
 釣行4日目となる本日は、テリーが同行。今回の遠征で竿を振ることが出来る最終日となる。早朝まで強い雨が断続的に降っており、今日も一日ぐずつきそうな感じ。シリアルを食べながら、テリーからバナナについて興味深い話を聞いた。フィリピンでバナナの病気(パナマ病)が蔓延し、壊滅的な被害が発生。豪州政府は輸入禁止措置を取ったが、フィリピン人らがオーストラリアに苗を持ち込んだことにより病原菌がオーストラリアに侵入。土壌伝染する厄介な病気で効果的な防除対策がなく、ここ数年の間に、どんどん広まっているらしい。もしかしたら、クスーンズランド州で栽培されているバナナが将来姿を消してしまうかもしれない。
 病気に強いバナナ品種の育成には相当な時間が掛り、病害対策で土壌消毒をやろうにも、農地が広大過ぎて消毒しきれない。また、栽培をやめて休耕地にしたり他の作物を栽培しても土壌中には長期にわたって原因菌が残る。日本にはフィリピンを始め南米諸国からバナナを輸入している。後で知ったのだが、この病気は南米にも上陸しているらしい。私も毎朝バナナを食べているが、生産量の減少から価格が急騰したり、流通がストップしてしまうと我が家の食卓に直接影響してくる。
 今日は、テリーがこれまでの最高記録、1日で293匹のスーティーグランターを釣ったジョンソンリバーのシークレットポイントに案内してくれる予定だった。しかし、前日から雨が降り過ぎて、とても釣りが出来るようなコンディションでないらしくキャンセルに。検討した結果、デントリーリバーに2日連続で行くことになった。フィッシングプレッシャーを出来るだけ掛けないよう、連続釣行はしない方針だが、ケアンズから南のエリアは一晩で相当な雨が降ったらしい。泥水の中で釣りをしても結果は見えているのだろう。しかしながら、魚が育つには雨は絶対に必要。雨季には雨が降らないとその後の釣果が著しくダウンするらしい。
 サイクロンがウィーパ方面に近づいている模様。日本へ帰国する2日後に、どんな進路になっているか心配されるが、考えても意味が無いので最終日の釣行に集中する。午前6時40分にウィルとテリー、私の3人でデントリーリバーに向けて出発した。車が走り出して間もなく、ワイパーをフルスピードにしないと前が見えないくらいの大雨になった。前の席に座っている2から、「トシ、この時期、ケアンズには来るな〜」とまで言われるしまつ。渋滞とまでは言えないが、そこそこ混雑する市街地を抜け出て、一気に北上する。
 午前8時半前に準備が整い、デントリーリバーのボートランプから出船した。操船はもちろん、現在のボートオーナーであるウィル。彼が今日一日、私達のガイドをするが、彼自身は大ベテランのテリーから学びたい事が沢山あるようだ。竿先にぶら下げたのは、私とテリーがロングA(15A)、ウィルが素晴らしい釣果を見せ付けているヨーヅリミノー。上流へとボートを走らせ、クリークの合流点から始める。3人でマングローブ際を叩いたが反応はない。数分で見切りをつけて次の場所へと移動する。2か所目は小川の流れ込み。いかにも魚が潜んでいそうだったが、ここも反応なし。
 3か所目は前日竿を振ったウィードエリア。私のロングAにバラマンディが2回顔を見せたが、活性が低いようで口を使わない。魚がいることは確認できたので、集中的にルアーを撃ち込んだが誰の竿も曲がらなかった。前日に比べて川全体が濁っており、今日の釣果を期待するのは難しい気がしてきた。
 スタートから2時間が経過。プロ2人を含む3人で竿を振っているのに、未だ1匹も釣り上げていない状況にちょっと焦りを感じてきた。最終日にまさかのボウズになりはしないか・・・そんな言葉が頭の片隅に浮かんできた3か所目のポイント。昨日の釣行でも竿を振った流れ込みがある場所だ。何気なくボックスの中から取り出したのが、ラパラのBXミノー10。このルアーは、バルサを透明樹脂で包み込んだルアー。BXとは、バルサエクストリームの略らしい。釣具店の店頭で初めて見た時、「これ絶対にバラマンディ釣りで使える!!」とビビッと来たヤツだ。樹脂のお陰で、耐久性がアップしておりハードな豪州遠征の釣りでも問題なく使えそうな点も気に入った。
 オーバーハング下に打ち込みジャーキングをしたら、いきなりバラマンディが横から現れてルアーを吸い込んだ。サイズは大きくなさそうなので一気に引き寄せてボートデッキにゴボウ抜き。サイズは49cm、フックを見たら、丈夫そうに見えた純正フックばグニャっと変形していた。きっと他にも魚がいるハズなので、太軸フックに慌てて交換してキャストを再開。直ぐにバラマンディ(40cm)が躍り出た。
