
 昨夜、離陸後に機内での夕食サービス開始は日本時間の午後9時半頃。出国前の空港内で、何か食べておかないと夕食前に空腹で死んでしまいそうな時間だ。フードコートで好きな物を食べておいて大正解なのだ。以前とは違い、機内食の楽しみが全くなくなってしまったので機内食の食事予約はしなかった。どんな物が提供されているか横目でチラチラと盗み見をしながら、文庫本「永遠の0」を読み進めた。映画のシーンを思い出しつつ読むと大変面白く、機内が消灯されても暫らく読んでいたが、いつの間にか寝てしまった。
 今回のパイロットは、着陸の衝撃が少なくとても操縦が上手な人だった。定刻ピッタリに空港へ到着したのだが、いつまで経っても飛行機から降ろしてくれなかった。理由は、地上の係員の準備が遅れ、飛行機の到着に間に合わなかったらしい。そんなことってあるのか? と疑問に思ったが、機体がターミナルに誘導されるまで、暫らく待たされてしまった。
 飛行機から降りてからは、小走りに空港施設内を移動する。これまでの経験で、ゆっくり歩いていると、入国審査の所で長蛇の列に並ぶ事になってしまう事を知っているからだ。入国はe-パスポートの自動機械でチェックを受ける。モニター画面に従って対応するだけだが、初めての人は前の人の動きを良く見ておくと良いだろう。嫁さん同伴だと、毎回ここで足止めを食らうが一人だとスルーパス。以前は一人旅だと必ず係員に呼び止められ、アレコレ質問されたり、荷物検査でスーツケース内をつぶさに調べられたりしたが、今回はそれもなかった。
 約束の午前6時にテリーが空港に到着。挨拶もソコソコに車へ荷物を乗せ、彼の家へと向う。車中では、お互いの家族の様子や、最近の釣果などをざっくばらんに話をする。しかし、英語が耳にスッと入ってこず、英単語も直ぐには口から出てこない。日頃、英会話をする機会がないので、どうしても反応が鈍い。聞いた言葉を頭の中で訳し、返事の英文を作成してから声に出すので、ワンテンポどころか、ツーテンポ以上遅れてしまう感じ。日本人でも聞き取れるスピードで話をしてくれるテリーの言葉ですら聞き落としてしまう。日本とケアンズの時差は僅かに1時間しかなく時差ボケはないが、言語の違いによる戸惑いは暫らく続きそうだ。因みに、ガイド業を引退した彼は、釣りに行く機会が大幅に減っている様子。
 テリー御自慢のお庭を拝見した後は朝食を頂く。テーブル周りは、クリスマスグッズが置かれている。真夏のケアンズでも、サンタクロースは白髭で分厚い赤い服を着てトナカイのソリに乗っているので何となく笑えてしまう。オーストラリアの東海岸なら、サーフボードやジェットスキーに乗っていて欲しかったりして。トナカイの変わりにカンガルーの姿は良く目にするが、さすがにソリを引かせたりはしないのである。
 食後はテリーの趣味、古いトラックのレストアの様子を見せてもらう。オーストラリアでは、古きよき時代のトラックをレストアするのがブーム。一部のコアな人達がネットで情報交換をしながら熱中しているらしい。テリーは、ここ何年も取り組んでいるが、いつになったら形になるのか分からないくらい作業が進んでいない。新品で立派なタイヤが付いたので、そこにある物が車だと認識できるが、知らない人はタイヤがなければ錆びてボロボロになった鉄材が無造作に置いてあるだけに思うだろう。
 レストア作業でとても役立っているのが、以前プレゼントしたエンジニア社製のペンチ ネジザウルス。テリーはこのペンチを大絶賛。仲間達にも紹介しているようだ。ネジ山が潰れたネジや錆びて固着したネジを外すにはコイツがイチバン有能なのだ。彼はこのペンチを手に入れ、作業スピードがかなり進んだらしい。前回の遠征時には、フィッシングガイドで世話になったウィルにもプレゼントしたので、きっと重宝しているに違いない。
 今日のお昼は、家族親戚が集まってクリスマスランチをするとテリーが言う。オーストラリアなので一般家庭ではお庭でBBQが定番なのだろうが、テリー宅では殆ど肉を食べなくなったのでスタイルが変わってきているハズ。ランチの後は、釣りに出掛けるので準備をしておけとのこと。部屋の天井で回転している大きなファンに釣竿を突っ込まないように注意しながら準備を始めた。今回使用したタックルは、シマノ・コンクエスト250DC&パームスEGC-606、アンタレスDC7&スコーピオンBSR1603F、テリーから借りた地元ショップオリジナルユナイテッドUR66MのスピニングロッドにツインパワーC3000HGをセットした。ベイトリールは豪州遠征でしか使わなくなってしまったため、使うのは2018年3月の豪州遠征以来の事。ちゃんとルアーを投げられるか、少し心もとない状態にある。
