
 今回初めて入国直後に職務質問をアレコレ受け、麻薬犬にクンクン臭いを嗅ぎまわされた。いつもは同行する相棒Iが「国籍不明の怪しげな人物」として必ず警備員に呼び止められて笑い話になるのだが、彼はスルーパスで私が引っ掛かった。どうやら豪州の渡航回数が多く、単独行動をしていた成人男性だったのでチェックがかかったようだ。パスポートを提示しながら滞在目的や日数を伝え、相手の質問に適切に答えて無罪放免(あたりまえか)。
 私が渡豪する時は乾季だろうが、異常気象で雨が少ないと言われていようが、「必ず雨が降る」というジンクスがある。案の定、今回も雨。空港を出る時は小降りだったが、ケアンズ市街を通り抜けた頃には本格的な雨になった。ガイドもこのジンクスは十分承知しており、「トシはやっぱり雨マグネットだ」と笑う。「来るならもっと早く来て欲しかった」と彼が言うので理由を聞くと、今年は記録的な干ばつで各地で山火事が多発。農産物も影響を受け、主要輸出品目である小麦は平年の2割しか収穫量がなく、輸入する事態もおきているらしい。おまけに雨が少ないため小川が枯れ上がり、フレッシュウォーターエリアは釣りにならないとの状況説明があった。
 午前9時半過ぎに出船。降っていた雨が上がり、クソ暑くなってきた。日焼け止めを塗りたくり準備万端かと思いきや、うっかり部屋へ偏光サングラスを忘れたことに気が付いた。サングラスは紫外線から目を守るだけではなく、水中に潜むストラクチャーを探すために絶対必要なアイテムなのだがボケていたようだ。
 開始2時間、ガイドのルアーにバラマンディがアタック。その場所は直前に私が4回もルアーを打ち込んだ所だった。フッキングには至らなかったが、私のルアーには見向きもせず、ガイドのルアーには反応するという悔しさを味わった。活性が高い時は一発で食って来るのだが、低い時は何度もルアーを通し活性を上げなければバイトにまで持ち込めない。また、バラはその時々で反応するアクションに違いがある。同じポイントへ、同じルアーを入れても使い手が違うと明らかに魚の反応が違ったりする。これがバラ釣りの面白い所なのだが、辛い所でもある。
 岸沿いを流しながら、ポイントと思われる場所を次々と撃って行く。相棒Iがシュガーミノーで小さなマングローブジャック(MJ)を追加。半日以上、硬いロッドでロングAのトウィッチをやり続けたので少々疲れた私はシュガーミノーに交換。島の西側、干潮で水位が下がり干潟が出現した場所に移動し、干潟の中をクネクネと流れるガーター(水路)を狙いキャストを繰り返す。「ガーターの中にはバラが潜んでいて小魚を食っている」とガイドは言うが、細い水路の中にデカバラがいるようには思えない。タラタラとキャストをしていると、いきなりガツンときた。しかし一瞬の内にルアーが口から吐き出されフックオフ。人の話はちゃんと聞くものだと反省。
 午後3時過ぎ、ハワイの景色に似ていると言う雄大な山並みを眺めながら遅い昼食を摂る。これまでやって、相棒Iが釣ったバラとMJが1匹ずつ。ヒンチンブルック島まで来れば爆釣間違いなしと思い込んでいたのだが見事にズッコケた感じ。15分ほどで食事を終え、すぐさまキャストを再開。潮の動きに釣果が大きく左右されるため、タイミングを逃すと辛い目にあう。ここでの釣りは時間との戦いでもある。開始早々にガイドが操るロングAにバイト。しかし、惜しくもフックオフ。直後に私のロングAにもアタックがあり、やっとバラを仕留めたかとホッとしたのだが、船縁に寄ってきた魚はバラはバラでもバラクーダ(45cm)だった。
 午後4時をまわり、辺りには釣れそうなムードが漂ってきた。ガイドがジグヘッド付きのゴムルアーでバラクーダをキャッチした後、私がガーターの中でプレデターを使い小型のバラマンディをバラシ。直ぐ後に再びヒットしたので今度はきっちり釣り上げようと慎重に魚とやり取りをする。激しくジャンプするバラマンディとは異なる引きに戸惑いながら、魚を寄せてくるとヒゲのはえた見慣れた顔があった。
 魚はなんとキャットフィッシュ(ナマズ)。尾鰭の形が日本のナマズとは違うが正しくナマズ。淡水ではなく海水域で釣れるナマズには驚いたが、まさか豪州まで来てナマズを釣るとは思ってもみなかった。暴れる魚を手で抑えようとした時に、ガイドからすぐさまストップがかかった。背鰭や胸鰭にトゲがあり非常に危険とのこと。慌てて手を引っ込めて、ガイドにフックを外してもらった。
 午後5時をまわり、既にロスタイム時間内での勝負ってところ。相棒Iがシュガーミノーで40cmのナマズを釣った後、ガイドがバラクーダをロングAでキャッチ。続いてバラを掛けたがフックオフ。すかさず、彼がバラしたポイントへプレデターを打ち込んでトウィッチをするとガツッとヒット。しかしこれもロスト。ガイドがフォローで投げたロングAがフッキングに成功。やっと釣り上げたバラマンディは43cmだった。
 相棒Iがシュガーミノーで50cmUPのバラをロスト。まだ魚が居そうなのでシュガーディープに交換し、集中的に投げているとニジマスのような魚がヒット。「なんじゃこりゃ?」と40cmUPの魚を引き上げると胸鰭が糸状になっていた。初めて見た魚の名前はブルースレッドフィン(シーサーモン)。大きくなると120cmぐらいになるようだ。取り敢えずバラクーダ、ナマズ、シーサーモンを1匹ずつ釣り上げボウズは免れたが、本命とは程遠い魚ばかり。
 
