
 ボーイング787ドリームライナーの前座席背部に付いているモニターで無料の釣り番組を見たりしていたら、いつの間にか眠ってしまった。隣に座る嫁さんのモニターは利用開始早々にハングして使うことが出来ず、読書用ライトすら点かない。機体は最新式で信頼性も高いと聞くが、装備品はイマイチな感があった。この機体は、乗客が過ごしやすいように機内空気がしっかりと調整されているらしいが、夜中に妙に喉が渇いて目が覚めた。しかも口の中が異様にベタつく。「何でだろう?」と考えたら、思いつくものがあった。
 寝られたのか、寝られなかったのか良く判らない状態で、もうじきオーストラリアの地に降り立つ距離になった。着陸30分前にはシートベルト着用のアナウンスが入り、動けなくなってしまうのでこれ以前に身支度を整え、直ぐに席を立てるように準備をしておく。当便は6分程遅れてケアンズ国際空港に到着。シートベルトサインが消えて直ぐに通路に立ち、出口に向って歩みを進める。今回も入国は2014年〜2015年から導入されたスマートゲート(ePassport self service)を利用。端末機にパスポートを突っ込む自動審査を受け、顔写真撮影後に無事入国した。
 8月上旬、日本は真夏だが、赤道を挟んで反対側のオーストラリアは真冬にあたる。ケアンズの朝5時半は、まだ暗く、雨も降っているためか空気が冷たく肌寒い。屋外は寒いので施設内の出入り口付近で外を見ていると、テリーが運転するガンメタリック色の装甲車のようなイスズのD-MAX(改)が滑り込んできた。再会を祝して挨拶を交わし車に乗り込み、ひとっ走りしてテリーの新居へ移動した。
 午前7時半、デントリーリバーに向けて出発。車中のラジオからは、ケアンズのニュースが流れる。今、巷で話題になっているのが、白いクジラ"ミガルーMigaloo"が海岸にやって来たことらしい。ザトウクジラのアルビノで、全身が真っ白。まさしく、白鯨。毎年、冬になると南極付近から移動し、暖かいクイーンズランドの沿岸域に出没するとのこと。ホエールウォッチングのツアーで見ることが出来ればとてもラッキーに違いない。(画像出典:ブログで海外生活(ラストリゾート))
 インフルエンザが大流行して大変だったモスマンの街を通過。白い煙を吹き上げて操業しているサイウキビ工場を横目に見ながらデントリーに走りこんだ。午前9時半、ボートに乗り込んで上流に向う。今回のタックルは、往年の赤い竿バンタムスコーピオンBSR1603Fにコンクエスト250DCをセット。テリーから借りたスピニングロッド プロキャスターV IM7に持参したステラ3000。嫁さん用にはユナイテッドロッドVR66M(ファストアンション、ミディアム)にツインパワーC3000を組んで使ってもらう。
 開始2時間近く経って、ようやくヒット。水温が低下してバラマンディの反応がないので、塩分濃度が高い下流域まで下ってGT狙いに切り替えていた。川の真ん中に広大なシャローエリアがあり、ここをGスプラッシュ80でポッピングしているとバッコ〜ンッ。25cm程しかないメッキサイズだったが、良くファイトしてくれた。更なる追加を求めて3人揃ってポッピングをしたが周囲は沈黙。GTは群れで移動しているハズなのだが、その姿は全く見られなかった。いつもなら、"馬の瀬"の部分に集まるベイトをGTが狙って回遊しているのだが、今日はベイトの姿を見ることが少ない。
 ボートを河口域まで走らせ、岸際にある倒木を丁寧に探る。使うルアーは"ボウズなし"のZBLシステムミノー50S。「オーストラリアまで行って、そんな小さなルアーを使うの?」なんて声が聞こえそうだが、遠征へ行く人には絶対にBOXの中に入れておいて欲しいルアーなのだ。ボートを岸と平行に進めながら、ZBL50Sを倒木に引っ掛けないように次々と打ち込んでゆく。魚が付いている倒木と付いていない倒木の差がハッキリしており、魚が付いている場所では、陰からワラワラと小さな魚が出てきて、次々とルアーにアタックする。
