
 午前5時15分に起床。目覚まし時計を使わなくとも、丁度良い時間に起きられるから我ながら不思議だ。緑溢れるお庭を眺めながら、朝食はいつものシリアルとトースト、紅茶を飲んでデザートにはポウポウを食べる。ケアンズ3日目ともなれば、こちらの気候に体も馴染み、ゆったりとした気分で早朝のひと時を過ごす。本日の行き先は、「魚種が豊富でボウズなし」のジョンソンリバー。海水域から淡水域まで楽しめ、魚種も豊富。ジャングルパーチなどの在来魚を釣ることが出来る河川だ。
 ケアンズでは昨夜、10mmの雨が降ったが、これから向うイニスフェイルでは42mmの降雨があったらしい。淡水域でのトップウォーターゲームを楽しみにしているのだが、果たしてコンディションはいかがだろうか。「泥濁りで釣りにならない」なんて真っ平ごめんだ。午前6時半にテリー宅を出発し、南に向ってハンドルを切る。途中、ガソリンスタンドに立ち寄り、車とボートのタンクを満タンにした。ケアンズから国道を南下する時のランドマークとなっているのが、富士山の様な形をした通称ピラミッドマウンテン。この麓に住んでいるのが、2018年3月の豪州遠征でお世話になったウィル・プリチャードだ。
 日本のメディア情報を通じて知ってはいたが、テリーによると、現在、シドニー近郊ではアチコチで山火事が起きているらしい。今年は雨が少なく、異常高温が続きとても乾燥している事が一因。ユーカリの木はオイル成分を蓄えているため、乾燥するととても燃えやすく自然発火もあると聞く。山火事のために人や動物が命を落とし、希少なコアラも焼け死んでるとの事。地球温暖化が進むと、極端な気象になりやすく自然災害が起きやすいと聞いているが、日本と同様にオーストラリアでも気象が少しずつ狂い始めている。
 カエルのオブジェクトがあるバナナ農園を通過しジョンソンリバーを渡ると、サトウキビ畑からバナナ畑が広がる光景に変わる。少ししてイニスフェイルの街に入ったが、今回はいつもと違う河口近くのボートランプにここから10分程掛けて行くらしい。長年、ジョンソンリバーで釣行しているが、河口近くのボートランプを利用するのは初めてではないだろうか。今日の満潮時刻は10:20頃。朝の内に、海水域をチェックした後、一気に上流へと上がり、下げ潮に合わせて釣り下る作戦なのだろう。
 ここでスピニングタックルのライントラブル3連発。テリーがリーダーシステムを組んでくれたのだが、キャストの際にリーダーの結束部がガイドに引っ掛かる様子。昨日はこれが原因で、まだ1匹も釣っていない新品ルアーをふっ飛ばしている。このままでは、同じ過ちを繰り返しそうなので、私が日頃やっている結束部が小さくなるノット方法に変えて対応した。なお、最近のロッドはガイド径が小さくなっているので、太いリーダーを使う釣りには不向き。一昔前のロッドを中古店で探して購入するか、ガイドを付け替える対応が必要だ。ケアンズの釣具店でロッドを現地調達する方法もあるので、豪州遠征を考えている人は御一考を。
 桟橋周辺や台船の下は不発だったので、クリークの入り口でキャストをする。ここはカニポットがアチコチに設置されていて、とても釣りにくい。カニポットは、大きく変化する潮位に対応するため底に沈めた網カゴと白くて丸いフロートを結ぶロープが長くとってあり、うっかりするとロープを釣ってしまう。
 エアラコブラに反応がなく、アイルマグネットミノー105Fに交換。複雑に絡まったようなマングローブの根際にバンバンと撃ちこんでゆく。直ぐにバックシートで竿を振っていたテリーがゴールドボーマー(ロングA)でGT(30cm)をキャッチ。続いて私のルアーにもヒット。しかし、フッキングミス。GTの群れがクリーク入り口付近を回遊しているようで、岸際でベイトが弾け飛ぶようなボイルが起きている。ボイルがあった所にアイルミノー105Fを投げ、ジャークをするとガツッと狙い通りにヒット。しかし、GTではなく、赤黒いマングローブジャックだった。
 私には何処もかしこもポイントに見えてしまうのだが、実際は魚がいる場所がピンポイントで限られている。テリーは、目に見えるオーバーハングや倒木だけでなく、小さな流れ出しなどを見つけて、ここぞというベストポジションにボートをつけるのだが、今日は岸際を流しながらボートを進める時間が長い感じがする。水面の様子でベイトの群れを発見したり、シラサギなどの鳥が岸際にいれば確実にベイトがいるハズなのだがその姿も全くない。テリーはしきりに「イワシがいない、イワシがいない」と言っている。イワシの行き先は・・・きっと、昨日から始まった50%OFFのボクシングセールに違いない(笑)
