
 午前6時に起床。定番のミルクとハチミツをたっぷり注いだシリアルを食べながら、夜中に火事になった夢を見た話をする。寝ている間に風向きが変わり、少し開けていた窓の隙間から野火の煙が入ったらしい。夢ではなく、本当に煙かったのだ。アボリジニが畑を作るために野原に火をつけているようだが、水を使って消すようなことはしないので自然鎮火を待つばかり。雨は降らないので、いつ消えるのか疑問に思う。前回の遠征では寝ている最中にエアコンが効き過ぎて、寒さに震えながらストーブを探し回る夢を見た。この遠征では寝ている最中も貴重な体験をさせてくれるのである。
 タックル一式をボートに積み込み、日焼け止めと虫除け薬をたっぷり塗る。念のためトイレに入って便器に座ってみたものの、出るべきものが出そうもない。日本にいる時は便秘などせず、極めて規則正しい生活をしているので快食・快眠・快便なのだが、環境が変わると体のリズムが狂うようだ。因みにピクーのトイレは、水やクリーナーを使ってはいけないコンポスト型のトイレ。2年前はほぼ無臭だったので、その性能に驚いたが、今回は臭いが少しキツクなっていた。女性がいると尿が沢山入るので、処理能力が下がるのだろう。長居は無用なのでズボンをズリ上げて、そそくさとトイレから出る。ボートにはトイレットペーパーを置いてあるので、いざとなったら上陸して用を足せば良いのだ。
 午前7時に出船し15分程、ボートを走らせる。今回の遠征でメインに使っているのがパームス・エッジEGC606、これにアンタレスDC7+夢屋パワーハンドルを乗せたもの。サブとして往年のダイコー・アームズスティックASC-66MにアンタレスARの組み合わせ。ラインはいずれもファイヤーライン25LB、リーダーはフロロカーボンのニトロンDFC25LBをダブルで使用。そしてクイーンフィッシュやトレバリーのゲーム用に、テリーから借りたスピニングロッドのGルーミス・マホガニーCB756に、持参してきたステラ3000を組み込んだタックルを準備してある。一方、シゲさんはフェンウィック・アイアンフォーク1H58CMH・JにスコーピオンDC7、メガバスF5-510Xにスピードマスター200、そしてメガバスのスピニングロッドにエクスセンスCL4 4000Sを載せている。
 前日はパームス・エッジEGC606で魚をバラしまくったので、アームズスティックASC-66Mを握り締めて船首に立つ。シゲさんがメインに使っていたフェンウィックは見た目よりも柔らかく、食い込みが良いらしい。アームズスティックは購入してから15年以上経っているハズ。中古釣具店を探せば2千円前後で売ってるかも。誰も見向きもしないかも知れないが、この時代の竿はとても丈夫に作られているだけでなく、ガイド径が大きいのでバラマンディ釣りにはお勧めなのだ。この竿はオカッパリ用として用意してある物。小さな船上で使うには少し長く、70cmUPの魚と対峙するには少し柔らかいのだが、気分を変えて試してみる。(これまで豪州遠征で使ってきたタックルの変遷はバラマンディ攻略タックルのコーナーを参照)
 マングローブ林の周辺でキャストを開始。竿を振り始めて5分後にはテリーがロングAでバラマンディ(45cm)をキャッチ。私の操るハイジャッカーにも小バラが何度もアタックするのだが、バックリと食ってこない。ルアーを交換すべきか思案していたところで、テリーが再び同サイズをキャッチした。明らかに昨日とは釣れる魚のサイズが違う。潮位が高いため魚達がマングローブ林の奥に入り込んでいるようで、随分奥の方から大きな捕食音が聞こえたりする。
 今日はアーチャーリバーを遡り、フレッシュウォーター・バラマンディを狙う。川への入り口で、ハイジャッカーを使い40cmのバラクーダをキャッチ。このルアーはウッド製なので、歯の鋭いバラクーダなんかを釣ってしまうとボロボロになってしまうので、とても辛いところだ。下流域はバラクーダを釣ったっきり、全く魚っ気がないため、エンジン全開で上流に向う。随所に浅瀬があるので、巧みなハンドリングでこれらをかわし、メインチャンネルを探しながら大きく蛇行しながら更に進む。
