'24/9/30(月)
~ 大洪水の爪痕 ~
まだ暗い午前4時半過ぎに起床し、出来るだけ物音を立てないように静かに釣行準備をする。昨夜は、片付けをろくにせず、そのまま気絶したように眠ってしまった。5時過ぎにテリーが起きて台所で準備を始めたので、寝ている嫁さんを起こさないよう静かに部屋を抜け出て朝食にする。朝食は、シリアルとカリカリに焼いた薄切りの全粒粉食パン。これに加えてバナナを頬張り、フレッシュで美味しいオレンジジュースで喉を潤す。5時半過ぎ、嫁さんが遅ればせながら起床しテーブルにつく。彼女は昨夜、大いびきをかいて寝ている私の横で、足がつって独り悶絶していたらしい。不安定なボート上で一日中、立ってキャストを繰り返していた事に加え、トイレを気にするあまり水分を控えていた事が原因かもしれない。今日は適度な塩分補給と多めの水分摂取を心掛けてもらう。
午前6時半、デントリーリバーに向けて出発する。キャプテンクック・ハイウェイをひたすら北上するが、大洪水の爪痕が随所に残っていた。この洪水は、昨年12月中旬にケアンズを直撃したサイクロン「ジャスパー」が引き起こした洪水なのだろうか。日本でもニュースが流れたが、この一帯では過去100年で最大規模の豪雨と洪水被害があったはず。ケアンズ空港で旅客機が水没している映像を見た気がする。
テリーが外の景色を指さしながら、バロンリバー流域では、ハイウェイ下を流れる小河川が氾濫し、付近の住宅地は屋根まで水没。サトウキビを運搬する線路の橋は流出し、暫くの間、交通が寸断されていたエリアもあっと言う。未だに傷跡は周囲に残っており、エリスビーチ付近の山が迫った海岸沿い道路では、路肩に山から崩れ落ちた大岩がそのまま残っていた。
路肩が崩れ、ガケ下が剥き出ている場所があり、アチコチで片側交互通行になっている。PTS(パシフィック・トラック・システム)により、車の走行速度が100km/hから20km/h刻みで徐々に速度制限され、工事場所の手前で信号待ちで停車する。細く曲がりくねった一本道なので致し方ないが、結構長い時間、信号が変わるまで待たされる。モスマンにあった大きなサトウキビ工場が閉鎖されたため、大型トレーラーがこの寸断された道路を毎日走ってマグレブリバーの近くにある工場まで運んでいると聞く。朝の内は、交通量が少ないので大した渋滞にはならないのだろうが、私達がケアンズに戻る夕方は、この海岸線の道路が激しく渋滞しそうだ。
午前7時半にポートダグラスへ曲がる交差点を通過。ここまで来れば、デントリーリバーのボートランプまで30分少々の距離。周囲は緑溢れる山と畑が広がる。モスマンのウールワースやステンドグラスがある古い教会を確認し、モスマン・デントリーロードへ入る。道路右側にあるバラマンディの養殖場Hook A Barraでは、前回の洪水で沢山のバラマンディが逃げ出したらしい。「養殖のバラマンディは餌をたらふく食べて太り、鰭が小さく泳力が弱い。逃げ出した魚の殆どがクロコダイルの餌になった」とテリーは教えてくれた。とすると・・・世にも珍しい白いアルビノのバラマンディは真っ先に食われてしまったのか。
~ 懐かしのメガバス・デストロイヤー ~
午前8時10分、デントリーリバーのボートランプに到着。手際よくボートを降ろし、船上でタックルの準備をする。昨日、遠征初日の1匹目でファイト中にロッドを折る大失態をやらかした。今日は予備の竿としてテリーのお宅に永らく預けていた昔の竿を掘り出して来た。この竿は懐かしのメガバス・デストロイヤーF4-59Tトマホーク。グラスロッドで魚のノリが良くバラシにくいのが特徴。折角、苦労して掛けたバラマンディをフックオフさせる事が多く、思い悩んで辿り着いたのがこのグラスロッドだった。しかし残念ながら、少しボリュームがあるリールシートと装着するシマノのベイトリールとは相性が悪くて、使用をギブアップした経緯がある。使うリールによっては、クラッチを押し下げた時にシートに当たるとか、リールフットの固定が不安定で使用中にリールが脱落するハプニングがあった。今回、この竿にコンクエスト250DCを初装着したのだが、やはり難がある。250DCのサムバーの位置が高くなり過ぎ、キャスト回数がとても多いバラマンディの釣りでは明らかに手首や親指に負担が掛かりそう。しかし我慢するしかなく、試投をしながら徐々に慣らしてゆく。