 午前11時前、ボートを上流へ進め、小川の流れ込みにステイしてティータイムとなった。ウィルはこのツアー中、ティータイムの時もGPS機能付きのエレキを回してボートを流さないようにしていたが、テリーが「落ち着いて休めないからね」と言いながら立ち木にロープを絡めてボートを固定した。やはり私と同様に、テリーも常にウィンウィ〜ンと唸りながら動いているエレキは気にしている様子。動かしぱなしだとバッテリーの消耗も大きいはず。エンジントラブルなどの不測の事態に備えて、エレキがいつでも動かせるようにバッテリーの節約も大事だろう。
 ティータイム時は、ウィルのルアーボックスを広げてルアー談義。私の興味を引いたのは、8cm程の頭デッカチなクランクベイト。6thセンスのムーブメント80Xだ。ラトルを響かせ、3フィート潜るらしいが、彼はこれでティナルーレイクの巨大バラマンディを狙っている。フックはBKKの太軸ラウンド型に交換済みだ。テリーが現役ガイド時代、ティナルーへ行きたいとリクエストした際、釣れないから止めようと何回も断られた経緯がある。丸一日竿を振って1バイトあるかどうか。フッキングしたとしても、立ち木に絡まれてラインブレイクするなど魚を手に出来ない事が多いらしい。フィッシングツアーとしてリスクが高すぎるようだ。一方、ウィルは釣り場やパターンを熟知しているようで、コンスタントに釣果を上げている様子。スマホに保存されているデカバラの画像を何枚も見せてもらった。
 小休止した後も上流へ遡りながら、小さな流れ込みポイントや岸際のシェードを狙ってキャストを重ねる。しかし、全く魚っ気がなく、正午少し前に上流域探査は終了。船首をぐるりと回し、岸際にルアーを打ち込みながら川を下る。激しい雨が降る中、私の操るBXミノー10にマングローブジャック(25cm)が元気良く食らいつき、その5分後にはシルバーグランター(30cm)が出た。今日みたいな魚の活性が低い時は、魚が集まる場所を承知していないとボウズを食らいやすい。素人目には何処も一級ポイントに見えてしまうのだが、魚がいる所と全くいない所の差が大きく、ガイドの腕が試されるコンディションだ。私が2匹釣った後で、バックシートのテリーがロングA(15A)を使いバラマンディがヒット。マッディウォーターの中からハンドランディングした魚は35cm。魚が小さいので照れ笑いながらカメラの前でポーズ。
 後ろで操船しているウィルが、何やらゴソゴソやって落ち着かない。どうやら胸からぶら下げていたエレキのコントローラー内部に雨水が入り、トラブルが発生。エレキをコントロール出来なくなってしまった。彼は、販売店に電話を掛けながら、タオルで水滴を拭いたり、コントローラーを振ったりしているが直らない。まさか、ガイド自慢のミンコタエレキが故障するとは思いもよらず、残り半日、天候が悪い中で苦戦することになる。
 時計を見ると午後2時。昼食がまだだったので、雨を避けるために橋の下へ移動しサンドウィッチを頬張る。断続的に激しく降る雨と活性の低い豪州魚だけでなく、エレキの故障も加わり「釣りを楽しむ」という感じではなく、「修行」っぽくなっている。普通の人ならとっくに納竿しそうな状況。しかし、年齢こそ違いはあるが陽気なOZ2人と釣りバカの日本人1人は誰一人ギブアップしない。30分程、休憩した後、クリークの中に入ってゆく。狙うのはウィルがドレインと呼ぶ小さな流れ込み。フレッシュな水だけでなく、その先にある農場や牧場の排水路からは色んな物が流れてくるのでベイトが集まる一級ポイント。ベイトが集まれば、当然ながらフィッシュイーターも潜んでいる。
 昼食後、釣りを再開してから2か所目の流れ込み。テリーがシャッドラップSR8でバラマンディ(35cm)をキャッチ。1匹見つけたら、アンカーを下ろしてそのポイントを3人で集中爆撃する。オーバーハングしている枝葉や水中に沈んでいるストラクチャーにルアーを引っ掛けないよう、注意深くキャスト。着水後、直ぐにグリグリっとリトリーブしてシャッドラップSR8を潜らせる。トントンッと強めのジャークを入れてポーズを長めに取るとガツン。私がシャッドラップSR8で35cm、30cmを立て続けに釣った後、ウィルが中国製のシャッドルアーで55cmのバラマンディを釣り上げた。彼は、またしてもゲストより大きな魚を釣ってしまい、テリーに何か言われている。他にも魚がいそうなので、キャストを続ける。私がシャッドラップSR8でジャングルパーチ(25cm)を釣った後、テリーも同ルアーでジャングルパーチ(20cm)をキャッチした。
