
 午前5時半、鳥の鳴き声で目が覚めた。天気は曇り。真夜中に激しい雨が降り、トイレに2回も行ったので今朝も熟睡感が少ないのだが、午後9時には寝てしまったので睡眠時間は確保されているハズだ。朝食はいつも通りのシリアルにトーストを加え、今日一日の修行に備える。出発まで多少時間があったので、テリー宅のすぐ近所にある公園をブラブラと散歩してリフレッシュする。
 午前7時に出発し、まずはガソリンスタンドで燃料補給。本日の価格はディーゼルがA$127.9/L。2013年9月に遠征した時は、A$162.9/Lだったので当時から比べると安くはなっているが、日本と同様、ケアンズもガソリン等の価格は高値が続いている様子。燃料の高騰がフィッシングガイド料金に跳ね返っているのは致し方ない。
 国内線ターミナル正面玄関への連絡道を入り間違え、ロータリーをグルグルと回るハプニングもあったが、フライト時間まで十分余裕を持って嫁さんを空港まで送り届ける。ここから先、彼女は完全に一人旅。普段の様子から、旅先のアチコチで様々なチョンボをする事は容易に想像出来る。土産話を楽しみにお互い無事に再会できるよう祈りながら分かれ、私達は北に向かって雨の中走り出した。
 雨の日はとかくトラブルが起きがちだが、ケアンズ郊外へ出る間に道路脇で車が2台滑り落ちていた。私達はボートトレーラーを牽引しているので無謀な運転はしないが、無理な追越によって事故に巻き込まれる場合もあるので注意しながら走る。いつも、ちょっと怖さを感じるのが、通称 ローターリー交差点のラウンドアバウト。出入りのタイミングを失うと、何周もしてしまいそうな感じ。日本人観光客が追突事故を起こす事が度々あるとも聞いている。ラウンドアバウトは日本国内でも少しずつ設置されているようだが、ケアンズ郊外を走る機会がある場合は特に注意したい。
 走っていると徐々に雨が上がってきた。このまま雨が上がり気温が高くなれば良いのだが、天候の回復に伴い風が強く吹く懸念もある。2日続けて貧果だったので今日はなんとか挽回したいのである。そんな事を考えながら景色を見ていると、岬周りで漁船が網を引いていた。漁師が狙っているのは、サーモンとバラマンディ。随分、岸に近い所で網を引いているので、私達が今日目指しているデントリーリバーの河口域で網が引かれない事を祈るばかり。
 因みにオーストラリアで言うところのサーモンは、私たちが知っているサケの類とは全く違い、胸鰭のところにヒゲのような長い触手があるスレッドフィンサーモン、ブルーフィンサーモンやキングサーモンを指す。過去にヒンチンブルック島やアラクンで釣った事があるが、サイズはメーターオーバーになり、ハードファイター。豪州アングラーにとっては、バラマンディに次ぐ人気ターゲットだ。
 テリーによると、嘴が黄色くて小さなサギはオーストラリア原産ではなく、何処からか飛んできた鳥らしい。大きな白サギと中型の白サギは良いのだが、外来の小型白サギはトラブルメーカーらしい。鳥でも外来種問題なのか?シラサギは渡り鳥じゃなかったか・・・?。色々と疑問が頭に浮かぶが、英語が言葉として出てこない。そんな様子を察して、彼は日本人が聞き取れるヘンなOZ英語で説明してくれる。いつも思うのだが、ガイドのテリーは物知りで、私が気になった事に対して直ぐに答えが返ってくるのが凄い。ガイド業を極めるには、釣りの腕が立つだけでは駄目な事が良く判る。
 午前9時少し前、デントリーリバーのボートランプに到着。そこには見覚えのあるボートが浮いており、青いカッパを着た人が出船の準備中だった。知り合いだったので、直ぐに駆け寄って挨拶をする。る。久しぶりに再会したのは、All Tackle Sportfishingの青柳さん。その昔、OZ達と一緒にキャンプをしながら釣りをしたのを思い出す。今日は、日本人2人組みのガイドとしての釣行。お二人の竿先には、今は入手困難となった名品シーウォッチャーが結ばれていた。使うルアーを見れば、彼らの本気度が伺える。邪魔をしても申し訳ないので、少しの時間で青柳さんとここ数日の様子について情報交換。温度が下がっている影響で、やはり釣果は思わしくないらしい。