 釣りの準備が整い、ベッドの上に寝転んで本を読んでいたらいつのまにか寝てしまったらしい。名前を呼ばれて顔を出すと既にクリスマスランチの準備が整い、テリーの家族がワラワラと集まってきた。二十年ぶり位に会ったアシュレイ夫婦が連れて来たペット犬のモンティー君は、とても人懐っこくてヤンチャな男の子。人見知りを全くせず、無邪気に室内を走り回る。マリアさんが朝から作っていたチキンと野菜がメインのグリル料理を皆で囲みながら、来年の予定をアレコレと話す。
 テリーはマリアさんと友人のケビン夫婦と共にニュージーランドに行くらしい。ニュージーランドには、友人のレス・マーシュがパートナーと住んでいるはずだ。テリー達は、のんびりと釣りをしたりアウトドアを楽しんだりする様子。ニュージーランドと言えば、昔からトラウトフィッシングが有名だが、近年は近海でジグやカブラを使ったボートフィッシングが大人気。日本の釣りスタイルが普及し格段に釣果が上がっているようで、良型の鯛が釣れたりする。
 オーストラリアの夏は、日本と違ってベタ付き感がないのが嬉しい。しかし、日中は気温が35℃を超え、日差しはとても強い。炎天下での釣りは体に堪えるので時間を遅らせ、午後3時から出撃することになった。夜釣りは、水辺でワニに襲われる危険があるので不可。夕暮れ時まで釣りをする時間は僅かしかない。未だかつて、こんなに遅い時間から釣りに行ったことがないが、テリーのお誘いで気合を入れた。目的地は車で僅か15分の所にあるケアンズインレット。フィッシングプレッシャーが非常に高い場所なので、彼がガイド業を営んでいた時には滅多に行かない場所だ。その昔、釣りの行き先を検討した時、「ケアンズインレットはラストチョイスだ」と言っていたのを思い出す。
 因みに今は、バラマンディの禁漁期間にあたる。資源や自然保護に対して非常に厳しいオーストラリア。釣りに関しては地域により違いはあるのだが、クイーンズラント州におけるバラマンディは、11月1日から翌年の2月1日までがクローズドシーズン(禁漁)。この期間、釣り自体は禁止されていないので、もしバラマンディが釣れた場合は必ず全てリリース。また、通年において1日でキープ出来るのは5匹、最小58cm〜最大120cm。この基準に合致しない魚を釣った場合は、必ずリリースしなければならないというルールがある。違反に対してはもちろん罰金刑。密漁をしている人を見つけたら通報しろと書いてある掲示物が、ボートランプなどに設置されている。
 「バラマンディはどっちみち禁漁期間中なので、釣れても釣れなくてもイイや」などとバラした直後は思っていたが、これは大失敗だった。その後、ロングAを使って、マングローブ林の小川の流れ出しなどを丁寧に探っていったが無反応。毎度の遠征で痛感しているのだが、最初の1匹はどんな魚であれ確実にキャッチしておくことが大切なのである。今日は新月を迎える大潮。干潮からの上げ潮のタイミングで釣りを始めたつもりが、想定以上に潮の上がりが早かった。ベイト達は、水位の上昇と共に、マングローブ林の奥深くまで入ってしまいルアーでは釣る事が難しくなってしまった。
 そんな状況でも潮どおしの良いポイントでは、無数のベイトが一斉に逃げ回るボイルを時々見かけた。まさしく、お湯が湧き上がるようなボイル状態。多分、GTやバラクーダがベイトの群れを追い掛け回しているに違いない。ルアーをシャッドラップSR8に変え、トウィッチ&ポーズを繰り返しながらワンチャンスに掛ける。サマーブリーズと呼ぶ北風が強く吹き始めた。日本では、北風が吹くと寒くなるのだが、こちらは赤道が北にあるので、温度の高い風が吹く。サマーブリーズが吹くと「夏が来た」という季節の変わり目を示す証なんだそうだ。
 風で困るのは、もちろんボートコントロールだけではない。キャスティングだ。ストラクチャー狙いのピンポイント撃ちが大好きな私だが、アンタレスDC7には度々泣かされる。コンクエスト250DCは全く問題がないのだが、アンタレスDC7はバックラッシュが頻発。特に横風の影響を受けやすいシャッドラップを投げる時は要注意。例えるなら、コンクエスト250DCはマイルドで扱いやすい4ストロークエンジン。アンタレスDC7は、高性能な2ストのエンジンって感じ。とてもピーキーなのである。