竿先にぶら下げたのは、リーズルアーのハイジャッカー。オーバーハング下や倒木周りのピンポイントにルアーを撃ち込みたいのだが、竿が手に馴染んでいないのでミスキャストが続く。フィッシングプレッシャーが高いこのエリアでは、ポイントから30cmもキャストを外した魚は絶対に喰ってこない。上流へボートを進めながらキャストを重ね、モーションを修正しながら、やっとまともなキャストが出来るようになってきた。するとGTやマングローブジャックが物陰から出て来る。やはりピンポイントにルアーを撃ち込むのは大切なのである。しかし・・・ガップリと喰ってこない。ボートをターンさせ、フェリー乗り場の下流へと移動し、河口域に向かって釣り下ってゆく。
下流域では、スピニングタックルを使うポッパーゲームがメインとなった。小島周りに広がるシャローエリアでポッパーを遠投して、ポッピングしまくる。最初に竿が曲がったのはテリー。派手なファイトをいなしてキャッチしたのは40cmのクイーンフィッシュ。ヒットルアーは塗装が全てはげ落ち、ボディがガリガリに削れているポップR。続いて、私が操るGスプラッシュ80に爆裂バイト。トルクのある強い引きに翻弄されながらも45cmのGTを釣り上げた。
開始1時間半、これでボウズはないな・・・と思いきや、まだ嫁さんは昨日から1匹も釣っていなかった。岸際へのピンポイントキャストと遠投するキャストでは、投げ方が違うのでアレコレとアドバイスをしながら投げ続けてもらう。彼女には、最も釣れる確率が高いTDポッパーを試してもらっているが、海から吹き上がって来る風に負けて飛距離がでない。ポッピングは上手に出来るので釣れるのは時間の問題だと思っていたら、急に魚っ気がなくなった。不思議に思っていると、目の前を悠々と獰猛なブルシャークが泳ぎ回っていた。私達が釣り上げてリリースした魚が、この人喰いザメを寄せたに違いない。この場にいても釣れないので直ぐに退散する。
~ 川の真ん中でエンジントラブル ~
午前10時半、川の中にアンカーを降ろしてティータイム。いつもなら、ボートを岸に寄せて木陰に入って休憩するのだが、デントリーの河口域にはサンドフライとヤブ蚊が沢山生息している。テリーから「ティータイムの場所は、ホットサンシャインとサンドフライのどちらを選ぶか?」と問われたが、私達は迷うことなくホットサンシャインをチョイス。サンドフライの辛さは、2人とも身に染みているので即決・即答をした。それで、ボートを停めた場所が強い太陽光を遮るものが一切ない川の中となった。
強い日差しの下だが、海風が案外心地良い。風に吹かれながら、ピンク色をしたココナッツ入りの砂糖がベッタリ塗られた菓子パンをパクつく。オーストラリアは小麦の国なので、やはりパンはどれも美味しい。その中でも、昔からボート上で食べるこのパンは、テリーの好物で釣行時にはグッドチョイス。クソ甘いこのパンは、炎天下で釣りをする際のカロリー補給にはもってこいなのだ。甘過ぎると感じた時は、砂糖を拭い取って水中に落し、小魚を集めて楽しめる。
ティータイムの後は、中洲周り、サンドバー周辺のシャローエリアでマゴチ狙いやGT狙い。浅瀬でエレキを使ってボートを進めていると、前方で砂煙を立ててマゴチやナマズ達が逃げて行くのを目にする。私のハイジャッカーに大きなマゴチがじゃれついたり、嫁さんのアイルマグネット105Fにもバイトがあったがフッキングには至らなかった。
魚はいるのだが、食い渋っているので次のエリアに移動しようとしたらトラブル発生。エレキを上げ、エンジンを降ろして始動。「さぁ、次の場所へ!!」と砂煙を挙げてボートが進み始めたが、直ぐに前に進まなくなった。エンジンは問題なく回るのでエンジン自体やギアボックスの故障ではなさそう。ギヤを前後に入れ直したり、エンジン本体を上げ下げしたが直らない。聞けば2週間前、今回の釣行に向けてエンジンのメンテナンスをしたばかりだという。
