
 前夜は、就寝前にリポビタンDを1本。日頃、栄養ドリンクなんて飲まないので、ベッドに入っても暫らく目がランランとしていた(笑)。朝は午前5時頃、激しい雨音で目が覚めた。テリーと一緒に、いつものシリアル朝食を摂った後、迎えに来たウィルの車に乗り込む。午前6時半の出発時には既に雨は止んでいたが、ウィルから開口一番、「レインマン・トシ、もう雨はいらないぞ」と言われる始末。本日はデントリーリバーへ。ウィルは「バラマンディの目標は10本だ」と言う。小川の流れ込みでバラマンディが溜まっているホットポイントを見つけ出せば、この目標は簡単に達成できそうだが、果たしてどうなることやら。
 天気は薄曇。海岸沿いを走って北上する。絶妙なバランスで石が積んであるバランスロックを横目で見ながら、虹色の旗が掲げられているゲイビーチを通過。クネクネしたワインディングロードを走り抜け、左右に広がるサトウキビ畑を突き抜けて午前7時半にモスマンの街に入った。ここまでは路面がずっと乾いていたが、この辺りになると雨雲が増えてきて天気が怪しくなってきた。運転席から、「レインマ〜ン!!」と声が掛かる。
 午前8時、デントリーリバーのボートランプに到着。駐車場にはボートトレーラーを牽引した4WDが僅かに2台停められているだけ。今日も、ほぼ貸切状態なのでワクワクしてきた。雨は降っていなかったが、降り出したらいつでも着れるように準備しておく。タックルをセットして上流へとボートを走らせた。
 最初に竿が曲がったのはガイドのウィル。ヨーヅリミノーをバックリと咥えたのは、マングローブジャック(25cm)だった。ゲストより先に釣ってしまう失態をまたしても繰り返す。ボートランプの所では水温が24.5℃だったが、上流に遡ったここの水温は24.8℃。上流の方が水温が高くなるので、更にボートを進める。午前10時、開始から1時間半経った頃、やっと私の竿が曲がった。ウィードベットの上、ロングA(15A)を使いバラジャークをしていた時に出た。サイズは48cmと小さかったが、目が真っ赤なルビー色をした本命のバラマンディだった。
 強い日差しがさしたり、雨が降ったりとコロコロと天気が変わり始めた。バラマンディを1本釣ったものの、釣果はイマイチ。気分転換に木陰でティータイムにする。本日のお茶のお供は、ウィルの奥さんの手作りジンジャーマフィン。ジンジャーが入ったマフィンを初めて食べたが、これはかなり美味しかった。紅茶をすすりながら、暫らくルアー談義。ウィルは私が持参した100個を軽く超えるルアーに興味深々だった。
 再びウィルの竿が曲がる。ポイントから引き抜かれたバラマンディは38cm。サイズは小さく、釣る度にサイズダウンするのが笑えたが、大きくても小さくてもバラマンディはバラマンディ。本命魚であることは間違いなく、しっかりルビー色の目をしている。ヨーヅリミノーに完敗。彼は私にヒットルアーを見せ付けながら、「だから、ヨーヅリミノーを使えと言ったじゃないか〜」と笑って言う。やはり、素直にガイドに従うべきなのである。余りに悔しいので、意固地になってシーウォッチャーとサイドステップでジャーキングをしまくった後、シャッドラップSR8を投入。やっとバラマンディが口を使ったがフッキングミスした。
 彼のヨーヅリミノーには、シャンクが短いラウンド型の見慣れない太軸フックが装着されていた。ガマカツやカルティバではなく、イーグルクローやVMCでもなさそう。メーカーを尋ねると、BKKだと言う。フッキングはバッチリでバラシが少なく、丈夫で長持ちとのことで、彼のお気に入りらしい。どこのメーカーが知らなかったので、帰国後にあらためて調べてみた。BKKは、中国の釣り針メーカー。ラウンド型だけではなく、ストレート型や、ログシャンク、バーブレスもある。因みに私達が知らないだけで、日本製ルアーには既に数多く使われている様子。地元浜松のアングラー、黒田健史氏をサポートしているらしい。国内でも取り扱いが始まっているらしいが、まだ入手は難しそう。機会があったら使ってみたいフックだ。
 実績のあるポイントを回り、実績のあるルアーを次々と投げても、全く魚の反応がなくなった。ウィルの口から「世界中の魚が死滅した」と言葉が発せられるほど、魚がいなかった。それぐらい魚の活性が低く、困ってしまった時間が続く。更に上流へと遡り、濁った水が流れ込む小さなポイントに到着。ステーシーver2を送り込み、ジャーク&ポースをすると鉄砲魚(20cm)がルアーを咥えた。鉄砲魚を釣って大喜びをしている私を見て、ウィルは「何故、日本人は鉄砲魚が釣れると喜ぶんだい?」と不思議そうな顔をして聞いてくる。彼らにとって、鉄砲魚は、何処にでもいるような魚らしいが、私達にとってはとても珍しく、名前は知っているけど魚を見たことも触ったこともない人が殆ど。水族館やテレビ番組でしか姿を拝見できない魚なのだ。
