午前6時前、ベットから抜け出して釣行5日目の準備に取り掛かる。ラブリバーへのプチ遠征になるため、ガッツリと朝食を摂って、しっかりトイレも済ませる。ベッタリと日焼け止めと虫除け薬を塗った後、タックル一式をテキパキとボートに積み込んだ。絶対に忘れてはいけないのは、3人分の昼食と飲み物。忘れ物があっても母船ピクーまで取りに戻るのが大変。未開の地なので、幾ら沢山お金を持っていても商店なんてある訳なく、紙幣はただの紙屑同然。オーストラリアの紙幣はプラスチックが混ざっているので、お尻を拭くのにも使えない。必要な物がちゃんと大型クーラーボックスの中に入っているか再確認をする。
午前7時半に出船し、一気に河口へ向かう。アーチャー湾内に鳥山が見えたので、メタルジグを用意してベイトの下にいるであろうクイーンフィッシュやGTを狙うことにした。スピニングタックルを握り締め、船首に立つ。選んだルアーは、フォーリングでもファストリトリーブでも使えるサージャー。2年前の釣行で小型メタルジグの必要性を痛感したので、サージャーの他にもアレコレと持って来ている。
鳥山はあるのだが、ベイトがかなり小さい。メタルジグを引きまくるが無反応。クリア系の樹脂製ポッパーも投入し、水面を激しく引きまくったがこちらも反応はなかった。ボイルが起きるわけでもなく、直ぐに鳥達は何処かに移動してしまうため見切りをつけてラブリバーに向う。河口を抜け出して、陸地を左手に見ながら外洋をひたすら南下する。"外洋"と言っても、実はアーネムランドとケープヨーク半島に挟まれた巨大な湾、カーペンタリア湾なのである。幸い天候に恵まれ、風はなくて波も穏やか。この状況ならノントラブルで最愛のラブリバーに辿りつけられるだろう。
ラブリバー河口の目印は白い砂浜。強い流れ出しがある訳でもないので、すんなりと河川内に入れた。砂浜に横たわる倒木や、マングローブのオーバーハング付近を狙ってキャストしながら河川を上ってゆく。私のロングAにクイーンフィッシュがバイトしたがフッキングには至らない。下流域は、何故かタコクラゲが大発生。ピンポン玉くらいの物からソフトボールくらいの大きさのクラゲ達がプカプカと泳いでいる。このクラゲは無毒のハズだが、時々、絹糸のような細く透き通った触手を長く伸ばした、いかにもヤバそうな魚の浮き袋状のクラゲも混じっている。ルアーをピックアップした時や魚をキャッチした際に、この触手が絡まっているとエライ目にあうので要注意。刺された場合、酷い時は病院に行かなければならない。しかし・・・その病院はラブリバー周辺にはない。この領域にはボロイ小屋が1件あるだけで、そもそも陸地には道路すらない所なのだ。
更にボートを進めて、切り立った岸で岩盤がむき出しになっているロッキーエリアに到着。ここは明らかに他の場所とは風景が違う。こんな所には必ず魚が付いているハズなので、アンカーを下ろしてじっくり狙う。本日の1匹目は、テリーのマスクバイブに出た55cmのターポン。ターポンはヒットした直後に水上を何度も跳ね上がるグットファイターなのだが、お尻が極めて緩い。ボートデッキに魚を引き上げると、ウンコを垂れ流しながらデッキ上で跳ね回るのでとても性質が悪いのだ。
今回の遠征で、このロッキーエリアを攻めるため、日本からワザワザ持ってきたルアーがある。ブレード系の湾ベイトだ。近年、浜名湖のボートシーバスゲームで注目されているのがこのルアー。「投げて巻けば初心者でも釣れてしまう」と言われる程、イージーに魚が釣れるらしいが、実際、浜名湖で使ってみてもそんな簡単に魚が釣れるハズもない。日頃、足を運ぶフィールドではブレード系ルアーの出番はなく、クルクルが評判になった時に使い、ライントラブルや根掛かりに悩まされたので敬遠がちになっている。何個か購入したが、出番がないまま部屋の中でホコリを被っていたヤツをボックスの中に突っ込んできていた。
