豪州バラマンディ・フィッシングX
白昼夢それとも悪夢


テイルダンサー&バラマンディ42cm


擬似餌の玉手箱>豪州バラマンディ・フィッシング>'01/3遠征

'01/3/17(土)

〜スーパー漁師〜


フォルスケープ 6KB 昨日、豪州遠征の目標であるメーターオーバーのバラマンディを釣った同行者は、静岡県にある伊豆半島西海岸の小さな漁村に生を受け、物心がついた時には既に漁船に乗り込みオヤジさんの漁を手伝っていた。その漁から学んだ感覚が、今でもトラウマのように彼の釣り理論の根幹をなしているのは言うまでもない。

 彼の行動を見ていると、常にラインや針先のチェックを怠らない。偶然釣れたのではなく、釣るべくして巨大魚を釣ったという感がある。「生きていくために魚を獲る。漁師は魚を獲ってナンボのもの。」こんな漁師的哲学が彼の体の中に染み付いている。畜産物の買い付けで各国を飛び回るビジネスマンは仮の姿。名古屋空港出発直前まで会社から携帯電話に飛び込んでくる仕事話を的確にこなしているスーパー漁師である・・・。

 某釣り雑誌で超人気ルアーを生産するMB社の社長を紹介する時の口上をちょっと拝借して書いてみたが、MASAさんはまさしくスーパー釣師なのかもしれない。実はこの日、そして翌日も私は彼の腕前に平伏すことになる・・・。

 〜ビックそれともスモール?〜


 昨晩は遠征の度に必ず立ち寄っている純日本風大衆食堂って感じのお店で定食を食べ、3日間の疲れを癒した。深夜にはかなりまとまった雨が降ったが、朝には小雨程度になっていた。時間どおりにテリーがホテルのロビーに登場。昨日のビックバラの話はグルーバーから彼にもちゃんと伝わっており、車中ではビックバラ攻略のためのテクニックやバラの生態について様々なレクチャーを受けた。
 
 バラマンディは孵化してから1年で30cm以上に育つ。多分、今回釣れたメーターオーバーは6〜7年生の雌。動物の世界ではよくあるようにサイズは雄よりも雌の方が大きくなる。テリーに言わせるとバラマンディは非常に賢い魚のようだ。ケアンズ近郊では度々洪水が起こる事は良く知られているが、洪水がおさまった後に三日月湖が形成される。この中に取り残されたバラマンディは自分の住むエリアにいる餌の量を把握し、絶対に餌を食べ尽くさず摂取量を調整するのだそうだ。こんな所に育つヤツは生育が非常に遅くなるが、運良くバラが残っている三日月湖を発見できると非常に楽しい釣りが出来る。三日月湖に閉じ込められていたバラは再び洪水が起き本流がオーバーフローした時に川へと戻る。

 次にバラを釣る時に使うルアーのサイズについて彼の考え方を聞いた。昨日、グルーバーの指示で使った特大ルアーはテリーの船では絶対に使わないサイズ。「どうしてビックサイズのルアーを使わないのか?」と率直に尋ねてみた。過去に彼が釣った127cmのバラはシャッドラップ8で仕留めたと言う。「大きなルアーは大きな魚が釣れる。これは信実。」「小さなルアーは小さな魚だけでなく大きな魚も釣れる。これも信実。」と明言する。
 ビックバラは1日にボラを1匹食べれば満足してしまい、後は魚を見ているだけ。だから大きなルアーを目の前に通しても反応しない。しかし、小さいルアーを通すと満腹なはずのバラも食ってくる。「腹が一杯の時にボリュームのある料理を出されても手が出ないが、ピーナッツだったら手が出るだろう。」「シャッドラップはビックバラにとってピーナッツなんだ」と判りやすい喩え話をしてくれた。

 彼が小さいルアーを使わせる理由にはもう1つある。カイド業を営むためには、基本的に客に魚を釣らせなければならないという宿命がある。「日本人はムチャな事を言わないが、他の国の客は釣れないと金を返せと言うんだ。」と嘆いている。彼にはサイズはどうであれ「客には魚を必ず釣らせる」という強いプロ意識が根底に流れている。タフコンディションの中でも客に必ず魚を釣らせるので、ガイドとして人気がとても高いのだろう。