 薄暗いクリークの入り口、竿を振っていると視覚の片隅にヒラヒラと光りながら舞うものが見えた。目で追うと、それは青く輝く蝶、ユリシス(オオルリアゲハ)だった。これを見る人には、幸運が訪れるらしい。羽の表側は青く輝くのだが、裏側は茶色っぽくてとても地味。樹木の中で休んでいる時は羽を閉じているため、何処にいるのか全く判らない。ひとたび羽を広げれば遠くからでも存在を確認できる蝶なのである。飛ぶスピードはとても早く、しかも結構高い場所を飛ぶので写真に収めるのは、至難の業。動画撮影を試みたのだが、映像を確認すると幸運が訪れることを期待して、キャストに気持ちが入る。次の一投できっと・・・。
 午後2時、雨の勢いが増し、土砂降りになってきた。私はゴアテックスのカッパを着込んで竿を振り始めたが、ウィルはバックやストレージの中をゴソゴソと何か探してる。どうしたのかと尋ねると、「何処かに置き忘れたか、ボートを走らせている時に飛ばしてしまったのかも」と言う。朝から撮り貯めたデジカメの画像データをチェックしたが、彼のカッパは写っていない。狭いボートの中、探せる場所は限られている。彼は直ぐに諦めが付いて、ずぶ濡れになりながらボート操船とキャストをした。
 残り時間は1時間半程。ポイント1か所につき数投して、反応がなければ次へと足早にポイントをチェックしてゆく。探っている場所は、濁った水が流れ込む小川の合流点や、ウィルがドレインと呼ぶ小さな流れ込み。ウィルが午後一番のポイントと言いながらボートを停めた場所は、なるほどバラマンディが潜んでいそうなポイント。水深があるのでロングAからステーシーver2に交換し、ジャーク&ポーズをするとビックバイト。しかし、この魚はフックオフ。本命魚がいることが判ったので、2人で集中爆撃をしているとウィルの中国製シャッドに34cmのバラマンディが出た。負けてはならじと、ステーシーver2を投げていると再びチャンス到来。しかし、再びこの魚はジャンプ一発でルアーを吹き飛ばし水中に消えた。バックシートでこの様子を見ていたウィルも思わず声を上げる程、敵ながらアッパレなジャンプだった。
 カーフェリーの下流域までラン&ガンをして下ってきた。ここは、先日の釣行で落水したポイントの対岸。もう水の中に落ちるなんて懲り懲りなので、十分注意してキャストを続ける。河川のアウトベント側、水深がある場所でシャッドラップSR9を使い、ジャングルパーチ(25cm)をキャッチ。「もっと深く潜るルアーはないか?」とウィルが尋ねるので、取り出したのが5m潜るディープシェイカー85。どうやら、ここには川底に大きな倒木が沈んでいるらしい。キャスト後、グリグリグリッとリトリーブしてルアーを沈め、トウィッチ&ポーズ。すると狙いどおりにガツンときた。ストラクチャーに潜り込まれたが、四苦八苦しながら魚を引きずり出してキャッチ。ルアーを咥えたのは36cmのマングローブジャックだった。
 反応が無くなったので、対岸へと移動。水位が下がっているので雰囲気が違うが、ここは、まさしく私が落水したポイント。ウィルがピクルスと呼ぶマングローブの根が、水中から剣山の様に無数に突き出している。ルアーをディープシェイカー85からサイドステップに交換しキャスト、ジャークすると一投目にバラマンディがヒット。確実にフッキングしたハズだったが、ファイト中にスッポ抜けた。
 釣っている時は雨模様だったのに、ボートをピックアップして走り出したら、なんと空には大きな虹が掛かっていた。きっと明日は、釣果に恵まれるに違いない。そんな期待をさせるような、立派な虹だった。ウトウトしていたら、いつのまにかブランスフォードタックルショップまで来ていた。1998年からスタートしたこの豪州遠征、当初はこの釣具店に立ち寄るのがとても楽しみだった。当時はまだ、オーストラリア独特の個性的、奇妙キテレツなハンドメイドルアーが沢山あった時代。最近では、日本やアメリカのメーカーだけでなく、中国製のコピールアーが増え、魅力を失ってしまったのが残念だ。
 午後6時半にテリー宅へ到着。テリーとライアンの帰宅を待って夕食となった。今宵はお皿に山盛りのパスタ。レモンスカッシュで胃袋へ流し込む。そして食後はアイスクリーム。こんな食事を毎晩していたら確実に太るだろう。一方、ビーガンになったライアンは、完全菜食主義。パンにトマトとキュウリ、玉ネギを敷き詰めたサンドウィッチを作ってほお張っている。明日は、テリーを交えての釣行を予定。早めに寝て、体調を万全に整えておこう。| 
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 TOSHI  | 
 
 WILL  | 
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ジャングルパーチ  | 
 
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鉄砲魚  | 
 
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バラマンディ  | 
 
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マングローブジャック  | 
 
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