エンジンが使えず、このままでは漂流してしまう危険がある。テリーは、エレキを使いロノロノと川の真ん中にある中洲まで移動。ボートを中洲に座礁させて固定し、自分は川の中に入って緊急修理を始めた。こんな症状の時に思い当たるのがシャーピン折れ。エンジンをチルトアップさせて故障場所を探していると、やはりピンが折れていた。プロペラを何かに強くぶつけたりして強い負荷が掛った際、このピンが折れる事でエンジン本体を守る仕組みになっている。電化製品などのヒューズと同じ様な、安全装置の役割をしている。シャーピンの予備があれば直ぐに解決するのだが、なんと彼は「持っていない」と言う。これは、大ピンチ・・・備え付けの簡易工具箱の中をガサゴソ探し回り、代用できそうなピンを見つけた。部品を水中に落とさないよう十分注意しながら、試しに組み込んでみるとビンゴ。これで応急処置が完了し、座礁しているボートを押し出して中洲から脱出した。
~ 投げるより止める方が難しい ~
河口に向かってボートを進め、岸際のオーバーハングやマングローブの根際を狙ってキャストをする。ルアーはZBLシステムミノー11Fに交換。このルアーは、ケアンズ近郊河川のバラマンディ釣りでピンポイント撃ちをするのにとても扱いやすいルアー。狙ったところに飛び、ジャークやトウィッチの反応も良い。長い間、常に豪州遠征一軍ボックスに鎮座している。GTやバラクーダの猛攻にあったのち、待望のバラマンディがヒット。しかし、フックオフしたのですかさず同じポイントにルアーを撃ち込む。狙いどおりヒットしたが、引き寄せる際にフックオフ。魚の大きさはフッコクラス。
テリーはバックシートでハイジャッカーを使い、1匹バラした後に45cmの若いバラマンディを抜き上げた。これ位のサイズの魚は群れていて、活性が上がると次々にルアーに襲い掛かる。嫁さんのアイルマグネット105Fにもヒット。これで、やっとボウズを逃れられるかと思いきやフックオフ。彼女は悔しがったのなんのって。
まだ魚はいるので、次のキャストに期待。見守っていると、ルアーはポイントを外れて横の木に引っ掛かった。運良く回収出来たので、今度は失敗しないように・・・何故かルアーを高々と打ち上げ、遥か頭上の木へ引っ掛けた。ルアーを回収するためにボートを岸に寄せて回収。これでポイントが潰れてバラマンディ達はグッドバイ。精度の高いキャストは最重要。ミスキャストをしたと思った瞬間、ラインを止めなきゃイカン。「ルアーは投げるより、止める方が難しいんだよ」とテリーはそう言って慰めてくれるが、木の上にいるのは鳥やお猿さんで、お魚さんはそこにはいないのである。
広大なサーフでフルキャストしてヒラメやマゴチを狙うのもイイが、ややこしい木が生い茂っていたり、倒木が入り組んでいるようなポイントを狙ってルアーを撃ち込んで魚を釣る方が私に合っている。ミスキャストも多いが、ピンポイントにビタッとキャストが決まってドカンと魚が出た時の嬉しさは、一度味わうと忘れられないのである。ルアーをZBLシステムミノー11Fからハイジャッカーに交換。マングローブの根が無数に垂れ下がるポイントに撃ち込み、強めのバラジャークをすると一発でバラマンディが出た。やはり御当地ルアーは強い。根の中に潜り込まれないよう、デストロイヤーF4-59Tトマホークの粘りを活かして使って魚をいなしてオープンエリアでファイトする。サイズは40cmしかなかったが、狙って釣った感がある嬉しい1匹だった。
この場所には魚が集まっている。ここでやっと嫁さんのアイルマグネット105Fにヒット。今度はバラさぬよう慎重にやりとりして無事にキャッチ。サイズは小振りだったが、遠征の1匹目がバラマンディって、実はなかなか凄い事なのである。当サイトを御覧の方で誤解してしまう人もいるようだが、普通の人には、簡単に釣れる魚ではないのだ。なんてったって「神の魚」なのだから。嫁さん以上に喜んでいたのがバックシートのテリー。以前のように有料ガイドをしている訳ではないので気にしなくて良いのだが、彼女にやっと魚を釣ってもらい肩の荷が降りたに違いない。
~ ランチタイムでリフレッシュ ~
