
 昨夜は疲れていたようで午後9時にはベットイン。しかし、朝まで爆睡とはならず、夜中に雷鳴と雨音で目が覚めてしまった。猛烈な雨が降ってはいるが、天気予報では朝には止んでいるハズなのでもう一寝入りする。次に目が覚めたのは、まだ薄暗い午前5時前。夜が明ける前から、様々な鳥が賑やかに鳴き交わしている。オーストラリアの鳥の多くは、夜間活発に行動するのでそれらをナイトバードと呼ぶらしい。
 今から寝ると、寝過ごしちゃいそうなので、そのまま静かに起きて釣行の準備に取り掛かった。今日は釣りをしている時に雨が降る可能性が高いので、昨日被っていた防蚊日除けメッシュキャップからお気に入りのオレンジ色した派手な防水のレインハットに変える。テリーからは、「その色は200マイル先から見え、魚からも丸見えだぞ」とからかわれるが、その言葉を笑いながら聞き流す。因みにこのレインハットは、2018年3月の遠征時、デントリーリバーで豪州遠征初のボートからの落水を経験した時に被っていた記念すべきモノでもある。
 トースト&シリアルの朝食を食べて、お庭を散策する。昨夜の雨で草木が濡れ、朝日で露が輝き全ての物が生き生きとして見える。なんだか、今日はとっても釣れそうな感じがする。12月26日はボクシング・デー。クリスマスプレゼントを開けて配る日とも言われているが、オーストラリアでは年に一度の大安売りがされる日。日本でいうところの'新春初売り'のようなものらしい。今日の釣りが私にとってのボクシング・デーになる事を祈るばかり。
 因みに今日は、新月で大潮まわり。潮位差は3mあり、満潮は午前10時前。行き先はデントリーリバーに決定した。午前6時半に出発。今日は車が沢山走っている感じ。学校はスクールホリデーに入っており、1月第2週まで6週間ほどの夏休みの最中。ボクシング・デーでもあり、早朝からお出掛けする家族が多いのだろう。オーストラリアは4WD天国とも呼ばれるが、ボロボロになった旧型ランクルや日本国内で少なくなってきたパジェロやテラノなどの四輪駆動車が現役バリバリで走っている。
 モスマンの街に入ったのが午前7時半、外気温は既に28℃だった。ここまでの道中、最近の情勢をテリーから聞いた事をここに記しておく。今、オーストラリアで特に問題となっているのは、中国人がオーストラリアの土地を買い漁っていること。日本企業も、バブル景気の際には相当な面積の土地を購入したので、そんな話を聞くと何となく後ろめたい。しかし、日本人と明らかに違うのは、土地を購入した後、飛行場を作って飛行機の離発着で騒音問題を起こしたり、住民がいる島を丸ごと購入し、プライベート管理地として立ち入り禁止にしてしまうなど、やることがかなりエグイのである。
 走行中の車内まで聞こえてくる賑やかなセミ時雨に驚きつつ、午前8時少し前にデントリーリバーのボートランプに到着した。駐車スペースには、既にトレーラーを牽引した4WDが何台も駐車されており釣りをする人は結構いる様子。午前8時半に出船し、先ずは上流へと向った。ガイド業から退いたテリーは、今シーズンは一度もデントリーリバーで釣りをしていないらしい。しかも、少し前に大きく地形が変化するほどの大洪水があったようで、ポイントの絞込みに苦戦している様子。岸がゴッソリと崩れ落ち、新たな小島が出現したりしている。
 水面をチェックしながら、ポッパーを投げてGTを探すがそれらしき気配はない。ベイトの群れがあれば、必ずそこには捕食魚が付いているハズなのだが、肝心なベイトの姿を見つけられない。暫らくボートを進め、河川が大きく曲がってるポイントに到着。ここでは、ルアーをポッパーから小型のバイブレーションに交換し、ターポンを狙ってみる。ターポンに効くルアーは、シルバー系の光り輝くヤツ。私はレンジバイブ55ES、テリーは銀色の鉄板系バイブを選んだ。
 魚探で水中をチェックすると、深いところにベイトの群れが集まっている様子。レンジバイブ55ESをフルキャストし、ラインテンションを掛けながら沈めていくと、何度もカツン、カツンと明確なアタリが竿を持つ手に伝わってくる。ターポンはフッキングが難しく、針掛りしたかと思っても直ぐにフックオフ。良型と思われるターポンを2匹続けてフックアウトさせて悔しい思いをする。
