
昨夜、テリーから聞いたバラマンディ天国 アラクンの様子を書き留めておく。アボリジニの居留地で、一般人が入れないアラクン。ウエイパから船で160km以上、海岸線を南下する方法や、ケアンズから81号線を延々と陸路で北上する方法があるが、現実的にはケアンズ空港から国内線でアラクンまで飛ぶのが圧倒的に楽で早いだろう。アラクンには観光客向けの宿泊施設はなく、唯一宿泊出来るのは洋上に浮かぶ船の中。ツアー中、病気や大怪我をした時には、飛行機でケアンズへ飛ぶことになるような不便な場所だ。
かつて私が日本人初の釣り客としてアラクンを訪れ、何日間も釣りをしながら寝泊りした母船ピクーは廃船となり、新造船に変わっている。料金は一気に値上がり、1日1,000A$というハイプライス。基本は4名のツアーで6〜7日間貸切。日本からケアンズを経由してアラクンまでの往復飛行機代が加わるため、これまで以上に時間とお金がある人向けの夢の遠征ツアーとなってしまった。現在、テリーがボートキャプテンを担っているため、彼を通じれば若干価格はお安くなるのだろうが、豪州人を含め庶民が気軽に行ける場所ではないことは確かであった。
午前4時過ぎに起床。まだ暗い内から鳥が鳴くので目が覚めてしまった。さすがにこの時間からガタガタ音を立てる訳にはいかないので、テレビを横目で見ながら静かに釣行の準備をする。昨夜は夜中にシエナが泣き叫んでいたり、体が冷えてトイレに行ったりして熟睡した感じはないのだが、睡眠時間は確保出来ているだろう。眠りが浅いのはやはり年齢のせいか・・・。因みにテレビではバットマンやサンダーバードをやっているのだが、「子供向けなのに、こんなに早い時間から?」と不思議に思ってしまう。
いつもどおりにシリアルの朝食を食べ、テリーと今日の行き先を検討する。夜中に強い雨がまとまって降り、デントリーリバーやジョンソンリバーのコンディションは悪い様子。なからば、昔懐かしのバレッツラグーンかタリーリバーに行こうという話にまとまった。よろしくないのは釣り場の状況だけでなく、テリーの健康状態。時折、咳き込んだりして、吸入器を使って薬を服用してる。まだ62歳だが、なんだか随分と歳を重ねてしまった感じがする・・・なんて他人の事をとやかく言っているが、自分も同じだけ歳が増えており、すっかりオッサンになってしまったのである。
午前6時20分、出発。周囲は霧に包まれている。ケアンズ市街から南下するに従い、霧は更に濃くなりヘッドライトの点灯が必要となった。ケアンズでは4月〜5月の秋に霧が出るが、この時期の霧は珍しいとのこと。午前7時半、競馬で有名なイニスフェイルに到着。ガソリンスタンドに立ち寄って燃料を補給する。周辺のバナナ園ではセスナ機が何度も行ったり来たりして薬剤散布をしている。この薬剤散布は、晴れていれば影響は少ないが、雨が降ると農薬が河川に流れ込むので魚達が一気に沈黙してしまう。テリーは「セスナ機が毒を撒いている」と嘆く。
午前8時、ケアンズから凡そ180km程走ってタリーの小さな街に到着。サトウキビ工場がフル稼働しておりエントツから白煙を吐いている。以前はサトウキビから砂糖を作るだけだったが、今では、サトウキビの搾りかすを利用して発電もしているようで、再生可能エネルギー事業にも取り組んでいる。バビンダの工場は閉鎖されてしまったが、広大なサトウキビ畑は残っているので工場の統廃合がされているのだろう。
砂浜には轍が何本か残っていたが、明らかに車がスタックした形跡もある。水位が下がっているため、水辺までの距離が離れており、スタックする可能性が大きい。特に、ボートを下ろす時よりも引き上げる時が危険。あっと言う間にタイヤが半分砂地に潜り、脱出困難となるだろう。周囲を見渡し、水辺まで行くルートを検討したが、ここでボートを下ろすのは危険と判断した。
車を走らせ十分整備されていない小さなボートランプに到着。ここは、ドロドロで滑りやすい上に、サンドフライがウヨウヨいる。目の前にチラチラと小さな虫が飛んでいたら、それはもうサンドフライの攻撃を受けている真っ最中。長袖、長ズボンに手袋、靴を履いて、ディートがたっぷり入った虫除けスプレーを使っていても刺されてしまう。しかも、刺された瞬間は、全く何も感じないのでとても厄介なヤツだ。