 いかにも釣れそうな感じがするクリークの奥に入ってルアーを投げまくったが、ここでも不発に終わった。ここは釣れるだろうと期待していたテリーは、余りの魚っ気のなさに両手を上げてギブアップ。風通しが悪いサンドフライがウヨウヨいそうなクリークから脱出して、潮通しの良いコーナーに移動。GTがアイルマグネットミノー105Fを引っ手繰るように襲い掛かるバイトシーンが2回もあったがフッキングミスした。
 午前10時、ノースジョンソンリバーに向けてボートを走らせた。これからは淡水域でのケーム展開になる。国道の橋をくぐり、鉄道橋をくぐった頃には、空模様が怪しくなってきた。つい先程までは日差しが強かったのだが、なんだか雨が降り出しそうな気配。以前、この辺りはウィードやリリーパッドが沢山生え、トップウォーターゲームが楽しめた場所。しかし、今では水生植物がすっかり消滅してしまった。テリーが言うには、流域にバナナ園が増え、降雨で除草剤などの農薬が赤土と共に河川に流れ込んだためらしい。
 30分程、上流に上がり木陰でティータイム。レーズンパンにたっぷりとイチゴジャムを塗ってパクつく。そして暫し、お互いが持参してきたルアーボックスを見せ合いながら、淡水域でのゲームに備えてルアーをチョイスする。スーティーグランターやジャングルパーチに実績のあるルアーは、永遠の定番であるシャッドラップSR5、SR7、SR8。そしてポッパー各種と生産終了となって久しいバブルクランク。準備が整ったので、少しずつ上流へとボートを進めながらキャストを開始。私のエアラコブラに何度も激しくアタックがあるのだが、フックングしない。やっとの思いでフッキング成功。エアラコブラを勇猛果敢に追って来たのは25cmのジャングルパーチだった。
 ルアーをレクストのポッパー ストークに交換する。浜名湖や三河湾のポッパーゲームで鍛え上げられてきたルアーなので、豪州でも実績を上げられるハズ。そう思って今回ボックスの中に忍ばせてきた。牧場前のポイントで牛達の視線を強く感じながらキャストをする。開始早々に、飛び出したのが鉄砲魚(20cm)。この魚を釣ると、妙にテンションが上がってしまうのは私だけではないだろう。水族館で見る魚が、釣れるのはとても楽しいのだ。
 ストークには、スーティーグランター(25cm)もガップリと食ってきた。このルアーは、魚へのアピールがバツグン。エアラコブラよりもフッキング性能が高いような印象を受けて気に入った。残念なのは、ちょっとお高い価格。ポッパーなので根掛かりでロストする確率はミノー類に比べ明らかに低いが、ラインブレイクして魚に持って行かれた時のダメージは大きい。一方、バックシートでは、テリーがボロボロになるまで使い込んだTDポッパーを使いスーティーグランターをキャッチ。TDポッパーはとても良く釣れるルアーで、彼やガイド仲間が長年愛用しているのも良く分かる。
 スピニングタックルにはバブルクランク、ベイトタックルにはシャッドラップSR7をぶら下げ、ボートを下流へと流しながら岸際を撃つ。午後0時半にランチタイム。急に雲が厚くなり、強い風が吹くようになって来た。しかも海の方では雷が鳴っている。明らかに天候は下り坂。しかし、釣りをする私達にとっては、強い日差しが水中に差し込むド・ピーカンな天気よりも、曇っていて風で少し水面が波立つくらいの方が、ルアーで魚を騙しやすくなる。
 30分少々、休憩して釣りを再開。水中にある倒木をシャッドラップSR7で探ると、なにやら反応があった。何度も繰り返し、同じ場所にキャストしジャーク&ポーズを繰り返していると、いきなりルアーを引っ手繰られた。これまでにない強い引きにウッと声を詰まらせる。水中でギラリと銀色に光った魚はバラマンディ。倒木から引きずり出してキャッチした魚は44cm。手早く写真を撮って直ぐにリリースした。続いて出たのは、バラマンディではなくスーティーグランター(20cm)。
 河川のアウトベンド、岸がゴッソリと崩れ落ち赤い壁になっている所は、シャッドラップSR8で探る。SR7よりも少し深めに潜るので、水中に崩れ落ちた土砂の塊をイメージしながらチェックする。ここは、強い流れがダイレクトに当たり、渦が出来ていたりするので魚が溜まりやすい場所。いつもは、こんな場所で確実に何匹かキャッチするのだが、今回は不発に終わった。
 このまま連荘モード突入かと思いきや、突然、激しい大粒の雨が猛烈に降ってきた。カッパを着ている時間もないぐらいの突然の大雨。テリーはすかさずボートサイドから、巨大なパラソルを取り出しガバッと広げた。彼は、昨日の大雨に懲りて、珍しくパラソルを持って来ていたのだ。こんなパラソルを持って来たのは、2007年11月、テリーの友人ケビンも同行したカルンバ遠征の時、以来かもしれない。大きな傘の下で大人2人が濡れないように身をすくめながらカッパを着る。