 何度もチャンスを逃した後で、やっとフッキング成功。レンジバイブ55ESを丸呑みしたターポンは、派手なジャンプを繰り返し抵抗する。魚の動きを見ながらボートに引き寄せ、ボートデーキ内にゴボウ抜き。キャッチしたターポン(45cm)は、デッキ上で暴れまくりウンコを撒き散らした。しかもこの魚はとても生臭く、リリース後はボート内の掃除が欠かせないのだ。ターポンをバラさずにコンスタントに釣るにはテクニックが必要。針掛り後のファイトも楽しいのでルアー釣りの対象魚として好敵手なのだが、後始末が面倒なのである。
 ターポンの反応がなくなり、次のポイントに移動する時間を利用しリーダーとフックに異常がないか確認をする。ボロボロになったリーダーは切り捨て、歪んだフックは修正・交換しておかないと、大物が掛った時に悔しい思いをするのだ。今回も太いリーダーがささくれ立っていたので、長いリーダーを切り詰めてスナップを結びなおした。
 ターポンゲームを楽しんだポイントの上流にある流れ込みの小場所でロングA(15A)をジャーキング。バラマンディが1バイトしたが後が続かない。丁度、満潮を迎える時間帯になったので、大きくUターンして下流域へ向った。向う先にある海の方では、雷雲が広がり稲妻が見える。過去にデントリーリバー釣行の際、物凄い雷雨に包まれ直ぐ近くに落雷。空気がピーンと張り詰めて振動するのを経験しているので、雷雲がこちらに来ない事を祈るばかり。
 午前10時半過ぎにテータイム。海上にあった雨雲が陸地に向って徐々に移動し始めた。雨雲の下は強い雨が降っている様で、灰色のカーテンが下がったように見える。今日のおやつはジャムをたっぷり塗ったレーズンパンと、私のお気に入りジンジャービスケットだ。オーストラリアは小麦の国。高品質な小麦を使ったパンやビスケットはどれも美味しく、自然と顔がほころぶ。今回もジンジャービスケットを自分の御土産用に買って帰るとしよう。
 ジンジャービスケットを頬張りながら河川を見ていると、上流から流れ着いたマングローブの枯れ枝が複雑に絡み合たストラクチャー付近でボイルが起きていた。GTらしき魚はいるようなのでティータイムは20分程で終了。直ぐにポッパーを投げ始めた。TDポッパーに反応がないので、新たに導入したロックポップ90Fをブン投げてポッピングする。GTやクイーンフィッシュは、1か所に留まらないので、ボートを流しながら広範囲に探る。
 雨雲の動きが活発になり、雷が近くで鳴り響き始めた。ボートランプへと戻りながら、船着場周辺や竹林の前をチェックする。雨がバラバラと降ってきたので、急ぎカッパを着込む。気温は高いがゴアテックス製のカッパなので快適。生地が厚手でしっかりしているが、釣り用に作られているためキャスティングなど一連の動作時にも不満を感じる事はない。
 キャストを続けていると、奇妙な赤い花を付けた木が目に飛び込んできた。まるで骨だけの傘を差しているように放射状に花を咲かせるのは、オーストラリア原産の熱帯植物アンブレラツリー。雨で塗れて赤色が一層際立っている。近づいて見ると、茹でて赤くなったタコの足が広がっているようにも見えてくる。どうしてこんな形の花を広げるのか、とても不思議だ。
 少なくとも1時間位は、雷雨が続きそう。先程、ティータイムでおやつを食べたばかりだったが、昼食を摂る事にした。東屋にはテーブルがないので、クーラーボックスをテーブル代わりに。イスもないので、冷たいコンクリートの床にペッタリと座る。メニューは、いつものセルフサービスのサンドウィッチ。パンにハムとレタス、トマトを挟んで塩コショウ、マスタードをタップリ塗って、パクつく。デザートはとっても嬉しい山盛りのフルーツ(マンゴー、ライチ、チェリー)。長寿の果実、楊貴妃が食べていたというライチは、クリスマス前からシーズンイン。日本では、冷凍した物しか食べる機会がないのだが、コチラではフレッシュな物が食べられる。味はマンゴーの方が遥かに上なのだが、ライチは疲れた体にはとても良さそうな感じがする。
 雷雲が頭上を通過し、明らかに近隣へ雷を何度も落とす。ピカッと光ってから雷鳴が鳴り響くまでの秒数を数えれば、どれだけ離れているか計算できるのだが、秒数を測る間もなくピシピシピシ、ドカーンと雷が落ちた。食事が終わっても暫らくの間は待機が続いたが、徐々に雷が遠ざかっていったので再び雨が降る中に出船する。