河口の先、前方に見えるのは、デカバラが住んでいるヒンチンブルック島だ。ケアンズから比較的行きやすくてデカバラが釣れるビッグアイランド。かつて3回釣行したが、やり切った感が味わえていないので、いつかまたチャレンジしたいと思っている。島への玄関口、ケアンズから200km弱の所に位置する小さな街カードウェルも、リゾート地として開発・分譲され随分様変わりしているハズだ。
ラン科植物が寄生しているのか、植物そのものなのか判らないが、奇妙なスタイルをした樹木が岸際に群生している。オーバーハングしている場所では、上から落ちてくる虫や果実を食べるため魚が定位しているので、水際だけでなく頭上も確認しながら岸際をきっちりと狙ってゆく。しかし、全く魚の姿を確認できないため、上流に向ってボートを走らせる。暫く走ってボートを下ろそうかと検討した砂浜を通過。ここから更に上流へと進み、水中に倒木が沈んでいるエリアに到着した。
ルアーをシャッドラップSR7に交換し、倒木周りを探っているとターポンが相次いでヒット。30cmクラスを立て続けにキャッチした。ターポンは生臭いだけでなく、デッキに上げるとウンコをブリブリと垂れ流しながら跳ね回るので要注意。釣ったら速やかにリリースする方が良いだろう。
ボート走行中、テリーが愛用のペンチをロストするハプニングがあったりする中、いつの間にか淡水域に入った。水温は1℃下がって20℃に。流れの強いシャローエリアで川底に沈む倒木周りを攻めていると、20cm程のスーティーグランターが釣れ出した。ヒットルアーはシャッドラップSR5。バックシートでテリーがテンポ良く釣るのでカラーをチェックすると赤色クロータッドだった。私の竿先にぶら下がっているのは、シルバー系の代表色シャッドカラー。全く反応しないので悔しい思いをしていると、ガツンと来た。テリーが釣っていたサイズとは明らかに違う引きにドキドキしながらファイトを楽しむ。やっぱりシャッドラップは良い仕事をする。実績に裏付けられたルアーは、タフな時ほどその威力を発揮するのである。
「魚の活性が低いのは、低水温と農薬の影響だ」とテリーは言う。厳しい状況の中でも釣れる魚はおり、一か所に固まってる感じ。プラス思考で考えれば、魚が集まっている場所を見つけられれば、入れ食いが楽しめるハズだ。魚が集まっている所・・・ハニーポットを見つけられるかは、ガイドの腕と経験が物を言う。私は彼の案内を信じて、諦めずに淡々とキャストを続けるのみだ。
午前11時に木陰でティータイム。水温は20℃のままだが、テリーは午後になれば水温が上がり、魚の活性が高まると予想している。彼は甘い菓子パンを頬張りながら、私の持参したルアーボックスを覗き込み使えそうなルアーを物色しているが、結局、私のためにチョイスしてくれたルアーは、シャッドラップだった(笑)。
彼のルアーを見ると、普段使わない黄色いHS(ホットスチール)。「珍しいカラーを使ってるねー」などと言っている最中に、またしても彼のルアーにヒット。今度は大本命のバラマンディだった。サイズは42cmと小振りだったが、バラマンディは大きくても小さくてもバラマンディなのである。暫くして再び彼がバラマンディをヒットさせた。小さいながらも元気良くファイトしている。ヒットルアーはSR8の金黒カラー。サイズは先に釣ったのと全く同じ42cm。きっと兄弟に違いない。
バラマンディ2匹が立て続けに上がったので、鼻息荒くシャッドラップSR5を投げまくる。私が使うカラーは銀色のシャッドカラーで、多分、店頭に並んでから30年以上も経っている相当古いフィンランド製のヤツ。オーバーハング下を攻めていると、ガツンときたが、バラマンディではないことは直ぐに判った。私のお相手は20cmのスーティーグランター。太軸フックを装着してサスペンド状態になっていたルアーを、テリーのアドバイスでリアフックを#10から#12に小さくしてフローティングに変えたら釣れ出した感じだ。
30分程休憩をした後、キャストを再開する。目の前はスーティーグランターが集まっているポイントなので、直ぐに反応があった。開始早々、テリーがバラした後、私が2匹を連続キャッチ。続いて、テリーがスーティーグランターとジャングルパーチを釣り上げている間に、私がターポンをキャッチした。上流に少しずつボートを進めながらキャストを重ねる。テリーが小さなスーティーグランターを2匹、ターポン(35cm)を1匹追加した。怒涛の入れ食いを楽しめたこのエリアの水温は22℃。やはり午後になって水温が上昇し、魚達の活性が上がって来た様子。