 時計を見ると12時10分。ティータイムと言うよりはランチタイムの時間なのだが、潮のタイミングも考えて甘いココナッツペーストが塗ってある菓子パンと紅茶を頂きながら15分程の休憩で済ませる。まだ嫁さんが釣っていないので、休憩後は、精度の高いキャストが不要な"馬の瀬"のあるエリアへと移動。彼女にはGスプラッシュ80を投げてもらい、ポッピングで魚を探査。まもなく、彼女のルアーが水柱と共にひったくられ、ドラグの唸りを伴ってラインが一気に出された。その力強いファイトは、明らかにメッキサイズとは違う。相手は、直線的に泳ぎ回るので大型のGTかクイーンフィッシュ。猛烈なファイトに負けないよう彼女には船首にしっかりと立ってもらい、暫く頑張ってもらった。
 冬になると河口域でメーターオーバーのクイーンフィッシュがポッパーで釣れる事は知っていたが、そのファイトの力強さは嫁さんの横でサポートしていた私にも十分伝わってきた。更なる追加を求めて"馬の瀬"周辺を何度もポッピングする。しかし、全く反応はない。ここで攻め方を変えてポッパーのトローリングをやってみた。Gスプラッシュ80をロングキャストした後、ミノーを引く時よりも少し速度を落としてボートを走らせる。カジキマグロ狙いのトローリングのように、水飛沫や泡を立てながらポッパーが表層を泳ぐように船速を調整して広範囲に探る。少しして私のGスプラッシュ80にGTが飛び掛ってヒット。竿をしっかりと握り締め、即座に戦闘モードに入って魚とやり取りをした。キャッチしたGTは45cmUP。結構、良いサイズなのだが、嫁さんが釣ったクイーンフィッシュの後では、小さく見えてしまったのが残念。
 午後1時半、遅めのランチ。クリークの入り口にボートを停めて、サンドウィッチを作ってパクつく。サンドウィッチはいつもと同じ。バンズにトマト、レタス、ハム、チーズを乗せ、マスタードを塗って塩・コショウを振り掛けるというシンプルな物だ。このスタイルは、記念すべき第1回の遠征、1998年4月から変わっていない。
 昼食後に入ったクリークでは、GTらしき魚のバイトが僅かに2回あっただけで、3人ともノーフィッシュ。テリーは「ここはタフだから、アラクンに今から行きたい。」と何度もぼやき始めた。ここ数日のケアンズの気温は17℃〜25℃で、朝夕は冷え込んでいる。今日は冷たい雨も降って、魚の活性は下がる一方だ。
 残り時間は2時間程度。さてどうするか・・・上流へ一気に上がりディープエリアのジギングでターポンを狙うことにした。場所は川が大きくカーブするところ。大して川幅は広くなく、こんな所に深い場所があるのかと疑問に思うのだが、魚探でチェックすると水深は11m〜12mもある。使うルアーは、銀色に輝く鉄板系の小さなバイブレーションかゴムルアー。私は生態系に悪影響を及ぼす可能性があるようなゴムルアーは使わない主義なので、迷わずに鉄板バイブを竿先にぶら下げる。ターポンは群れている小さなベイトを食うので、銀色をした小さなルアーに良く反応する。冬場にバス釣りで使うリトルマックスのようなタイプがお勧めだ。似たようなルアーが各社から発売されているので、価格の安い物でも良いから何個か持参すると良いだろう。
 午後4時、本日最後のポイントになるであろうクリークに到着した。期待していたクリークの入り口付近で、サメがウロウロしているのを目撃してガッカリ・・・。河口から随分離れているのだが、ココのサメは淡水でも生きていられる。サメがいると魚が怯えて出てこないので釣りにくくなるだけではなく、針掛かりした魚が横取りされる場合もあるので良い事は何もない。サメから離れて、岸際のオーバーハングや水中に沈む倒木周辺をシャッドラップ8で探り始めた。少しして、倒木周りで待望のヒット。しかも、猛烈なパワーでラインが引きずり出されたので、すぐさま80cmUPのバラマンディの姿が頭に浮かんだ。