 午後3時半を過ぎた。今回の遠征で竿を振れるのは残り1時間半ほど。何処で竿を振るかが極めて重要となる。未だエレキは直らず、大雨により足元には水が溜まっているような状況だ。流れが強い本流でのポジショニングが難しいため、私達が向った場所は別荘前の私設桟橋があるワンド。アンカーを下ろして、バラマンディグラスのキワやウィードの上面を狙う。ポイントに到着して僅か2投目、私のシャッドラップSR8にバラマンディ(48cm)が出た。ルアーを丸飲みしていたのでテリーに外してもらい、直ぐにキャストを再開。
 すると5分後には再びヒット。ウィードの中に潜られないよう、一気に引き寄せてボート内にゴボウ抜き。サイズは46cmだった。魚を引き寄せる最中、後ろに他の魚の姿が見えたので、リリース後にすかさずキャストをする。このチャンスを逃すことなく3匹目(40cm)をキャッチした。ヒットルアーはいずれもSR8のクロータッド・カラー。私が連発している間、ウィルは釣具店に電話を入れ、エレキの手配をしている。私のガイドは今日までだが、彼の仕事は明日以降も続くのである。エレキなしでは、とてもタフな釣りが予想ざれるため、何としてでも確保しなければならない。
 午後5時、ウィルが中国製シャッドで良型をバラして終了かと思いきや、テリーの一声で時間延長が確定。更に少し下って、インレットの入り口にボートを停める。ここでの釣りが今回の遠征で本当の最後となる。3人で何回かキャストを繰り返したが反応なし。覚悟を決めて「ラストキャストだ」とテリーが言ったとたんに、彼のリーズシャッドにバラマンデイがヒットし58cmをキャッチ。この魚に誘発されて、急にバラマンディの活性が上がった。テリーのルアーに魚がヒットしたピンポイントに、遠慮なく私とウィルがルアーを打ち込む。上流域よりも、このエリアの方が魚のサイズが明らかに大きい。気合を入れて最後の勝負に挑む。
 私はステーシーver2でをキャストし、グリグリッとハンドルを巻いてルアーをダイブ。そして、長めのポーズをとる。ポーズを取っている間、ルアーは微妙にボディを揺らせながら水中を漂うのだ。これを数回繰り返すと狙いどおりにヒット。マングローブの根に絡まれないよう一気に魚を引きずり出して53cmをキャッチ。そしてテリーが再び竿をしならせて55cmを釣り上げた。これが最後の魚になってストップフィッシング。「ラストキャスト」と言ってから、バラマンデイを3匹も釣り上げてしまった。「ラストキャストは何回あるんだ?! 」という感じだったが、最後の最後でバラマンディが連発するドラマがあって楽しかった。
 土砂降りの中、ボートを引き上げ、カッパを脱いで車の中に乗り込む。車の中に入るまで、僅かな時間しか掛かっていないハズだが、見事なくらい雨で全身が濡れている。周囲が白く煙って見えるほど強い雨の中、ワイパーを最大スピードにしてケアンズに向って走り出した。私は相当疲れていたようで車中で爆睡。気が付いた時は、テリーのお宅に到着。時計を見ると午後7時半。ウィルはここから自宅までひとっ走りしなければならない。彼には、4日間頑張ってガイドをしてくれたお礼に爆釣したバブルクランクなどをプレゼント。きっとのルアーを大切に使ってくれることだろう。彼と硬く握手をして再会を約束した。| 
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 TOSHI  | 
 
TERRY  | 
 
 WILL  | 
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ジャングルパーチ  | 
 
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シルバーグランター  | 
 
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バラマンディ  | 
 
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マングローブジャック  | 
 
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