
 ケアンズ現地時間で午前4時、着陸予定のアナウンスが入る。到着時刻は午前4時20分、気温は25℃、天気は雨とのこと。嫁さんから「やっぱり雨男だぁ」と笑われる。乾季のさなかだろうが何だろうが、私が渡豪すると雨が降る事は、ケアンズの釣りガイド達にも知られているくらい有名。今回もまたテリーに「レインマ〜ン」とからかわれるに違いない。着陸前のトイレが混む前に用事を済ませ、身支度を整えて出来るだけ早く飛行機から降りられるように準備する。
 まだ暗いケアンズ国際空港に予定どおりに着陸。最後尾に座っているので、降りるまでに時間が掛かるのだが、早めに席を立って通路を進めば結構前まで出られる。急ぐ理由は、入国審査と税関を出来るだけ早く切り抜けたいから。のんびりしていると長蛇の列の最後尾となり、空港の到着ロビーに辿り着くまでに疲れてしまう。入国審査はe-Passportでセルフ対応。機械の前に立ち、パスポートを画面の指示通りに突っ込めば良いのだが、嫁さんがここで引っ掛かった。毎度のことながら、旧姓とのミスマッチで足止めをくらう。これって、パスポートを更新するまで同じ事を繰り返すのだろうか。
 空港入国ロビーにあったここ数日間の天気予報によると、天気は悪く雨の日が多いようだ。しかも最高気温は30℃前後。日本との気温のギャップに体が早く慣れてくれる事を祈る。少ししてテリーがやってきた。今日から最終日3月24日までの6日間、彼のお宅にホームステイさせて頂くことになっている。再会を喜び合い、スーツケースなどを車に運び入れながら、「トシはアメ・マグネットだ」などと予想どおりからかわれる。15分程でテリー宅に到着。荷物を開いて釣りの準備をする傍ら、シリアルの朝食を御馳走になる。
 テリーの家族は皆さん元気らしいが、息子のライアンは肉や魚を食べないベジタリアンから更にステップアップ。卵や乳製品をも食べないビーガンになったとのこと。テリーもいつの間にか、肉は口にせず、牛乳も豆乳に変えるなどベジタリアンに。味気ない食事をぼやいていたが、医師の指導の下で体を気遣ってのことだろう。
 因みに彼の車はトヨタ・ハイラックスWキャブ。日本では永らく生産中止していたが、今年、復活した話題の車だ。彼の車は、運転席側の屋根近くまでエアーインテークが煙突の様に伸びている格好イイやつ。ケアンズ近郊では度々洪水があり一帯が水没。そんな時に活躍するのが、こんな四輪駆動車なのだ。フィッシングボートは、テリーのボートを譲り受けリペイントすると共に、ミンコタのリモコン操作タイプのエレキを装備していた。車とボートの色合いをちゃんと揃えており、とってもお洒落な感じだ。
 テリーを交え、アレコレと雑談しながら、今日の行き先を決定。やはり初日は、ボウズなしの手堅いジョンソンリバーへ行くことになった。ケアンズの街から出てひたすら南下する。テリーは日本人が聞き取りやすい発音に変え、しかもゆっくりと話をしてくれるので会話のやり取りが出来る。しかし、ウィルはネイティブそのままの豪州英語で話てくるので、つい聞き漏らしてしまう。それでも釣りに関する話題は、英単語が使われるのが常。ぎこちないまでも、なんとなく会話が成立するのが楽しい。彼はケアンズ市内に住んでいるのではなく、"ピラミッド山"の直ぐ近くに住んでいるらしい。得意な釣りは、ダム湖でのクランクベイトを使ったモンスター級バラマンディ狙い。後で使っているルアーを見せてもらうのが楽しみだ。
 午前8時過ぎにイニスフェイルの街に到着。ドロが堆積してズブズブでとてもスリッピーなボートランプからボートを下ろし、サウス・ジョンソンリバーをひたすら上る。40分程、走って1か所目のポイントに到着。岸際を小型のシャッドで狙うと言う。私は懐かしのハードコアSH60SP、嫁さんには、「コレで釣れない魚はいない」と私が信じているド定番のシャッドラップSR5を使ってもらう。トウィッチして濁った水の中をヒラヒラと泳がせる。イメージでは開始早々にガツンと出るハズだったが不発。少しして更に上流へとボートを進めた。
