡町に県内4番目の中高一貫教育校が誕生いたしました。
 学校経営方針は「志を高く掲げる学校づくりです」。「志」とは、目的・目標を立て、そのことをやり遂げようと心に決める ことです。目標をしっかりもたせて活動させることが最も重要なこととしています。 キーワードである「自分から」は、自立心をもたせること、「学び合い」は、コミュニケーションの力を高めていくことととらえ、平成21年度から「教科指導を通したキャリア教育の推進」を研究主題とし、教科指導の中で人間関係形成能力と情報活用能力の育成に努めました。このことが認められ、昨年「キャリア教育優良校」として文部科学大臣賞を受賞しました。
 中高一貫は『ともに 育てよう 元気な神岡の子』をスローガンとしています。このスローガンを大切にして、飛騨市立神岡中学校、山之村中学校、飛騨神岡高等学校が、総合学科をもつ高校と連携していることや地域全体が子どもを育てる土壌であるという特色を踏まえ、連携型中高一貫教育を推進しています。 柱は3つあります。

  • 1つ目が「確かな学力を身につけた子を育てる」
  • 2つ目が「夢や目標に向かって、挑戦する子を育てる」
  • 3つ目が「地域に愛着をもち、貢献できる子を育てる」

この3つの柱をもとにして、元気な神岡の子を育てたいと考えております。



「確かな学力を身に付けた子を育てる」

 飛騨市の学習習慣確立の指針をもとに『話す人の目を見て、だまって最後まで聞く』と『「〜です。(わけは)〜です。」結論に根拠を付けて話す』ことに、取り組んでまいりました。 目を見て聞くことは、相手を大事にしている、信じているという心と心をつなぐ一番大切な思いやる姿です。笑ったり途中でさえぎったりせずに、だまって最後まで目を見て聞き取ってくれる仲間の姿があるからこそ、安心して話そうとする姿が生まれます。



 グラフは、昨年度の神岡中学校全生徒211名+山之村中学校4名(計215名)の習習慣確立の月別達成状況です。 飛騨市では昨年度から『話す人の目を見て、だまって最後まで聞く』と『「〜です。わけは〜です。」結論に根拠を付けて話す』ことに、取り組んでまいりました。グラフはそれぞれを毎月各学校で調べたものです。 黒の線が、目を見て聞くことができている生徒数で、ほとんどの生徒が目を見て聞くことができています。 この中学で身に付いた姿が高校の学ぶ姿に現れています。

  授業での話し合いでは、どこから考えたのか根拠が大切になってきます。自分の考えを「〜です。わけは〜です。」と結論に根拠をつけて話す話し方を身に付けることが、本時でねらう見方・考え方、感じ方までに高めるための基盤となります。 写真は、黒板にある資料を根拠として、連立方程式を立てています。


 中高一貫教育は昨年度から始まりましたが、今年度、神岡中学校の全校生徒が基礎・基本的な学力の定着を目指して、数学と英語の単元テストをファイルに綴り、定期テストや休み明けのテストで活用したり、復習したりする取り組みを始めました。 このファイルを「 Step by Step 」綴りといいます。この「 Step by Step 」綴りをもとに飛騨神岡高校の教員が面談を行ないました。 この面談を通して、中学3年生の取り組みの様子を確認でき、生徒の学習への意欲が喚起できました。 7月10日に面談を実施しました。 この面談を実施するにあたっては、高校の数学と英語の先生が、あらかじめ中学3年生を知ることを目的に、それぞれT・Tの授業を行ないました。 生徒は、『今日の「Step by Step面談」で私は最初とても緊張しました。でも、話していくうちにリラックスして質問に答えられるようになりました。 自分の苦手な部分が確認できてよかったと思います。その苦手を克服するための勉強法を教えていただき本当にありがたかったです。今日から勉強方法を見直してみようと思います。』といった、感想をもちました。


 写真は、飛騨神岡高校での授業の様子です。神岡町では6年前から、地域として高校の授業を、小学校と中学校の教師が参観しています。 注目していただきたいのは、左隅にある「本日の課題」という表示です。 高校の先生が、中学校の授業参観や英語・数学でのT・Tなどを通して、分かる授業をめざして授業改善を行っています。 また、教員の授業交流として、@お互いの授業参観、A中学校の英語・数学で、高校の教員とのT・T授業とそのための事前打ち合わせ、B高校の初任者が1日中学校で研修をおこないました。