〜どこで釣る?〜


デントリーリバー 8KB ちなみに、テリーのガイドでビックサイズが釣れるのは月に1本程度。ガイドを依頼する際にはメーターオーバーを狙いたいのか、他魚も含めて数釣りをしたいのかを、しっかりと伝えることが大切だ。メーターオーバーを狙う場合は、5日間竿を振ってもボウズになる可能性を十分含んでいるので、それなりの覚悟が必要。時期にもよるが、他魚も含めて数釣りをするならジョンソンリバー。バラの数釣りにはデントリーリバー。一発勝負のビックサイズ狙いならケアンズ湾周辺か各河川の河口域になるだろう。

 私は刺されるととても痒いサンドフライが生息している河口域やケアンズインレットはちょっと苦手。ロングドライブにはなるが自然溢れるデントリーリバーでジャングルクルーズを楽しみながらバラを狙うのが気分的にすこぶる良い。イグアナやクロコダイル、様々な野鳥にも会うことができるので、豪州の大自然を楽しみたい人達にはお勧めだ。

 話は違うが、彼からもう一つアドバイスがあった。「もしビックバラを釣った時は記念に鱗を1枚取っておけ」とのこと。バラマンディは原住民のアボリジニィから「巨大な鱗を持つ魚」と呼ばれるだけあり、銀色に輝く見事な鱗を持っている。無理に魚体から鱗を引き剥がすのは、可哀相なのでランディング時に剥がれ落ちた物を拾ってよしとしよう。

〜もしかしたら絶好調!?〜


バラマンディ45cm 6KB ケアンズを出発してから暫くは晴れ間が出ていたにもかかわらず、モスマンの街中に近づくと急に曇りだしてきた。「何だか天気が怪しくなってきたねぇ。雨が降るかなぁ。」などと話を始めると、「トシ!口を閉じていろ。お前が騒ぎはじめると必ず雨が降る。暫く口をジップしろ。」と笑いながらテリーが言う。忠告に従い暫し沈黙していたのだが、雨がザァザァ降ってきた。(涙)

 午前8時過ぎ、デントリーリバーに到着し、手早くボートに乗り込み上流に向う。本流はマッディなのだが流れ込む小川は随分クリアになっている。小川の合流点を転々と狙いながら更に川を溯る。使うルアーは私がテールダンサーMASAさんがライブリーペッパー、そしてテリーがTDシャッドである。開始1時間後、とある小川の合流点でヒットしたのは私の操るテールダンサー。「よっしゃ〜!!」と声を上げながら巻き合わせをして、確実にフッキング。上がってきたのは45cmの小バラ。小バラといっても同サイズのブラックバスよりも遥かにパワフル。昨日は魚の顔を殆ど見られなかったので、少々小さくても喜びは大きい。ましてや、その日の1匹目となれば格別である。

 続いてMASAさんのライブリーペッパーにもバラがアタックしたがフックオフ。私はサンダースティックに変え激しくトウィッチしていると25cmのターポンがヒット。ターポンがいると判りスゴイスプラッシュへルアーを交換すると、逆にバラがでかい捕食音をたてて襲い掛かってきた。しかし、これはフッキングまで持ち込むことはできなかった。そのままスゴイスプラッシュを投げ続けてマングローブジャック(35cm)、ターポン(25cm)を1匹ずつ釣り上げた。今日はもしかしたら絶好調かもと思えた一時だった。

 川を溯ったところにある合流点でアンカーを打ち、左から入ってくる茶色く濁った水と右から流れ込んでくる水の境(潮目)を3人で丁寧に探る。このポイントにバラが潜んでいるとガイドは確信を持っていて、合流点先端の岸際ブッシュや潮目の中をしつこく狙いジャーキングするように指示が出る。ヒットしたのはMASAさんの操るライブリーペッパー。48cmのバラは潮目の茶色く濁った側でゴッと出た。他にも潜んでいるハズだと暫くキャストを続けるが無反応。アンカーを引き上げ、茶色く濁る川の上流へと船首を向けエンジンをスタートさせた。