 ルアーをSR5に変え岸際を狙っていると、いきなりバラマンディが出た。魚は船尾近くでガババッと水面近くでエラ洗いをしてルアーを吹き飛ばした。サイズは50cmUP位かと思いきや、目の前で見ていたウィルが70cmクラスだったという。「豪州遠征でファーストフィッシュを逃すと釣果が伸びない」というジンクスがあり、今回もそのパターンにはまりそうで怖い。フックが曲がっていないか、ショックリーダーが傷ついていないかチェックしてキャストを再開。川岸が崩れ土砂が水中に雪崩れ込んでいるような変化を狙い打ってゆく。再びヒットしたのは私のSR5。明らかに先程の魚とは違う引きに、姿を見る前からスーティーグランターだと判ってしまった。ボートに抜き上げたスーティーは25cm。小さくても1匹は1匹。出来るだけ魚に触れないように丁寧に扱ってリリースする。
 岸際をSR5で撃ちながら、更にボートを上流まで進める。水深の浅い場所では、アイマのポッパー、エアラコブラを試すが無反応。魚の姿が全く見られないため、正午になった時点でUターン。川の流れに合わせて釣り下る。時計を見ると、スーティーを釣ってから2時間以上が経過。午後12時半を回り、腹が減ってきたので小川の流れ込みの所でアンカーを下ろし、昼食にした。食事のメニューはテリーと全く同じ。セルフでパンにレタス、ハム、チーズなどを挟んでパクつくというシンプルな物。
 私たちがボートを停めている場所は、バラマンディがいかにも潜んでいそうなポイント。20分程で食事を終わらせ、直ぐに釣りを再開した。小川の流れ込みを狙ってキャスト。濁り水が交じり合っている何処かに魚がいるハズ。開始早々、ウィルが声を上げた。嫁さんが引いていたSR5にバラマンディが反応してチェイスしていたらしい。当の御本人は、そんな事には全く気が付かずリトリーブ。もしこの時、彼女がワンアクションでも入れておけば、バラマンディがガバッとルアーを吸い込んだかもしれなかった。
 このエリアは魚の活性が高いようなので真剣にキャスト&リトリーブを繰り返す。狙いどおりに本命魚のバラマンディがロングA(15A)に出た。サイズは56cm。このサイズなら群れているハズなので周囲を徹底的に狙うが後が続かない。今日は全体的に魚の活性が低いため、ピンポイントにルアーを打ち込まなければ魚は出ない。従って、キャストがおぼつかない嫁さんは苦戦を強いられた。
 岸に上がって腰を伸ばした後、再びボートに乗り込んで、今度はノース・ジョンソンリバーを遡る。ジョンソンリバーは2つの川があり、イニスフェイルで合流し海に流れ込む。片方の河川のコンディションが悪くても、もう片方が良い場合もあるので何とかなるのがジョンソンリバーの良いところ。魚種も豊富なので、私は以前から「ボウズなしの川」と呼んでいる。今日は、朝から竿を振っても嫁さんは1匹も釣り上げていないので、ノース・ジョンソンリバーに望みを掛ける。
 ウィルはGPSナビ画面を横目で確認しながら、無数にある小さな流れ込みを探してボートを進めてゆく。実績のあるポイントはマップ上にマーキングをしてある様子。また、エレキにGPS情報をインプットすれば、流れの中でもアンカーを使わずとも自動でその位置をキープ(電子アンカー機能)してくれる。一方、これまでお世話になっていたガイドのテリーは、そんな電子機器は使わない。彼の頭の中にインプットされている情報を引き出して、何処を眺めても同じような風景の中から的確に流れ込みのある場所を見出していた。釣れそうなポイントにはアンカーを下ろして竿を振る。アンカーの上げ下ろしは、結構な重労働だが、これを一日に何度も繰り返す。長年ガイドをしていたテリーの知識と情報量、そして体力と経験は凄いと今更ながらに思う。