 私達も準備が整って出船。今まで豪州遠征では使わなかったが、地元河川では出番が多いDC9バレットでバラマンディを暫く狙ってみる。選んだルアーに問題がある訳ではなく、全く魚の気配はなくギブアップ。水温が低過ぎて魚達はシャットダウン。水温が少しでも高そうな、下流へと釣り下ることにした。(後日、YouTubeで知ったのだが、青柳さんは、当日バラマンディをお客さんに釣らせていた!!  さすがだわ。)
 午前10時、バラマンディから狙いをクイーンフィッシュ、GTにチェンジ。中洲周辺にいるであろうこれらの魚を狙ってみる。釣り方は、まさかのGスプラッシュ80を使ったトローリング。風が出てきて肌寒く、水面は波立ち始めているが、そんな事に負けてはいられない。やり方は、カジキ釣りのトローリングをイメージすれば良い。ポッパーがひっくり返っていないのを確認しながら、ゴボゴボと水泡と水沫を上げさせてルアーを引く。中州周りを何周かしてみたが、ココでも魚には出会えなかった。
 ツバメが水面近くを飛び交うのを見ながら、徐々に河口へと下ってゆく。遮る物が全くないので、風が更に強まって爆風が吹き荒れた。小型のバイブを使ってメッキサイズのGTを探したが、余りの風の強さで僅か5分でギブアップ。風裏を探してルアーをまともに投げられる場所まで移動。岸際の倒木をテンポ良く撃ちながら、少しずつ上流への上る。倒木にくっついているヤドカリを捕まえて遊んでいると、置き竿がガタンと大きな音を立てて、水中に引き込まれそうになったのでビックリ。
 20cm程のメッキを釣った後、ヒットしたのは40cmのクイーンフィッシュ。2日前に嫁が釣った95cmのクイーンフィッシュを見ているので、そのボリュームの違いに思わず肩をすくめてしまった。リリースした直後にまたしてもヒット。今度は、50cmUPのバラクーダ。これくらいのサイズになると、鋭い歯でリーダーをスパッと切ってしまうので慎重になる。リリース直後に再び同サイズのバラクーダがヒット。「先程リリースした魚をまたしても釣ってしまったか?」と疑うくらい似ている魚だった。
 ボートを岸と平行して走らせ、点在する立ち木や倒木を重点的に探る。一度ルアーに反応する魚を見つけてしまえば、こっちのもの。20cm程のクロダイを釣った後、僅か数分の間でテリーと2人でメッキアジを7匹連続キャッチの入れ食い状態。ZBLシステムミノー50Sはやはり凄い。このルアーは、豪州の釣りのスタイルを変えてしまうくらいのインパクトがある。取りあえず、本日はこのルアーで4目達成となった。
 水温が20℃から19℃へと低下。クロコダイルが岸に上がっているのも、やはり水温が低いからか。過去の釣行では、これほど頻繁に目撃した事がなかったので、いつもと違うのをあらためて実感する。上流のウィードエリアでは、ロングAを使ってバラマンディを狙ってみる。水温が低いので、ジャーク後に出来るだけポーズの時間を長めに取り、活性の低いバラマンディを誘い出そうとしたが不発に終わった。
 続いて、青く輝きヒラヒラと舞う蝶ユリシス(和名オオルリアゲハ)に誘われ、小さなクリークに入る。ここでは、鉄砲魚やスーティーグランター狙いでポップR、TDポッパー、シャッドラップSR5、小さなシンキングプロップのペラッコ等を投げてみた。30分程、キャストを繰り返してやっと魚が出た。実績No1のTDポッパーに飛び出したのは、20cm程のジャングルパーチ。「これからが勝負!!」と気合を入れたが、単発で終わってしまった。
 一気にボートを走らせ、汽水域まで下り、広大なシャローエリアをTDポッパーでポッピングしながらGTやクイーンフィッシュを探す。トップには全く反応がないので、DC9バレットをフルキャストして、ポッパーでは届かなかった範囲までサーチする。40cm前後のGTが2回、ルアーに襲い掛かったがフックオフ。この魚は、サンドバーのエッジ付近をベイトを探してスクールしている様子。
 少しして、バックシートでZBLシステムミノー50Sを使っていたテリーの竿がギュインと曲がり、ドラグの音が鳴り響いた。GTでもヒットさせたかと思いきや、魚の動きが違う。暫く動向を見守っていると・・・ボート際に寄ってきたのはマゴチだった。サイズは55cm。小さなフックをパックリと咥え込んで離さない。鋭い突起があるエラで怪我をしないように、ボロ布で頭を覆ってペンチを使ってフックを外す。バタバタと頭を振って暴れるマゴチに対し冷静に対処してリリース。魚は砂煙を立てて逃げていった。これでZBLシステムミノー50Sで5目達成。魚種を選ばないところが、このルアーの凄いところだ。