〜そこはイグアナランド〜


デントリーリバー 7KB うっそうと茂るジャングルの中、左右から倒れ込んでいる樹木を慎重に避けながらボートを進める。「この先は絶対に進めないよなぁ」と思える数々の倒木を避けるためにボートデッキに身を伏せてかわし、ある時は水中に沈んでいる倒木をエンジンをピックアップして、船底をゴリゴリ擦り付けながら強引に越えていく。
 ガイドが指差す倒木の上をデッキに伏せながら目を凝らすと、何やらコソコソと動く生物を発見。じっと見つめると、大きなトカゲが首をもたげてキョロキョロしていた。「イグアナ! ここはイグアナランドだ」とガイドが言う。保護色になっているので非常に判りにくいのだが、目が慣れてくるにしたがい、周囲にはアチコチにイグアナが潜んでいることが判り、その数にちょっと驚いた。正しくここはイグアナランド。全長は40〜50cmぐらいだろうか。日本に持ってかえれば幾らで売れるのだろうと思わず皮算用をはじく。

 午前11時前、MASAさんがライブリーペッパーでジャングルパーチを釣り上げたところで遅めのティータイム。恒例のピンクの砂糖が乗った甘いパンを食べながら、ガイドから話を聞く。1月には1ヶ所のポイントでレギュラーサイズのバラを20本釣ったらしい。一度で良いからそんな機会に恵まれてみたいが、はるばる日本から年に1〜2回訪れる程度の私達に幸運の女神が微笑むことはマズなさそうだ。

 ジャングルクルーズを十分堪能させてもらい、やっと到着したのは、私が「研ナオコポイント」と呼んでいる場所。以前、TV番組で研ナオコさんの息子とタレントのヒロミがバラマンディを釣ったポイントなので、こう呼んでいるのだが、デントリーリバーで釣る時は必ずここに案内される。このポイントは、そそり立つ太い樹木と水中の倒木が川の流れを分断し、横からは小川が流れ込み複雑化な水よれを生んでいる場所だ。

研ナオコポイント 7KB とても狭いポイントなので、狙えるのは船首に立つ1人のみ。釣り人は適宜交代しながらキャスト。僅かなスポットにルアーを打ち込み、短い距離で激しいトウィッチをするという高度なテクニックが必要とされる。魚の活性が高い場合は一投目で食ってくるのだが、濁りが影響してかコツリとも反応が無かった。しつこくテイルダンサーで攻めていると42cmのバラがヒット。続いてシャッドラップで小バラをばらした。一方、MASAさんはシュガーディープで45cm前後を2本キャッチ。ガイドは前年10月の遠征時、同行者Kがプレゼントしたバラ用自作ミノーHIROルアー”で小バラをばらした。

 苦労して到着したポイントに別れを告げ、再び倒木を巧みにかわしながら川を下る。その後、1時間半も魚の反応が全くない状態が続き、ガイドがスゴイスプラッシュで40cmUPのターポンを1匹ポツリと釣って再び沈黙。私達以上に、ガイドは釣れないことに苦しんでいるようで、度々まとまって降った雨のことに悪態をついていた。

〜白日夢それとも悪夢〜


 小川の流れ込みがあるシャローエリアでポッパーを使いターポンを狙う。パシュッ!パシュッ!と出ることは出るのだが、魚が小さいのかフッキング出来ずに私達のテンションも下がりぎみ。続いて、本流へ細々とした小川が流れ込む、ブッシュに囲まれたほんの小さなスポットを狙う。ガイドから「上のブッシュには引っ掛けるな」「水中にはマングローブの根がスパイク状に突き出ているので注意しろ」とアドバイスが出る。

 1投目、ミスキャストで上のブッシュにルアーを引っ掛ける。明らかに集中力が欠けており、自分のへたくそさに嫌気が差しながら、バシバシとロッドを煽ってどうにかルアーを回収。そして2投目、キャストは決ったが、今度は水中に潜んでいるスパイク状の根に見事に引っ掛けた。そしてルアーを回収するためにボートを突込みポイントをぶっ潰した。