 今日の天気は、雨が降ったり止んだり。しかも、陽射しがさすと一気に暑くなる。この様な条件の下、精度の高いキャストを繰り返すのは大変。カッパを脱いだり着たりしながら調整するのは面倒なのだが、体調管理の点からすれば、カッパを着ずに全身ズブ濡れになったり、逆にカッパを着込んで蒸れていては宜しくない。今回の遠征には、丈夫で作りがしっかりしたお値段の高いゴアテックスのカッパを新調。おかげで「濡れる」「蒸れる」といった不快な思いをしない。カッパの性能は、ロッドやリールと違って価格帯によって明確な差がある。雨で不快な思いをしたくなければ、お金を惜しまず袖口やチャック部分の防水性機能がしっかりした透湿性能が高い物を買うべきだろう。
 ステーシーver2でマングローブジャック(25cm)をキャッチした後、暫らくして猛烈なバイトがあった。魚は一気に突っ走り、リールからラインを引きずり出す。バラマンディだったら水面でエラ洗いをするのでバラマンディではない。ジャンプしないのでターポンでもない。ファイト中、横へ横へと走るので、GTのスレ掛かりじゃないかと予想した。数分間掛けてボート際まで引き寄せ、ガイドに魚をネットですくってもらう。キャッチした魚は、予想どおりのサイドフッキングしたGT(47cm)だった。
 河口域から結構な距離を遡った場所だと思うが、マングローブジャックやGTが釣れてしまうのはちょっと不思議。ジョンソンリバーは何がヒットしたのか、魚の姿を見るまでドキドキ感を味わえるので楽しい。更なる追加を求めて、小川の流れ込みをアチコチとチェックしたが不発。午後4時45分にストップフィッシングとなった。結局、嫁さんは雨の中、頑張って竿を振り続けたがノーフィッシュで終わった。ボウスなしの川であるジョンソンリバーだったが、今日のコンディションは初心者にとって相当厳しかったとしか言いようがなかった。
 30分程、ボートを走らせてボートランプに戻ってきた。干潮で水位が大きく下がり、ドロで覆われたスリッピーな傾斜面が露出している。朝は水位が高かったので、こんな凄い状態だとは思いもしなかった。いつもはドロが溜まっていないのだが、先日までの大雨の影響で大量のドロが運ばれてきたようだ。こんな時はとても危険で、ボートランプで足を滑らせて頭や腰を打って大怪我をしたり、ボートを牽引する車がスリップして坂を上れなくなったりするらしい。
 土砂降りの中、無事にケアンズに戻ってきた。久しぶりにあったテリーの息子ライアンは、90kgをゆうに超えた体重を20kg以上も減量。肉や魚、牛乳などの乳製品等を摂らないビーガンになっていた。日本では、まだまだビーガンについて知る人も少ないだろうが、いずれは広まってくるだろう。因みに、テリーも健康管理のためベジタリアンに変身。医者からアレコレと食事について制限されているらしい。
 私が豪州遠征を始めた頃、彼らは分厚いOZビーフやフライドポテト、油で上げた魚、ラザニアなどをたらふく食っていた。少食の私に対して、「もっと食え、もっと食え。日本人の根性を見せろ〜」なんて言っていたのに、今ではお肉を全く食べないらしい。極端に食生活が変わってしまい、呆れるばかりだ。やはり日本食は、栄養バランスが取れていて体に良いハズ。おもてなしの心と日本食は、セットで諸外国にPRすべきだと思う。| 
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 TOSHI  | 
 
 ASAKO  | 
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バラマンディ  | 
 
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GT  | 
 
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マングローブジャック  | 
 
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スーティーグランター  | 
 
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ジャングルパーチ  | 
 
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