 猛烈な雨は30分程降り続き、その後は一気に天候が回復。「あの雨は一体何だったのだろう・・・」と考えてしまうほどガラリと天気は一転した。ウィードが広がるエリアでは、トップウォーターゲームの独断場。ここでバブルクランクを使いガバガバと釣るつもりがポイントは沈黙。どんどんボートを流して、赤土壁の前で鉄砲魚とジャングルパーチを追加。
 確実にウィードの下にはバラマンディはいるのだが、3度目のチャンスは訪れずギブアップ。更にボートを下流へと進めソルトウォーターエリアに入った。ルアーをアイルマグネットミノー105Fに交換し、濁りが目立つ岸際を撃ってゆく。朝と同じエリアに入ったが、水位はかなり下がっており雰囲気が全く違っていた。朝の時にマングローブ林の奥に入り込んでいたベイト達が水位の低下と共に、外へ出てきているハズ。とてかく岸を丹念に探ってみた。
 この作戦変更が吉と出て、狙いを定めた水中に沈んでいる倒木周りでバラマンディ(54cm)を1匹キャッチ。バラマンディをリリースして間もなく、今度はGTが爆裂ヒット。直線的にギュンギュン引き、水中に沈んでいるブッシュの中に突っ込んでいったり、ボートの下に潜ったりとハラハラ・ドキドキの連続。サイズは50cmを下回ったが、バスロッドでこれくらいの魚を掛けると、とてもスリリングなのである。
 時計はとっくに午後5時を過ぎていたが、水深のあるクリークの中に入りターポンを狙ってみた。使うルアーはレンジバイブ55EX。水深は4m程度。軽くキャストをしてラインを張りながらルアーをボトムまで沈める。ラインと水面の接点をしっかりと見て、沈む途中で変化があったらビシッと竿を煽って合わせる釣法だ。ルアーを食った魚が反転してラインを引っ張ってくれればアタリは手元に伝わって分かりやすいのだが、中には食い上げる魚もいる。この場合は、水面に接しているラインのかすかな動きの変化を見ていないと全く感じないので要注意なのだ。このアタリが取れるかどうかで、きっと釣果は倍以上違うのだろう。
 キャストを繰り返していると、バックシートから「あっ」と言う声が聞こえた。テリーは、魚の活性が低い時に絶大な効果があるマスクバイブを使ってボトム付近を探っていたが、何かがヒットした直後にメインラインをスパッと切られたらしい。多分、犯人はバラクーダ。これでまた、テリーのバラクーダに対する憎しみレベルが数段アップしたに違いない。
 魚探にはボトム付近にベイト群が写っていたが、狙ったターポンは1匹も顔を見ることが出来なかった。小一時間前に魚を逃した桟橋に戻り、シャッドラップSR8で探ってみる。しかし、魚っ気が全くない。高度を下げた太陽からの強い日差しが、桟橋の奥まで照らして日陰がない。このような場所では、魚達は何処かに散ってしまうのだろう。多少粘ってはみたものの、コツリともアタリはなくギブアップ。今回の釣行は、天候が大きく変わる状況で数釣りは出来なかったがジョンソンリバーの代表的な在来魚を6種釣り上げ楽しめた。
 午後6時、ボートをピックアップしてケアンズに向けて国道を北上する。道路脇にある、「コーヒー無料サービス」の看板が目を惹いた。聞けば、国が勧めている新たな取り組みらしい。オーストラリアはロングドライブをする機会が多く、居眠り運転による事故が絶えないため、「休んでコーヒーを一杯飲んでいけ」という事故防止対策であるようだ。レーダーを使った速度違反の取締りもちょくちょくやっている。本当か冗談か分からなかったが、クリスマスシーズンの違反金は、通常時の2倍払いになるらしい。| 
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 TOSHI  | 
 
TERRY  | 
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GT  | 
 
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マングローブジャック  | 
 
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ジャングルパーチ  | 
 
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鉄砲魚  | 
 
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スーティーグランター  | 
 
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バラマンディ  | 
 
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