 ボートランプ対岸に進み、湾ベイトを広範囲にキャストしGTを探す。全く反応がないので、岸際をデプスレス75Fでチェック。少しずつ下流へと移動し、マングローブの根がスパイク状に川底から突き出ているシャローエリアをロングA(15A)で丹念に探る。今日は大潮周りなので、海水が河川の上まで流れ込んできているハズ。GTやマングローブジャックが必ず何処かにいる。雨後は魚の活性がUPする。雷雨で中断していた分を取り返すつもりで、キャスト回数を増やして魚を探した。
 私がゴチャゴチャやっている間に、テリーは私に実力を見せ付ける。ロングAでバラクーダ(50cm)を釣った後、ブラックスポットコッド(30cm)を釣り上げた。やはり実績のあるルアーを淡々と投げている方が釣れるようだ。そこで、アイルマグネット105Fに交換し、マングローブの根際にバンバン打ち込むスタイルに変更。いつもはワンサイズ小さいアイルマグネット90Fを多用するのだが、重量があるため横風があってもキャスト精度が高まり、大きく太いフックを装着できる105Fをチョイスした。キャストを始めて直ぐにバラマンディ(54cm)をキャッチ。写真を1枚撮って即座にリリース。同じ場所に、ルアーを打ち込むと、再び同サイズがヒット。しかし、この魚はファイト中にフックが外れた。
 クリークの入り口でアイルマグネット105Fに爆裂ヒット。ギュンギュンと力強くファイトするのはGTの特徴。バラさないように適度にドラグを効かせながら確実に引き寄せてキャッチ。サイズは30cmに満たなかったが、ルアーをバックリと咥え果敢なファイトをしてくれた。クリークの中にボートを進める。岸際にはクロダイの姿を良く見た。何故かこのエリアのクロダイは、ルアーへの反応が鈍く釣るのが難しい。食性が違うのかもしれないが、これらのクロダイを釣る方法があれば、もっと釣りが楽しくなるハズだ。
 午後5時少し前に納竿。一度上がった雨が再び降って来た。素早くボートをピックアップして車に乗り込む。ケアンズに向けて走りながら、車中ではテリーと今日の釣果を顧みる。普通の釣り人では絶対にやらないであろう猛烈な雷雨の中で頑張ってキャストを続け、2人で7魚種、15匹を釣り上げた。数的には不満があるものの我ながら頑張った感じ。今回は、いつも魚がいる場所に魚がおらず探すのにとても苦労した。テリーが言うには、「昨夜は新月で、スポーニングだったのかも」とのこと。魚はスポーニングエリアに移動し、産卵がらみの魚は口を使わず、魚卵を食べる魚は満腹状態。ルアーに反応する魚が極めて少なかったのかもしれない。
 今宵はマリアがミートパスタを作って待っているので遅くなってはいけない。海岸にあるバランスロックを車から降りずに写真を数枚撮ってよしとし、ひたすら走ってテリー宅へ午後6時45分に帰宅した。山盛りのパスタに食らいつき、日本から持っていったワインを開け氷を入れて飲む。食後は、アイスクリームと板チョコレートでしめて、一仕事終えた充実感を楽しんだ。| 
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 TOSHI  | 
 
TERRY  | 
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ターポン  | 
 
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ダツ  | 
 
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GT  | 
 
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マングローブジャック  | 
 
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バラクーダ  | 
 
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ブラックスポットコッド  | 
 
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バラマンディ  | 
 
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