 教員の授業交流として、市教研、全校研、公表会などの機会を捉えて、中学校の授業を高校の先生に向けて公開し、交流をもっています。

 T・T授業について、中学校の授業で高校の教員とのT・T授業を行なっています。 授業を実施するにあったて、事前打ち合わせを行ない授業内容と授業形態などを話し合いまいました。 高校でのT・T授業については、中学校から加配の社会科教員が「産業社会と人間」で年間をとおして月2回程度、また、教頭が「学び直し」講座に年間をとおして月2回程度、高校でT・T授業を行なっています。


 高校には、教科の高い専門性をもった教員がいますので、それを生かした交流を行なっています。 写真は、高校で短歌や俳句の指導を専門とされている先生を招いて、短歌について国語の授業で出前授業を行なっている様子です。 生徒は、指導を受けて、すぐに思ったことを短歌に表していました。



「夢や目標に向かって挑戦する子を育てる」

 7月31日に『中学2年生体験授業』を飛騨神岡高校で実施しました。 中学2年生が、総合学科が特色の飛騨神岡高校で商業や工業の授業を受けることで、早期に進路について考えるきっかけとしたり、高校について関心をもったりすることができることをねらいとしています。 体験した生徒の一人は、 「僕は、1時間目で工業の電気分野の授業を受けました。2時間目は数学でした。体験授業で全部ではないけれど、少しだけ高校のことについて分かったような気がします。飛騨神岡高校に関心がもてました。」 という感想がありました。 また、『高校で授業を受けて』の感想から、「中学校の勉強が高校にもつながっていることが実感できたので、これからは、しっかり理解できるように勉強していきたいです。」や「中学校で習ったことがそのまま高校につながるんだなと思いました。英語の授業では、「pictures」「student」「couldn‘t」など、今の中学校で習っている単語が文章の中に出てきたのでびっくりしました。高校の授業と中学校の授業は自分なりでは、変わっていないことがわかりました。これからの授業を今からでもしっかり受けたいと思いました。」などがあり、勉強が中学校、高校とつながっていることを実感し、これからの勉強を大切にするという決意をもてました。このことは、中2の体験授業の成果といえます。別の生徒は、「2教科の授業を受けてみて、1つ1つが難しいとことが分かりました。そしてついていくことができないときがありました。中学校のことを完璧にして、次に進めることができるようにしたいです」という感想をもちました。中学2年生は中だるみと言われますが、その中2の夏休みに、体験授業を実施し、しっかり勉強に取り組もうという気持ちをもった生徒がいたことも貴重な成果といえます。

 神岡中学2年生が、飛騨神岡高校の中田進路部長から出前講座の授業を受けました。 2年生の生徒は、「僕は今あまり勉強をしていなかったので、今日の話を聞いて、まずい!と思いました。入社試験では、中学校のことがたくさん出ることも分かったので、今日からしっかり勉強しようと思いました。また、僕が苦手と思うことは、自分から何かを言ったりすることや、人と関わったりすることなので、ちょっとでもよくなるようにしたいです。」という感想がありました。 このように、キャリア教育に立った連携型中高一貫教育を推進することで、中学2年生という時期から、自己の生き方を進んで考え、主体的に進路選択ができる力の育成を目指しています。
 神岡中学3年生が、7月31日に飛騨神岡高校でオープンスクールに参加して授業を受けてました。 本校の生徒は、3年生70人中44人が参加しました。 数学の先生には、T・T授業を受けたり、面談を受けたりして、既に面識をもっているので 和やか雰囲気で授業がおこなわれました。
 中学3年生と高校生は、部活動交流をしています。 中学生と高校生が合同練習することで、中学生はより高い技術を体験したり、中学校にはない部活動を体験したりすることができます。 高校は、より高度な学習をするところですが、部活動も高校生活の一つの柱となる教育活動です。それをあらかじめ体験できることは、進路を選択する参考となっています。



「地域に愛着をもち、貢献できる子を育てる」



  飛騨神岡高校のMSリーダーズと本校生徒会執行部が協力して、街頭で交通安全を呼びかけました。 参加した生徒は「下校時交通安全運動」として、行き交う車や通行者にお辞儀をしたり、挨拶したりしました。 中高一貫教育の中で、高校生と中学生が直接交流できる機会として、貴重な地域貢献できる取組となりました。 連携の活動についてHPや学校だより、広報紙「シェークハンド」で、地域や保護者の方々にPRしております。 また、神岡ニュースという地方紙へ情報を提供したり、飛騨振興事務所の玄関に「連携コーナー」を作ったりして情報発信に努めています。 今後とも、活動を発信し、地域へ伝えていきたいと考えています。



最後に中高一貫教育に関する成果と課題についてです。

神岡町連携型中高一貫教育は今年で2年目です。これからも、本校が目指している志を高く掲げる学校となるよう取り組んで行きます。