
 早朝5時15分に起床。いつものようにシリアルとトーストを食べて出発の準備に取り掛かったのだが、なんだかお腹がグルグルする。朝起きてからトイレに2回も行ってしまった。昨晩の夕食を腹一杯に食べ過ぎたのが原因か・・・お腹が痛いわけではないので薬は飲まずに様子をみた。今日はデントリーリバーまでのロングドライブなので、途中でトイレに行きたくなると辛い思いをするかもしれない。腹痛といえば、思い出すのが1999年3月の遠征。異国の地で体調を崩すのが、どんなに心細いか身に染みている。胃腸薬や風邪薬は毎回持参しているが、お薬や病院の御厄介にならないよう健康管理には十分気を付けなければならない。
 天気は晴れ。午前6時20分に出発。車を北に向ける。道中は、目に付くものについてアレコレとテリーに聞いてみる。スカイレール入り口の看板を通過すると直ぐに見える戦車、、、興味はあるのだが、まだ一度も訪れたことがないオーストラリア軍装甲砲兵博物館だ。ここは、第二次世界大戦で活躍した戦車や大砲などの展示をしており、規模は南半球最大級らしい。多くの人が忘れているのかも知れないが、日本は太平洋戦線でオーストラリアと戦争をしていたのである。
 今の時期は、鮮やかな色の花をアチコチで見ることが出来る。街路樹や公園、丘の方に見られる赤い花を咲かせる大きな木はフレイムツリー。そして、可愛らしい赤い実を付けるのがリリーピリーやウォーターチェリーと呼ばれる木。オーストラリアでは、リリーピリーの類が50種類以上もあるらしい。遠くからでも良く目立つ黄色い花を咲かせるのがカシア。カシアには、ピンク色の花を咲かせるものもあるようだ。熱帯性樹木は種類が豊富で花も綺麗で見ていて飽きない。
 午前8時少し前にデントリーリバーのボートランプに到着した。1時間半のドライブだったが、途中でお腹が痛くなったり、トイレで困ることもなくすんなり来られた。駐車スペースには既にボートを降ろし終えた四輪駆動車がズラリと並んでいた。トレーラーを牽引している車が、ざっと数えて15台。周囲に人影は既になく、夫々のポイントで竿を振っていることだろう。タックルの準備を整え、出船したのが8時15分。川が逆流しているのがはっきり分かるほどの強い流れで、水位が急上昇している。スタートはターポン狙い。ボートランプを出て少し上流へと移動した。何もストラクチャーがない川の真ん中で、2人でTDポッパーを使ってポッピングする。すると直ぐに反応があった。
 最初にターポンを釣ったのはテリー。サイズは40cm位。この1匹が切っ掛けとなり、入れ食いモードに突入した。私が3匹連続で40〜50cmを釣り上げている間、テリーは魚の群れが移動する方向を目視しながらと絶妙な位置にボートをステイさせてくれる。キャストする度に、激しいバイトがあるのだがフッキングが難しい。ターポンはフックが口に掛かり難く、フッキング出来たとしてもファイト中に何度もジャンプをしてルアーを吹き飛ばしたりする。
 テリーが掛けたターポンは勢い余ってボートの中に飛び込み、臭いウンコを撒き散らしながら暴れまくった。口にルアーがぶら下がったまま暴れるのでとても危険。足や手にフックが刺さらないよう十分注意して対処する。私はルアーをアイマのエアラコブラに変えて2匹追加した。テリーはボロボロになったTDポッパーで立て続けに2匹を追加。毎回、各社のポッパーをアレコレ持参して試しているが、釣果はTDポッパーが最も安定しているように思う。
 上流へと進むと、ネイチャーツアーのボートが岸際をゆっくり進んでいた。一艇なら大して問題ないが、さにあらず。今日はホリディなので、世界遺産であるデントリーの熱帯雨林を訪れるツアー客が沢山いて船も複数出ている様子。大きな船が岸際ギリギリまで近づいたり、小さなクリークの中にまで入るので水はドロドロに濁る。魚は怯えて姿を消すし、引き波でフィッシングボートは揺れるわでイイ事ないのである。
 更にボートを上流へと進めると、対岸に見覚えのあるボートがあった。近づくと、案の定、昔お世話になった旅行代理店トレードウィンズ(alltacklesportsfishing)の青柳さん。丁度、日本人のお客さんをガイドしているところだった。再会を喜び御挨拶をしながら、釣果情報を交換する。こちらはターポンを釣っただけだが、青柳さんのお客さんは、今では伝説のバラマンディ攻略ルアーとなりつつあるシーウォッチャーを使ってバラマンディをキャッチしたらしい(その時の様子は、青柳さんのYouTube(Vol.223)をチェック)。