 このポイントで1〜2匹釣っておこうという思惑は僅か2投で打ち崩し、次なるポイントを求めて一気に下流へ下った。今度は本流脇の深い淵になっている場所にアンカーを打ち、腰を据えてオーバーハングの下を狙う。
 狙い始めて間もなく、MASAさんのロッドがしなった。ライブリーペッパーで35cmの小バラをキャッチ。その2分後に、ガイドがTDシャッドで同じサイズ。3分後に再びMASAさんのライブリーペッパーに30cm。その5分後にガイドがチェックベイトSで55cm、8分後には57cmを釣り上げた。
 ガイドの様子を横目で伺うと、彼はフッキングさせた魚を直ぐに釣り上げず、巧みに竿を裁きながら暫く泳がせ周囲の魚の活性を上げている。彼はシンキングプラグを使いサイズアップさせているので、我々もシンキングに変更。直ぐにMASAさんのアスリートミノーSに50cmがヒットした。

 この間、当然私もしっかりとキャスト&トウィッチを続けているのだが、何故かコツリとも反応しない。実績のあるテイルダンサーシュガーディープハスキージャークアスリートミノーを投入しても全くダメ。そのすぐ横で同船している2人が次々にヒットさせている様はまるで白日夢を見ているかのよう。明らかに私の操るルアーだけが避けられている感じだった。「ええっ〜どうしてぇ????」などと情けない声を出し、殆ど涙目になりながら、懸命に力強くトウィッチを続けるがやはり反応は無い。

〜長めのポーズが大切〜


チェックベイト&バラ45cm 10KB ガイドが「これを使え」と、つい先程50cmUPを2本引きずり出したチェックベイトSを私に手渡した。同船者のヒットルアー借りて釣りをするというのは、非常に屈辱的なのだが、この際、そんな事にこだわっている場合ではなかった。「とにかく1匹釣りたい」「とにかく1本釣らせてくれぇ」という悲願のもとキャストを始めた。淵の底に潜んでいるヤツを釣るために、ガイドのアドバイスに従いキャスト後はゆっくりと10カウント。そしてピッピッと2回トウィッチ後にロングポーズ。この繰り返し・・・。しかし反応がない。もう魚はいないのか?まるで悪夢を見ているかのようだった。

 全く反応が無いので、半ば諦めぎみにトウィッチを止めた瞬間にガツッとヒット。「よっしゃゃゃゃ〜」と思わず声が出た。サイズは45cm。サイズに不満はあるが、この1匹を釣り上げた時はマジで嬉しかった。今思えば、トウィッチ後の長めのポーズが大切だったようだ。釣りたい一心でガツガツとトウィッチをしていたので、魚がルアーに襲い掛かる間がなかったのかもしれない。バス釣りにおいては、春先や活性が低い時はロングポーズが攻略のキモとなるのだが、バラ釣りでも同じであることが判った。

 結局、このポイント1ヶ所で40分弱の間に7匹を釣り上げて打ち止め。借りたルアーだったが、止めの1匹を釣り上げることができホッとした。さて、チェックベイトといえば、ガイドのテリーがテストを繰り返して製品になったものである。過去の遠征時に彼のボックスの中にテストモデルが入っていたのを覚えている。彼はこのルアーを、どんな時にどう使えば魚が釣れるかを当然熟知しているのだろう。今回はルアーの使い方について随分勉強になった。

 午後3時に遅い昼食を摂る。沈黙しているバラマンディを叩き起こすためにキャスト&トウィッチを繰り返していたらメシを食うのも忘れていた。15分そこそこで昼食を終え、再び実績のあるポイントを転々と移動しながらキャストを続ける。雨により濁ってしまった川は著しく魚の活性を下げ、何処に行っても魚の反応は鈍い。

 残り1時間を切ったところでMASAさんがライブリーペッパーで23cmのアーチャーフィッシュ(鉄砲魚)をキャッチ。続いて、40cmのバラマンディをキャッチしてタイムアップ。私の操るルアーは見向きもされなかった。午前中のペースで午後も続けることが出来ればいけば、さぞや楽しい一日だったことだろう。今日はMASAさんの操るライブリーペッパーにしてやられた感がある。


4日目の釣果結果

TOSHI

MASA

TERRY

バラマンディ




ターポン




マングローブジャック




アーチャーフィッシュ




ジャングルパーチ






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