嫁さんが豪州遠征1匹目、バラマンディを釣ったタイミングでランチタイム。昼時で日差しが強いので岸際の木陰に寄ったが、直ぐにサンドフライとやぶ蚊が寄って来た。すかさず、足首に巻いてある携帯虫よけフマキラーのどこでもベープNo1をスイッチON。この剤は本来、適用害虫がユスリカ、チョウバエ。よって、やぶ蚊やサンドフライに効くのか効かないのか良く分からないが、気休めにはなる。最善策は素肌を露出しないことだが、袖や裾、足首や首回りに少しでも隙間があったり、生地の目が粗かったり、薄かったりすると絶対にやられる。ここをカバーするのが虫よけスプレー。たっぷりと塗っておく。
今日のランチは30分程時間を取ってしっかりとくつろぎ、リフレッシュする。パンにハム、トマト、レタスを挟んでパクつく。チーズは苦手なので私の分は嫁さんに。塩と胡椒を振り掛け、刺激の強いマスタードを適量塗る。少し味付けは強いぐらいにして、ちゃんと食べておかないと夕方まで頑張れない。水分も意識して摂取しないと、夜中に足がつるハメになので、お互い声を掛け合って補給した。
午後の部をスタート。開始5分でハイジャッカーを使い40cmUPのバラマンディをキャッチ。これ位の魚なら、柔らかなトマホークでも船上へゴボウ抜きが出来る。ボートを少し進めるとクリークの入り口があった。何故だか泡立った水が流れ出ている。クリーリの奥は水質が悪そうなので、水通しが良いクリークの入り口にボートを止めてキャストを始めるとマングローブジャックがドカンと出た。まるでルアーが落ちてくるのを待ち構えていたかのような出方だった。
続いて、テリーのハイジャッカーにも爆裂バイト。しかし、ファイトの様子が普段とちょっと違う。テリーが雑に魚をあしらうので、もしかしたら・・・やはりお相手は嫌われ者のバラクーダだった。コイツがヒットするとルアーはボロボロになるし、時にはリーダーをスパッと切ってしまう。キャッチ後は船上で大暴れして、怪我をすることもあるので厄介なのだ。過去には、船べりでルアーを抜き上げた際、これを追ってバラクーダが船の中に飛び込んで来たこともあったっけ。フッキングもしてないのに1匹釣った時は、そのどう猛さは記憶に焼き付いている。
~ 狭いクリーク内の釣りは難しい ~
狭いリクーク内にボートを進めると、キャストの難易度がMAXとなった。アチコチにルアーを引っ掛けまくっていた嫁さんは、ついにキャストをギブアップし、振り子のようにルアーを振って岸際にポトリ。この振り子方式も案外と難しく、あらぬところにルアーが飛び、生い茂った枝葉に引っ掛かる。狭い場所なのでルアーを回収するためにボートを動かしたり、船上でガタガタと動き回ると魚にプレッシャーを与えてしまう。
キャストが難しく水質も悪かったので、釣果は期待していなかったのだが、ここでドラマがあった。リトリーブ後、船べりに浮かべていた私のシャッドラップSR8に川底から突然姿を表し、ルアーを吸い込んだバラマンディ。水中に沈む倒木やブッシュの中に潜り込んで、まさに魚との格闘ってのを体験しながら何とかキャッチしたのが色黒の60cmだった。
この魚を釣ったらフックが歪み、ラインアイも変形したので、シャッドラップSR9に交換。岸際ではなくクリークの中央部にルアーを投げ、グリグリっとルアーを巻いて少し深い場所を探っているとヒット。どうやら底に倒木が沈んでいたようで、ここにバラマンディが潜んでいた。倒木の中に入られた魚を引きずり出してキャッチ。サイズは53cmだった。
さて、お次は嫁さんの番。キャストと言うよりは、ほぼ手で投げているに等しい状態だったが、彼女にも爆裂バイトがあった。しかし、バラマンディではなく、バラクーダ。ルアーへの出方がド派手で、ヒット後に突っ走ってフックオフ。狭いクリーク内では、私でもあの魚をキャッチするのは難しかったに違いない。これを最後に魚の反応がバタリと止まったので、サンドフライの楽園のようだったこのクリークを脱出。少しボートを下流へと進め次のクリークへ入った。
(現在作成中)
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