 上流へとボートを進め、岬周りでターポンを狙う。流れのヨレが出来るポイントにはベイトが集まるため、これを狙ってターポンやGTがスクールしているハズ。暫らくTDポッパーを投げまくったが、2バイトあっただけでノーフィッシュ。更にボートを進めてウィードエリアでバラマンディの様子をチェックした。使うルアーはロングA(15A)。カラーは普段はあまり使わない腹黒&オレンジ。ウィードに引っ掛けないように、水中に沈んでいるウィードのツラをジャーク&ポースで魚を誘う。
 水面には、白い花が沢山浮かんでいた。樹上から落ちた花が灯篭流しのように、次から次へと上流域から流れて来るくる様子はどこか幻想的。「下がり花」とも呼ばれている。偏光サングラス越しに、チョウチョウオのような形をしたスカッドがヒラヒラと泳いでいるのが見える。周囲に捕食魚がいれば、もっと緊張感ある泳ぎをしているハズだが、全く警戒している様子がない。まったりとしたこの時間帯は、魚の活性が落ちているようなので釣れる気がしない。午前10時半まで粘ってキャストを重ねたが、ワンチャンスもなかったのでギブアップ。船首をぐるりと回して下流へ釣り下る。
 午前11時前、存在感のある立派なフィグツリー(絞め殺しの木)の下で強い日差しを避けてティータイム。因みにフィグツリーとはイチジクの事だが、私が知っているイチジクの木とは全く異なる。この木は大きな樹木に取り付いて表面を多い尽くし、後に中の樹木を枯らしてしまうというオドロオドロしい木なのだ。
 川が大きく曲がった場所でターポンを狙ってみる。ここの水深は10m。ターポンには銀色に光る小型のメタルバイブが最も効くのだが、2人ともノーバイト。魚探でチェックしてみると、魚が全く写らない。何だかおかしいので、キャストをしながら周囲を見回すと、サメがウロウロしていた。ターポンがいなくなったのはコイツが原因かも。このサメは、淡水エリアでも活動できるやっかいなブルシャーク。凶暴で人も襲うので要注意なのだが、フィッシグボートの周囲をぐるぐると回り始めた。釣り人がリリースした魚を狙っているのだが、リリース後にボートから水面に手を伸ばしてバシャバシャ洗ったりすると、稀にガバッとやられるので要注意。
 サメがウロウロしているようなポイントで粘っていてもダメそうなので、更に下流へと下る。ボートランプ付近まで戻り、クリーク入り口でキャストを開始。使うルアーは伝説のバラマンディ攻略ルアーであるシーウォッチャー。セッパリ型のウッドルアー、重心移動機構なんて内蔵しているワケもないが、重量があるのでボート上からのピンポイント狙いでは案外使いやすい。フローティングとシンキングの2モデルあるが、ウッドのハンドメイドであるがゆえ、製品のバラ付きがある。明らかに浮力や浮き姿勢の違いがあるので、複数所持して魚のコンディションに合わせてアレコレ試すと良い結果を生む。
 一気にソルトウォーターエリアまで下る。使うルアーはGスプラッシュ80。オープンエリアで広範囲に魚を探す場合はこのルアーがお勧め。首振りはしないポッパーなので、直線的にスプラッシュをあげながらポッピングするだけでよい。クイーンフィッシュやGT狙いで実績があり、フルキャスト後にボートを走らせてカジキ釣りのトローリングのように引っ張っても使えるのである。
 頭上に実っていた野生のマンゴーを数個収穫。樹上完熟なのできっと美味しいに違いない。オープンエリアでは魚の反応がイマイチだったので、マングローブの根際狙いに切り替えた。バラマンディをはじめ、マングローブジャックやコッド類が反応することを期待して、シーウォッチャーを根際ギリギリのピンポイントへタイトに撃ち込む。東南アジアの釣り堀で釣りをするのと違い、オーストラリアのネイティブな魚達を釣るには精度の高いキャスティングが要求される。今日はキャストがイイ所にビシビシ決まるのでとても気持ちが良いのだが、魚が全く反応しない。
 海からの風が更に強まり、水面が波立ってきた。水中を覗き込むと、クラゲが沢山漂っており嫌〜な感じ。クラゲの中には毒を持つものも多く、うっかりルアーに絡みついた毒針を持つ触手に触ってしまったりすると酷い目にあってしまう。強風とクラゲから逃れるため、島の反対側に入ってキャストを重ねたが、このエリアも不発だった。
 ランチタイムは15分で終了。食後のデザートは持参したブドウとライチ。これに加えて、収穫したのて野生マンゴー。自然に育ったマンゴーは、栽培種とは少し違った味だったが美味しかった。食後はバラマンディを狙ってみることにした。横風が強く吹く中、使うルアーはシーウォッチャー。ボートを岸と平行に流しながら、マングローブの根際にルアーをピンポイントで撃ち込む。魚の反応が悪いので、力強くバラジャークをした後、ポーズの時間を長めに取り誘ってみる。
