実践力のある子どもの育成

〜主体的に考察・判断・表現できる子をめざして〜

               
発表者 加納小学校 高橋 雅博 教諭

 加納小学校の教育目標は、「美しい心で考えてやりぬく子」です。願う子どもの姿は、みがかれた知性、ねばり強い意志、豊かな情操、たくましい体を身に付けた姿です。願う子どもの姿の育成には、その子どもの所属する学級づくりが、基盤となります。授業における雰囲気や学習活動の高まり、深まりは、この学級づくりの善し悪しが左右すると言っても言い過ぎではありません。
 次に研究主題について説明します。本校は36年前から「実践力のある子どもの育成」という研究主題のもと、研究実践に取り組んでいます。次にあげるものが本校が考える「実践力」です。


『一人一人の子どもが、積極的に学習環境にかかわる「感情・意志」をもち、課題解決に向かって既有の「知識・技能」を機能させて、多様な見方・考え方や解決方法を「表現する」中で「思考力・判断力」を駆使し、自ら問題を解決する喜びをもつ。』子をめざして、平成23年度から研究テーマを次のように設定しました。

『主体的に思考・判断・表現できる子をめざして』

この願う子どもの姿を、特別活動で言うならば、 「学級や学年、学校の生活を豊かにしようとする願いをもち、議題や題材に対して仲間と話し合ったり活動を進めたりする中で、互いの考えに触れたり、自他を見つめ直したりすることを通して、これまでの生活を改善するための実践策を生み出していく。」姿であると考えています。 全国的に「いじめの問題」が取り上げられ、改めて「よりよい人間関係の育成」や「思いやりの心の育成」が重要視されている今、私たちは年間35時間という限られた「学級活動」の時間の中で、何をこそ1時間をかけて指導すべきかを考えて、「加納小の学級づくり」に基づき、年間指導計画に加除修正を加えながら、実践を重ねています。
 その学級づくりにおいて、全職員が同じ考えの基ですすめられるようにと、 これまでの本校の指導の歩みをまとめた資料を作成し、実践してきました。 学級づくりは、 学級内での集団活動において、 仲間とかかわることを通して、よりよい人間関係を築くこと、自己を生かす能力を身に付け、思いを表現し伝えていく力を養っていくことを目指しています。 そして、意図的・計画的・段階的に学級活動の授業を核としながら、教科等の指導の充実に向けて取り組んでいます。 本日、その資料として、別冊で「加納小の学級づくり」を販売させていただいております。

 研究内容1は、「指導構想の在り方」です。 研究内容2は、 「指導方法 及び みとどけの視点と指導・援助の在り方」です。 児童理解を基に、主体的に思考・判断・表現していく子の育成に向けた指導計画を作成し、 本時の指導方法を工夫し、明確な視点で児童の姿をみとどけ、個に応じた指導・援助を具体化していくことにしました。

 研究内容1−(1)「児童理解の内容と方法」と1−(2)「指導計画の工夫」について
 実践力を構成する、「願いや意欲といった感情・意志」「活動や仲間に対する考え方といった思考力・判断力」「活動内容や方法の理解といった知識・技能」がどれほど身に付いているかを、「観察」「聞き取り」「作品やアンケート、活動計画表などの児童がかいたもの」から捉えます。ここで捉えた実態を、6つの視点から要因分析を行います。 要因分析を基に、「改善の方向の具体化」を図り、「指導内容の重点化」をしていきます。 そして、願う児童の姿に向け、指導構想を立てていきます。どの題材、単元においても、学びの必然を生み出し「感情・意志」を高める場や、「知識・技能」を身に付ける場を意図的・計画的に位置付けた指導構想を立てています。本時を迎えるにあたって、朝の会や帰りの会といった短学活での指導や、休み時間における自主的な調査活動、集会活動などを意図的に位置付けます。また、道徳の時間との関連も図っています。 そして、これらの学習活動をへることによって、身に付けた「知識・技能」を機能させて、「表現する」中で、「思考力・判断力」を働かせて、問題を解決していけるものと考えています。

「言語活動」と、研究内容2−(1)「指導方法の工夫」について
 特別活動において、大切にする言語活動は、次の3つであると考えます。



つまり、全ての特別活動において、言語活動の充実が必要不可欠であり、主に次のような指導方法が有効であると考えています。低学年の学級活動では、実際にやってみることでどんな気持ちになるかを考える「再現や試しの活動」を位置付けました。中学年の学級活動では、「意図性のある資料」を活用したり、「自他の考えを交流する場」を位置付けたりしました。 高学年の学級活動では、「児童の自主的な調査活動」や「組織別の話合いの場」を位置付けました。


研究内容2−(2)について
  指導・援助においては、次の様なことをねらって行っています。
「願いや提案理由を基にして判断し、理由や根拠を明確にして話し合うことができる。」
「活動の内容、場所、時間、必要な知識や技能など、実行する上での見通しをもって話し合うことができる。」「多様な意見を整理し、論点や対立点などを明確にして話し合うことができる。」
「みんなにとっても、自分にとってもよいようにするためには、また、多様な他者や意見のことにも思いをめぐらしたり尊重したりしながら、どの子にとってもよいようにするためには、どうしたらよいか考え、話し合うことができる。」
「仲間から受容され、支持されることによって、集団の中における自己の姿を客観的に理解し、自己の認識と自信を強めることができるようにする。」
 そのため、事前や本時の児童理解を基に、学級会で、集団決定するための話合い(学習指導要領に示されている活動内容1)における指導・援助について話します。学級会当日までにこのような用紙を用いてプログラムを作成します。提案理由は願いや条件をはっきりさせ、話し合う内容が絞られるようにしています。さらに学級会においては、発達の段階や指導内容に合わせて指導・援助を行うことによって、理由や根拠を明確にして意見が言えるようにしています。そうすることで、みんなも自分も納得がいくように集団決定していくことができるようになると考えています。

成果
・計画的、系統的な指導計画により、発達の段階に応じた、話合いの進め方が身に付いてきた。
・他者理解、自己理解の場を位置付けたことで、自分の姿を振り返ることができた。
・特別活動を重視した学級づくりにより、よりよい人間関係を築き、考えを対立させたり、指摘し合ったりしながら、高め合っていくことができた。

課題
・身に付けた確かな知識・技能を活用して、段階的に思考力・判断力を高めていく指導・援助を充実していく。
・自他のよさを生かしながら、学級集団としてよりよい考えや方法を生み出すための具体的な指導・援助の在り方について、今後も実践を積み重ねていく。



夏季ゼミではさらに4つの実践例について紹介されました。詳細が知りたい方はご連絡ください。