 なんとかバラマンディを釣りたいとマングローブの根際やガーターを狙って懸命に竿を振ったが、魚を掛けることはできず午後6時に納竿。ボートランプから遠く離れてしまったのでロングドライブになるのだが、午後から吹き始めた風が気になる。良く見ると島と本土の間の水域は白く波立っており荒れ模様になっていた。道具一切を片づけ、エンジン全開で波を切って進む。大きくバウンドする度に、塩っ辛い波を頭から被るほどのラフティング状態。操縦するガイドも大変だろうが、振り落とされないようセンターのベンチにしがみつく私達にとってもハードだった。始めのうちは楽しかったのだが、後半は苦痛以外の何物でもなかった。腰痛持ちには拷問に近いのではないか。
 45分間も続いたラフティングツアーがやっと終わり、無事にボートランプへ到着。船を引き上げ、車に乗り来んだ時には空に満月が光り輝いていた。コテージに戻り、塩まみれになったタックル一式を洗う。帰りが遅くなったので、のんびりしていると晩飯にありつけなくなる。田舎なので食事ができる場所は2ヶ所しかなく、遅くまでやっている店はないらしい。
 体中が塩でベタベタだったがシャワーも浴びずに車へ乗り込み、ガソリンスタンド兼レストランへ滑り込む。フィッシュ&チップスという極めて豪州的なメニューをオーダーし、コーラで胃の中に流し込むという簡単な食事をとりながら明日の作戦を練る。今日は何回かチャンスはあったが、結局バラマンディは2本しか上がらず貧果に終わった。2人で他魚種を含めて6匹、ガイドに1日6万円程を払っているので、1匹当り1万円の計算。今回の釣行でヒンチンブルック島は嫌いになりそうだ。午後から吹いた強風で明日は更に魚の活性が下がりそうなので、ヒンチンブルックは諦め、別の場所へ行くことになるだろう。
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TOSHI  | 
 
TORU  | 
 
TERRY  | 
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バラマンディ  | 
 
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マングローブジャック  | 
 
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キャットフィッシュ  | 
 
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バラクーダ  | 
 
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ブルースレッドフィン  | 
 
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