ここまで上がって来る時、魚がいた場所をチェックしており、下る時は釣れた場所を丁寧に探る。午後3時、テリーが40cmあるスーティーグランターをシャッドラップSR5でキャッチ。少しして私のSR5にもヒット。魚はターポンだったが、引き寄せてくる途中でフックオフ。ターポンは群れているので、すかさずキャストをするとガツンとヒット。狙い通りにヒットはしたが、相手は明らかにターポンではなかった。力強いファイトに胸が踊る。ボート際に浮き上がった魚はバラマンディ(42cm)だった。
この1匹は、小躍りするほど嬉しかった。今回の遠征では、バラマンディを釣り上げるために、5日間も費やしてしまった。トッププロガイドを雇っても、この有様なのだがバラマンディ釣りは本当に難しいのである。忘れていたが、アボリジニィ達は"神の魚"と崇めている魚であり、簡単に釣ってはいけないのである。サイズが小さいので、写真には少しでも大きく写るようにと、両腕を一杯に伸ばしてカメラの前でポーズをとった。
ターポンをリリースして間もなく、バラマンディがヒット。ルアーを吸い込んで反転するシーンが偏光サングラスを通して丸見えだったのだが痛恨のフッキングミス。周囲には他の個体もいるハズなので、2人でルアーを投げまくると、私の竿が激しく曲がった。先にバラした魚が大きかったため、ルアーをSR5からSR8にサイズアップしたのが功を奏したのかもしれない。絶対に逃したくなかったので、慎重に引き寄せテリーにハンドランディングしてもらう。サイズは57cm。やっと釣った魚が、背っぱり型のバラマンディっぽい体つきになった。
"バラマンディはターポンに付いている"・・・これは過去の釣行から私が得た格言。ターポンがいる所では、バラマンディが釣れる事が多いのだ。実際のところは、ターポンは群れで大きく移動する魚なので、ストラクチャーに潜んでいるバラマンディが群れが近付いた時に活性が上がるのだろう。バラマンディを逃したポイントに定位し、暫くキャストを重ねたがターポンは消えうせ、バラマンディの反応もなくなってしまった。
もっと釣りを楽しみたかったが、午後4時15分でタイムアウト。タリーリバーは全体的に水深が浅く、瀬があったり、アチコチに倒木が沈んでいるため、暗くなってからのボート移動はとても危険。水位が下がるとなおさら危険度が増すため、早めにボートランプまで戻る必要がある。私は船首に移動して、ボート姿勢を出来るだけ水平に近づけると共に、前方を確認しながらテリーが水中に沈む障害物を見逃さないようチェックしてゆく。
午後5時半、出発。このボートランプからタリーの街までは19kmの道のり。テリー宅まではおよそ2時間掛かる。時折、咳き込むテリーの体調を気にしながらの復路となった。ラジオからは、9日に豪州全土で実施されたセンサスのトラブルについての話題で持ちきり。やはり、サーバーがダウンして集計トラブルが発生している原因は、ハッカーによる攻撃らしい。
食後は、お土産を買いに近所の大型スーパー コールスに行く。ナイトマーケットや空港の免税店で買うよりも、安く食べ物や日常品が買えるので、お土産を買い揃えるにはとてもありがたい。お店の営業はは午後9時まで。足早に事前にリストアップしておいたチョコレート類やビスケット、そしてお気に入りのフィッシャーマンズフレンズを大量に買い込んだ。|
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TOSHI |
TERRY |
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GT |
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ターポン |
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スーティーグランター |
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ジャングルパーチ |
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バラマンディ |
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