 午前中、メッキを連発したエリアに戻った。使うルアーは、やはりZBLシステムミノー50S。キャストを始めて直ぐに3バイト。キャッチできなかったが、楽しいのなんのって。狙ったポイントにルアーがピッと入り、チョンチョンとトウィッチしてガツン・・・やはりルアー釣りはこんなテンポでやりたい。GTに反応が良いカラーはホワイトなのだが、試しに金色を使ったら、バラクーダが猛烈に反応してきた。
 水温を測ってみると22.5℃。やはり河口域の方が水温は高く、魚達の活性も高い。岸と平行にボートを進めながらキャストを重ねていると、テリーのZBLシステムミノー50Sにヒット。バラクーダとは違う引きなので見ていると、釣り上げられた魚は可愛らしいモーゼスパーチ。これでZBLシステムミノー50Sを使って釣った魚は6種に増えた。
 モーゼスパーチの楽園が落ち着いてきたので、クイーンフィッシュ狙いで水深2m程度の層をトローリングで探ってみる。使うルアーはハードコア60SP。随分昔に買い、豪州遠征でも度々使ってきた物。現行品はマイナーチェンジが施されている様子だが、未だ販売されている事を嬉しく思う。願わくば、太軸フックを装着しても浮力を確保出来るフローティングモデルが欲しい。こんなモデルがあれば、海外での販売が伸びるのではないかと素人ながらに思う。
 ハードコア60SPを結構な距離流したが、ワンチャンスもなかったので、一発逆転を狙ってGスプラッシュ80を投入。初日に嫁さんが95cmを釣ったルアーだ。納竿時間まで残り少ないので、キャスティングでは限られた範囲しかチェックできない。先程と同様にトローリングで広範囲に活性の高い魚を探す。
 午後5時半にデントリーリバーのボートランプを出発。今日は寒いのでカッパを着込んで釣りをする時間が長かった。「どうしてこんなに寒いの〜」と声を出す時もあったぐらい。ボートランプで挨拶したハゲ頭のOZは「ノーフィッシュだった」と言っていたが、やはり水温が低くて釣りをするにはとてもフタな日であったに違いない。午後7時、テリー宅に到着。シャワーを浴びてからマリアさんが作ってくれたパスタとトーストを食べる。マリアさんは、"MALT EXTRACT"という ずっとりと重い缶から、スプーンで飴のような物をすくい取ってパンに塗って食べていた。
 始めて見た物だったので興味津々。豪州人とは味覚が違うのでベジマイトのような物だったら嫌だなと思いつつ、どんな味なのか恐る恐る味わってみた。それは、甘い飴の味。ハチミツとは違う甘さで、味は小夜の中山の名物"子育飴"に似ていた。後で調べて知ったのだが、とは"MALT EXTRACT"とは麦芽エキスの事らしい。子育飴も麦芽糖で作られた物なので、味が似ていた事に納得した。| 
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 TOSHI  | 
 
TERRY  | 
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クイーンフィッシュ  | 
 
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GT  | 
 
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クロダイ  | 
 
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モーゼスパーチ  | 
 
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コチ  | 
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バラクーダ  | 
 
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ジャングルパーチ  | 
 
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