 竿が曲がったのはバックシートのテリー。私が既に撃ったポイントでバラマンディがヒットした。ヒットルアーは旧モデルのアイルマグネットF9。ヒンチンブルック島に行くなら、絶対に持って行きたいルアー。丈夫で長持ち、魚種を選ばず、扱いやすくて良く釣れる。バラマンディはサイズが小さかったので、ゴボウ抜き。写真を取って素早くリリースした。ファイトしている最中、水中に同じ位の魚が見えたので、姿を消した辺りのポイントへシーウォッチャーを撃ち込み、バラジャークをすると即座にヒット。30cmに満たないセイゴクラスのバラマンディをキャッチした。
 折角、若いバラマンディのハニーホールを見つけたのだが午後2時半でタイムアウト。今から急いで帰らないと、ショッピングが出来なくなってしまう。ケアンズのお店は、日本と違って閉店時間が早く、時間が来るとどんどんシャッター を下ろしてしまうのである。後ろ髪を引かれる思いで納竿した。急ぎでボートをピックアップしてケアンズに向けて爆走する。途中、猛烈な雨が局所的に降っている所に突っ込んでいった。そこは離れた場所からも雨のカーテンが掛かっていたので覚悟していたが、ワイパーのフルスピードでも前方確認が危うい位だった。しかし、雨雲が掛かっている場所は一瞬で抜け出し、その後はウソのように晴れ渡った。
 午後4時過ぎにテリー宅に到着。着替えもせずに、汚らしい格好のままお土産を買いにWoolworthとColesが通路を挟んで隣り合って入っているショッピングモールへ行く。買い物リストのトップにあるのが、嫁さんからのオーダーであるオーガニック・ホホバオイル。私はこれを買わなければ家に帰れないのである。事前にライアン君がWebで調べてくれた価格は41ドル/100ml/1本。土産物屋や化粧品などを扱う薬局に置いてありそうなので、それっぽいお店に入って店員さんに聞く。直ぐに陳列棚の所まで案内してくれた。安物は何か混ざり物が入ってそうだし、色が薄いものは精製してあるので、濃い黄金色の2本購入。価格は35ドル/1本。Web価格よりは安かったが、リールのメンテナンスオイルと比べると随分お高い感じがする(笑)。
 続いて、Colesに入り、定番のチョコレートやフィッシャーマンズ・フレンド、ジンジャージャムを買い物カゴに入れる。スナック菓子で嫁さんからオーダーがあったのはグレインウェーブス。前回、彼女が一人で西オーストラリアを旅行した際に食べて、とても美味しかったらしい。テリーのお勧めスナック菓子であるチーズ味のツイスティーズとチーゼルズもまとめ買い。いずれもオーストラリア版の"カール"っぽい。小袋パッケージなので、お土産として配るのに便利なのだ。因みにオーストラリアの代表的なお菓子はこちらのサイトで分かりやすく紹介されている。
 ショッピングセンターの閉店直前まで買い物をする。お店によっては閉店時間前なのにシャッターを降ろし始めたりして落ち着かない。テリーの協力もあって、予定していた物は買えたのでほっと一息つく。結構な分量になったため、スーツケース内に収まるかちょっと怪しくなってきた。大きな袋を持ってヨロヨロと帰宅すると、玄関脇の白い壁に巨大な緑色のアマガエルがいた。その大きさは、爬虫類や両生類に対して苦手意識がない私ですら一瞬たじろぐ位に大きかった。手を近づけても逃げようとせず、人を全く恐れていないのが凄い。こちらの人達は、家にヤモリがいようが大きなカエルがいようが、全く騒がずお構いなしのところが大らかでイイ感じだ。
 夕食は氷を浮かべた赤ワインを飲みながら、山盛りのパスタを頂く。腹ペコなのでつい食べ過ぎてしまい後で後悔するのだが、日本にいる時より明らかに胃袋は大きくなっている感じ。食後は、テリーからオーダーがあったルアーを渡す。バブルクランクは、とっくの昔に製造中止になっているので過去に買い集めてストックしてある物を提供。このルアーは、リアのヒートンが簡単に抜け落ちてしまうので、確実に固定できる他社の交換用ヒートンをプレゼント。そして中古店をアチコチ回ってかき集めたシャッドラップ各サイズ。ラパラ社の永遠の定番商品ともいえるシャッドラップだが、ケアンズでは店頭から姿を消してしまったようだ。テリーはこれらのルアーを見てニコニコ顔をしながら、マリアさんに見つからないようにササッと片付ける。こんな様子は、お国が違っても釣り師の行動パターンは一緒だったりする。| 
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 TOSHI  | 
 
TERRY  | 
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ターポン  | 
 
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バラマンディ  | 
 
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