 80cm前後のブルシャークを釣り上げ、即座にリリース。怪我もなく、ルアーも壊れなかったのでホッと一息つく。レモンスカッシュを飲んで水分補給をしながら、ラインの傷みやフックが伸びていないかしっかりと確認してキャストを再開。直ぐにボートの周囲をゆっくりと回っている数匹のサメの存在に気が付いた。こうなってしまうと、まともに釣りが出来ないので、その場から離脱。ボートをクリークの中へと進めた。キャストを始めると、今度はクロコダイルが音もなく、波も立てずにすぅ〜と近寄ってきた。エサを貰えると思っているのか、私達をエサだと思っているのかは定かではないが、サメと一緒で、ワニがいると魚は出てこない。ボートに寄ってくるのは、本命魚ではなく招かれざるお客さんばかりだ。
 デントリーリバーでは、自然観察のツアーボートがありクロコダイルウォッチングをしているが、テリーが語るとおり、野生のワニに絶対餌付けなんてしてはいけないのである。釣り人は、釣った魚をキャッチする際や、手を洗っている時にバックリやられる可能性もあるので、十分注意が必要なのだ。ここは、人間に危害を加える生物が少ない日本とは違う事を忘れてはならない。(左写真はネイチャーツアー受付前にあるニセモノのワニ)
 ボートを更に進め、徐々に細くなるクリークを探査する。水温は20℃程。バラマンディ釣りにおいて、この水温は低過ぎるらしい。残り時間が30分を切ったが、本日は一度もバラマンディの顔を拝んでいない。本命魚はいずこに・・・このままで終わるには余りにも悲しいため、諦めずにピンポイントにギリギリ・タイトなキャストを繰り返す。
 ボートランプでテリーがボートを引き上げる作業は、いつ見てもムダがない。一人でやっているにも関わらず、とても短時間で作業を完了させてしまう。時々、順番待ちでOZ達の引き揚げ作業を見るのだが、手際の悪さとドタバタ感が溢れている。思わず手伝いをしたくなってしまうが、もし自分が一人でピックアップをやるとなればもっと酷い有様に違いない。テリーはケアンズのプロガイドとしてトップレベルにあり、ボートを牽引して釣り場まで運んでいる釣り人にとって、この一連の作業はとても参考になるだろう。YouTubeにアップした動画は必見なのである。
 一方、嫁さんは、1匹しか釣れなかったにも関わらず、ガイドや私がビックリするような巨大魚を釣り上げ大満足。過去の遠征や普段の釣りにおいても、大きな魚を釣るのは嫁さんの方。やはり彼女は、大物釣師であることが今回の遠征でも証明された。
 およそ2時間掛けてケアンズのテリー宅に到着した。道中は睡魔に襲われ、狭くてクッションが悪い後部座席にも関わらず爆睡。早朝、ケアンズに到着し、丸一日釣りをしていたのだからと言い訳を言いつつ、体力の低下を改めて痛感する。夕食はマリアさん御自慢のパスタ。私のお気に入りのガーリックトーストを添えてもらい、氷を浮かべた赤ワインを楽しむ。一緒に食事をしたライアン君と、カトコトの英語で会話をする。| 
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 TOSHI  | 
 
 ASAKO  | 
 
TERRY  | 
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クイーンフィッシュ  | 
 
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GT  | 
 
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マングローブジャック  | 
 
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サメ  | 
 
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