 複雑に入り組んだケアンズインレットの中、移動を繰り返しながら魚を探す。やはり潮位の上昇が問題で、魚達がマングローブ林の中に入ってしまっている。マングローブのややこしく絡まった根際やオーバーハング下をシャッドラップSR8で狙い打っていったが不発。キャスティングの達人ですら、絶対にルアーを入れられないような奥の方で捕食音が聞こえたりして悔しくてたまらない。そこで作戦変更。魚探を見ながら水中のハンプ狙いでトローリングをすることにした。
 使うルアーは、スティッキーJr3。2018年3月の豪州遠征でお世話になったウィルのルアーボックスの中に沢山入っていたのを思い出し、今回の遠征準備の際に買っておいた中古品。魚探で水中をチェックしながら底の形状や堆積物を確認し、ルアーを通す。ベイトがいる場所は何度も往復したが反応はなかった。スティッキーJr3を豪州遠征で使ったのは、今回が初めてだった気がする。使ってみて良い印象を持ったので、そのままストラクチャー狙いのピンポイント・キャスティングゲームで使うことにした。
 いかにも魚が潜んでいそうなストラクチャーにドンピシャでスティッキーJr3を打ち込むと、いきなりの爆裂バイト。明らかに上から落ちてくるエサを待ち構えていた感じでマングローブジャックが飛び出した。ギュンギュンと竿先を引き絞ったこの魚は30cm。これでボウズにならなくてホッと一安心した。リリース後、再び同じポイントにルアーを撃ち込むと、またしてもヒット。今度の魚は、先に釣った魚より明らかに大きいサイズ。ストラクチャーに何度も潜り込まれそうになりながら、ギリギリしのいでキャッチ。サイズは41cmだった。スティッキーJr3で2連発。マングローブジャックは、鋭い歯を持っている。新品同様だったルアーは、2匹釣っただけで相当使い込んだルアーの様にガリガリにキズが付いてしまった。
 時計は午後5時半を回っていたが、テリーから納竿という声は掛からない。家まで僅か数分の所で釣りをしているので、いつもより遅い時間まで竿を振っていられそう。誰もがキャストするであろう桟橋周りや停泊しているボート近くは軽くチェック。そこから少し離れた竿抜けがしてそうなピンポイントをスティッキーJr3で丁寧に狙う。続いて、潮通しの良いクリークの入り口や、大岩、オーバーハング下、魚探に写る水中に沈んだ倒木もチェックした。
 ボートの溜まり場は、メッキの群れが集まりやすいところ。ここでスティッキーJr3を使い20cmを1匹キャッチ。ZBLシステムミノー50Sを投入すれば、かなりの数が釣れそうだったがパス。水中に沈むストラクチャーを狙っているとゴールドスポットコッドが躍り出た。コイツは港の岸壁などで根魚を狙っている釣り人には、とても魅力的な魚に違いない。獰猛果敢な魚で悪食。ルアーを咥えると、複雑に入り組んだねぐらにまっしぐら。釣り上げた時、体をL字型に曲げるので写真を撮り難いのも日本の根魚に似ている。
 午後6時半、ラストポイントとしてマゴチ狙いでサンドバーがある岬周りに移動。所々、マングローブの根がスパイクの様に水中に広がっているので、引っ掛けないように注意しながらリトリーブをする。直ぐに狙い通りにマゴチ(40cm)が出た。サイズは小さかったが、少し柔らかめな竿スコーピオンBSR1603Fを使っていたので、その力強い引きを十分楽しめた。| 
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 TOSHI  | 
 
TERRY  | 
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マングローブジャック  | 
 
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GT  | 
 
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マゴチ  | 
 
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ゴールドスポットコッド  | 
 
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