――クレナイドキ――。

　夕暮れの、いちばん綺麗なその一刻。私と紅葉は出逢った。

　そして七年後。
　結ばれた縁をもって、ある春の夜に唄は紡がれ流れ出す。
　二人の運命を経（タテイト）に。人の想いを緯（ヨコイト）に。
　吹きしく風と血に乗せて、どこまでも紅く……

　生まれながらに他者と異なる色を持つその存在は、出生と同時に全ての人間から疎まれ厭われ忌避される。
　されど、彼女自身はその孤独の意味を解することは無い。
　邪気もなく。それゆえにもっとも禍々しく。おのれの紅き運命と業にただ狂い舞うのみ。
　――さながら風に揉まれるひとひらの葉の如く。

(ありはら くれは)

　人並み外れた戦闘能力を持って生まれた少女。その力ゆえに幼時に人身事故を起こし、『人殺し』として周囲から疎外される。
　殺生の罪悪感から自身もまた進んで孤独な境涯に生きようとするも、紅葉という存在に出逢うことで救われる。
　彼女は問い続ける。自分の力とは何なのかを。自分と紅葉の縁とは何なのかを。
　その答えはやがて、彼女がもっとも望まない形で実現してゆく。

(ひいの みずき)

　姫野の弟子をやっている青年。
　強さと戦いとを己が生の絶対価値とし、飽く事なくそれらを求め続けているが、普段は頓狂な言動で姫野を炊きつけては叩かれている。
　そんな彼の運命も、主である姫野の運命の流れに合わせ、やがて流れ始める事となる。
　戦さの風が逆巻き、全てが紅に染まるその只中で、彼は観、彼は聞き、彼は往く。飄行の裏に忍ばせた志のままに。

(らい しゅんいち)