魚類へい死原因推定マニュアル

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 魚は生き物なのでいつかは死にますが、一度に沢山死ぬのは何らかの外部要因が強く働いたことによります。魚類へい死の原因を釣り場で推定するための参考にご利用ください。なお、当ページは「魚類へい死対応マニュアル(平成11年度 静岡県)」から抜粋し、当方で整理、一部加工しています。
 年間20数件(月2件のペース)のへい死事故が県に報告されていますが、報告されていない事故は他にも多数あると推測されます。因みに"へい死"とは、簡単に言うと"のたれじに"のことです。
当サイトで「へい死対応マニュアル」を紹介した事がきっかけになり、静岡県ではコイヘルペスの記述を追加し、平成21年4月に「魚類へい死対応マニュアル(改訂版)」を発行しました。内容を知りたい方は静岡県生活環境室のホームページにアクセスを。

へい死の原因と特徴

原 因

特 徴

創傷・感染症

 創傷による死亡は外的な傷の他、感染症の進行に伴って多くの場合に体表またはエラなどにできた潰瘍からの出血によることが多い。
 感染症によって死亡する場合は、魚種別に感染し、死に至るまでに一定の時間を要するため、特定の魚種が広範囲に、数日間にわたって死亡する場合が多い。感染症にはコイヘルペス病(KHV病)、アユ冷水病等がある。

酸欠

 流量の減少、水温の上昇、貧酸素層の湧き上がりなどにより、水中の溶存酸素が少なくなり、多種類の魚が数時間にわたって死亡することが多い。
 生存魚は横転または鼻上げ(水面で口をパクパクさせている状態)していることが多く、死亡魚は閉口していることが多い。原因が酸欠であるかを確認するには、事故現場の水を汲みんで簡易式エアーポンプで空気を送り込み、横転または鼻上しているげ魚を入れて回復するかを30分ほど観察する。


 無機顔料製造業、金属製品塗装業など酸を扱う事業場からの流出や農地からの肥料成分の溶出により発生する。へい死魚の特徴として、体色の白化、眼球の白濁、体表粘液の減少がみられる事がある。実験によるとpH3で約30分でアユ、コイが全滅。

アルカリ

 河川事故、道路工事によるセメント等の流出やアンモニアを扱う事業場からの流出により発生する。へい死魚の特徴として、体色の黒化、眼球の突出、体表からの粘液分泌がみられる事がある。実験によるとpH11でアユが約10分、コイが40分で死亡。平成19年12月におきた源兵衛川(三島市)の共同溝工事における生コンクリート流出事故では、ハヤやホトケドジョウ等が大量に死んでいる。

残留塩素

 食品工場、学校、スポーツセンターのプールからの消毒用次亜鉛素酸ナトリウムの流出により発生する。へい死魚の特徴として体色の退化、体表およびエラからの出血が見られることがある。実験によると10mg/Lの次亜鉛素酸ナトリウムでアユは約10分、コイは約120分で全滅。魚種により耐性が大きく異なる。

シアン

 プラスチック製造業や電気メッキ業等の事業場からの流出により発生する。へい死魚の特徴として体色の黒化、エラの鮮赤色化が見られることがあるが、時間とともに症状が変化する。実験によるとアユでは0.5mg/Lのシアン化カリウム水溶液で約10分、コイでは5mg/Lで40分で全滅。

亜鉛

 製版工場や金属加工工場等からの流出により発生する。へい死魚の特徴として体色の黒化、エラの淡赤色化や灰白色化などが見られ、高濃度で被爆した場合にはエラに亜鉛の凝着が見られる。実験によると100mg/Lの塩化亜鉛水溶液でアユが約75分、コイが160分で全滅。

農薬

 水田、茶園、果樹園、露地野菜畑等からの農薬の流出により発生する。有機リン系、有機塩素系農薬によるへい死の特徴は、体表やエラに粘液が分泌されエラが黒赤色化。カーバメイト系の農薬では、体表やエラに粘液の分泌が少ないことが知られている。しかし、酸、アルカリ、残留塩素でも類似の症状を示すものもあることから、外観から農薬による死因を推定するのは難しい。農薬が原因で死亡した魚では、エラに高濃度の蓄積がみられ時間経過に伴う原因物質の濃度減衰は少ない。

油類

 周辺に油膜や油臭が認められたり、体表やエラに油分が付着している場合が多いことから死因を特定しやすい。




水質・へい死状況による死因推定

水質・へい死状況

創傷

感染症

酸欠

有害物質

水質の外観

油膜





着色





異臭





水質簡易測定結果

pH以上





濁度が高い





DOが低い





水温が高い





有害物質を検出





へい死魚の種類

多種がへい死





少数種がへい死





へい死魚の分布

狭い水域に分布





広範囲に分布





へい死時間

短時間





数時間





数日間





生存魚の状況

狂奔





横転





鼻上げ





正常






有害物質は酸、アルカリ、金属、農薬、油類など
▲は●に比べて可能性が低い


へい死魚の観察による死因推定

へい死魚の症状

創傷

感染症

酸欠

有害物質


アル
カリ

残留
塩素

シアン

亜鉛

油類

農薬

体表


黒化











白化











退色











粘液の
分泌

多い











少ない











表皮

剥離











出血











潰瘍











眼球

白濁











出血











エラ


鮮紅色











灰白色











白斑点











粘液の
分泌

多い











少ない











出血











異物の有














コイヘルペス病(KHV病)

コイヘルペス病の特徴
・春、水温が15℃を超えるとウイルスが増殖しやすくなり発症。コイのみ大量に死亡し、数日間継続する。
・発病したコイは行動が不活発になったり、食欲が減退する。体表の粘液が増えて白っぽくなったり、泥を被ったようになる。
・死魚は眼球が落ち窪んだ状態になる。

生きたコイの持ち出し及びコイの放流禁止
静岡知事による指定水域は以下のとおり(平成20年4月1日現在)

・富士川水系富士川本流
・天竜川水系天竜川本流
・狩野川水系狩野川本流及び支流
・浜松市細江町気賀18-4地先の落合橋上流端から上流の都田川水系都田川本流及び支流
・太田川水系太田川本流及び支流
・浜川水系浜川本流及び支流
・巴川水系巴川本流及び支流



KHV病まん延防止対策
・コイの放流にあたっては事前に県水産資源室(電話054-221-2741)へ相談。
・飼育しているコイに異常がみられた、あるいは河川等でコイが大量に死んでいた場合には、地元市町村又は県庁水産資源室まで速やかに連絡。
・飼育しているコイを川や湖に棄てない。生死を問わずコイの遺棄は禁止。
・県外よりコイを持ち込む際は、導入するコイがKHV汚染水域または養殖場由来でないこと、流通過程等において汚染水域由来のコイと接点がないこと等を確認。


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