やや水深がある場所なので、キャスト後にラインを張り気味にしながらフォールさせるといきなりのバイト。フッキングには至らなかったが、1投目から反応があったのには驚いた。直ぐにルアーを回収し、再び岩盤を目掛けてキャスト。フォールさせるとガツンときた。フッキングが決まり、さして大きくなさそうな魚を引き寄せる。竿先にぶら下がったのは25cm程のエスチュアリーコッド(ゴールドスポットコッド)。釣り上げられた時に、体をL時型に曲げるクセがあるのは他の根魚と同じだ。コッドは群れになって生息しているハズ。リリースして直ぐにキャストを再開すると、即座にヒットし同サイズをキャッチした。僅か3投で2匹をあっと言う間に釣り上げ、思わず顔がニヤケる。水中には岩盤が広がっているハズなので、きっとこの一帯はコッドの楽園に違いない。
シゲさんは、すかさずクルクルを投入しコッド(25cm)をキャッチ。一方、テリーは、マスクバイブの可能性を探るため投げ続け、コッド(30cm)とクロダイ(25cm)を釣り上げた。マスクバイブは本命のバラマンディのほか、ターポン、コッド、クロダイまで幅広い魚種に対応出来るところが凄かった。キャストするたびに私の湾ベイトにバイトがある。ノーマルのままでは、フッキング率が低いようなので、地元釣具店で紹介しているようにアシストフックを付けた方が良さそうだ。後部にWフックを付けたりすると、まんまと釣り業界の術にはまりそうだが、釣果が確実に上がるのなら致し方ないのかも。
ついコッド釣りに熱中してしまったが、わざわざ遠路遥々ラブリバーまで根魚を釣りに来たのではない。延々と釣れ続けそうだったが、「もう十分だよ」って感じになって、上流へ移動する。ロングAでオーバーハング下を撃っていると、クラゲだらけの水の中から50cmUPのバラマンディが飛び出した。しかし、後が続かない。水位が高過ぎて、マングローブの根際にルアーを打ち込めないのだ。
キャスティングでは反応が乏しいので、少しの間、ロングAを使ってトローリングを試す。後方にキャストをして、ボートを歩く程度のスピードで走らせる。竿を握り締めているだけでは魚へのアピールが足りないので、時折あおってルアーにアクションを付けて魚にバイトするきっかけを作ってやる。魚がヒットすれば、手元にいきなりガツン。ボートが進んでいるので、向こうアワセでフックセットが完了する楽チンな釣りなのだ。
トローリングならピンポイントを狙った小難しいキャストは一切不要。ガイドが適切に魚がいそうなエリアを選定し、適切なスピードでボートを進めれば魚が釣れてしまうのだ。キャスティングがピンポイントを狙う"点の釣り"に対し、トローリングは"線の釣り"。複数の竿を出せば"面の釣り"。ルアーを変えて、それぞれ違う水深を探れるように設定すれば"立体の釣り"が出来るハズ。この釣りを突き詰めていけば奥の深い釣りかも知れないが、基本的に操船するガイド任せの安直なスタイルなので、正直言って私はあまり好きではない。
過去に実績のあるエリアを流したが不発。Uターンして再び流すとシゲさんのロングAに40cmのバラマンディがヒットした。その1分後、テリーのロングAにも30cmのバラマンディがヒット。丁度、小型のバラマンディがスクールしている所にルアーが通ったようだ。ここで私のロングAにもヒットすれば3人が揃ってニコニコ出来るのだが、釣りの神様はそんなに甘くない。私のルアーにはかすりもせず、この場をあとにした。
河口から7〜8km上がったところで、一気に視野が広がった。ラブリバーの中流域には、東西約5km、南北約3kmのニンニクの様な形をした大きな池がある。水深は20cmから深いところでも3m程度しかない、泥質のフラット&シャローなエリア。池と言っても山中湖よりも大きいので、本来なら湖と呼んだ方が良いのかもしれない。テリーはちょっと渋い顔をしながら、「水位が高すぎる」とコメントをする。水位が高いと、バラマンディは散ってしまって釣るのが難しくなるのだ。狙う場所はメインチャンネルのショルダー部分。河川なので何処かに蛇行したメインチャンネルがあるらしい。水位が低い時には、このチャンネルに全ての魚が集まり、笑いが止まらないくらいの爆釣が楽しめるとのこと。
船首に立って竿を振り始める。池の真ん中で、ぐるりと周囲を見渡すが360°何もない。まるでフラット&シャローな浜名湖で、訳も判らずガイドの指示に従いルアーをキャストする時の気分に似ている。本当に釣れるのかどうか、頭の中は疑問符ばかりが浮かぶのだ。最初にヒットしたのはテリーの指示どおりにロングAを投げていたシゲさん。70cmぐらいのバラマンディが水面で激しくエラ洗いをして、ルアーを吹き飛ばして姿を消した。
一度、魚を見ればそれまで疑心暗鬼だった気持ちは、一瞬にして何処かに消え去っている。メインチャンネルを探しながら少しずつボートを進め、キャストを重ねていると再びシゲさんがヒット。65cmのバラマンディをキャッチした。ノッペリして何もない場所で、飛距離が伸びないロングAは余りにも心細い。そこで私は、広範囲に水面付近を攻められるUZUのブゥビィを投入。水中にうっすらと見えるチャンネルを意識しながら、ノートウィッチのストレートリトリーブをしているとガツンと出た。この釣り方で63cmのバラマンディを2連発。そして3匹目はボート間際でエラ洗いをしてルアーを吹き飛ばし逃げていった。リップレスミノーのタダ引きに、いつも余り良い顔をしないテリーも、ここでの威力は認めざるを得なかった。
シゲさんもロングAをスナップから外し、他のルアーをアレコレ使い始めた。スカジットのBマッチで良型のバラマンディを逃し、クリークチャブのナックルヘッドで60cmUPのクイーンフィッシュをスレ掛かり。散々、強烈なファイトした挙句にフックオフするという、クソ暑い中で最も体力を奪われる嫌らしいパターンだ。アタリが止まったので、移動しながらトローリングをする。開始間もなく、テリーがロングAでフィンガーマーク(ゴールデンスナッパー43cm)とバラマンディ(64cm)を立て続けにキャッチした。彼は自慢げな顔をして、私達にロングAを見せつける。
テリーが強く勧めるだけあって、ロングAは確かに釣れる。しかし、「他にもあるんじゃないか?」と、いつも別のルアーを探す天邪鬼な私。昔は、テリーが選んだルアーしか使わせてもらえず、「残りは全てしまっておけ」と指示が出て、日本から持ってきた数多くのルアーを豪州の水に漬ける事なく帰国していた。残念で仕方がなかったが、今になって考えると、当時使おうと思っていたルアーの殆どが使い物にならないのは明白だ。使うルアーを指定するのは、限られた時間内にバラマンディをゲストに釣ってもらいたいという、彼の強い気持ちの現れだった。遠征回数も重ね、バラマンディに使えるルアーも自分なりに判ってきたので、あえてボックスの中から違うルアーを取り出す。この場でトローリング用に選んだのはZBLシステムミノー139F。後方にキャストをしてトロトロ引いているとドカン。60cmのバラマンディが飛び出した。
トローリングをしている最中、ボートの遥か前方にストラクチャーがあることに気が付いた。ずっと気になっていたストラクチャーへ徐々に近づく。何もない真っ平なエリアにストラクチャーがあれば、魚が付いているのは明白。流れ着いた倒木のようだが、浮いているのか、着底しているのか不明。魚にプレッシャーを与えないように、十分距離を取って狙い始める。私の戦略は、フラットラップ10をスピニングタックルで遠投して攻めた後、ボートを寄せてからはベイトタックルで丁寧に探るというもの。こんなポイントは、遠投して同船者よりも先に、ポイント近くに投げた方が絶対にお得なのだ。
フラットラップ10をフルキャストしてトウィッチを始めると、クイーンフィッシュがルアーを咥えた。しかし、コイツはファイト中にフックオフ。ルアーを回収して、ブン投げると今度はクロダイ(33cm)が躍り出た。写真を撮ってリリース。即座にキャストを再開すると、またしてもヒット。今度は本命のバラマンディ(57cm)。僅か数分で、3種の魚を掛けてビックリ。しかし、これはほんの序の口で、怒涛の入れ食いタイムに突入した。
|
TOSHI |
SHIGE |
TERRY |
バラマンディ |
|
|
|
マングローブジャック |
|
|
|
クイーンフィッシュ |
|
|
|
フィンガーマーク |
|
|
|
エステュアリーコッド |
|
|
|
ブルーサーモン |
|
|
|
ターポン |
|
|
|
クロダイ |
|
|
|