 水色が透明感のあるブルーから、茶色ががった色に変わってきた。淡水域に入ったのだろう。所々で浅瀬が私達の進路を阻むため、テリーは船から降りてザバザバと歩きながら私達2人が乗ったままの船を引っ張る。膝の手術をしたばかりなのに、果たしてこんなハードジョブをして大丈夫なのか? 心配なので「自分達も降りようか?」と彼に尋ねたが、そのままで良いと言う。お言葉に甘えながら、東海道の難所でもあった大井川を渡る江戸時代お殿様気分を味わう。人工物が全くなく、ゴミも浮いていない自然溢れる河川をのんびり移動するのは、すこぶる気持ちが良い。
 テリーが狙っていたポイントに到着。この一体は3週間前に大きなバラマンディが沢山ストックされていたらしい。彼からタックルは硬いエッジEGC606に持ち変えるように指示が出る。使うルアーは、テリーが差し出したディープを攻めるためのド派手な色のクラシックバラ。水中に見えないロックバーや倒木があるらしい。キャスト後、グリグリグリッと巻いてルアーを深く潜らせ、長めのホーズをさせてルアーを漂わせながら浮かび上がらせる。この時にドカンとくるらしい。
 テリーがトイレットペーパーを持って茂みの中に消えている間、グリグリ&ポーズを繰り返したが不発。更に上流へ上がり、ディープエリアがあるコーナーにアンカリング。クラシックバラにGTのアタックがあったがフッキングには至らない。リーズシャッドやシャッドラップ9を試したが、たまにバラクーダやクイーンフィッシュがチェイスするだけで竿が曲がることはなかった。テリーから「満月の後は厳しい。」「夏になってバラは下流へ下ったかも。」と弱気な発言が聞こえるようになってきた。
 午前10時半前、私がバラクーダを釣ったっきり、魚に触ることがないまま2時間が経過。ホントに厳しい状況がヒシヒシと身に染みてきた頃、日陰と倒木が絡むポイントに入った。キャストを初めて直ぐ、グリグリ&ポーズさせていたシゲさんのリバーラットに会心のヒット。深いところでヒットさせたので、そのままファイトしているとストラクチャーに潜り込まれてしまう。テリーの掛け声と共にホンピングをして、懸命に魚を浮かび上がらせる。やっと上がってきたバラマンディは堂々の72cm。テリーはシャローエリアで座礁しそうなボートを引っ張ってまでして、この魚を私達に釣らせたかったのだろう。
 私も負けじとクラシックバラをグリグリやるが反応がない。リーズシャッドに交換し、水中に沈む倒木周りをトウィッチをしているとガツッとヒット。魚は大きくなさそうだったので一気に引き上げる。ルアーをバックリと咥えていたのは47cmのバラマンディだった。他にも魚はいるハズなので暫く時間を掛けて粘る。暫く経ってテリーがバザーミルヤード、キラルアーの6インチもある巨大なルアーバラベイトを使って45cmを追加。
 このサイズならバイブで数釣りが出来ないかと考え、TN60を取り出した。根掛かりを覚悟で岸際の木陰部分にキャスト。十分カウントダウンしてからリフト&フォールをして引き寄せてくる。すると狙いどおりに水中に沈んでいる倒木周りでヒット。アンタレスDC7のハイスピードギアの特性を活かして、一気に引き寄せようとしたがフックを伸ばされて魚の顔を拝めないままロスト。倒木周りで根掛からず使えるルアーはないかと、ボックスの中をのぞくとウィグルワートが目にとまった。ルアーをアレコレと変えたがる私に顔をしかめるテリーを横目で見ながら、キャストをしてグリグリッと巻いてくる。倒木に当てながら反応を伺っているとカツッとヒット。すかさずあわせると鉄砲魚(35cm)が水面を踊った。
 直ぐにラインシステムを組み直し、再びテリーからクラシックバラを借りてキャストをすると2連発バイト。このルアーにはド太いフック VMCの3Xが装着されているのだが、見事にフックを伸ばされた。やはり6Xの太さが必要か・・・。ストラクチャー絡みの釣りでは、ヒットさせることが出来ても魚を手にするのは本当に難しい。私よりも格段にキャッチ率が高いシゲさんですら、連続3匹掛けたが魚を釣り上げるまでには至らず悔しさを滲ませる。
 テリーが立て続けに魚を上げる中、私はクラシックバラで1匹バラした後、70cmをかろうじてキャッチ。そしてシゲさんは2匹連続70cmクラスを逃している。一体、このポイントには何匹のバラマンディが潜んでいるのだろうか。倒木の下に70cmクラスのバラマンディが頭を揃えて、鮨詰め状態で順番待ちで並んでいるとしか考えられない。私のルアーにバラマンディがタッチ。すかさず船尾からテリーがルアーを放り込む。するとドカンと出た。彼は楽々と60cmUPをキャッチ。「それは私の魚だぁ〜」と声を上げるが、テリーはニヤリと笑うだけ。彼は絶対、私とシゲさんが雇ったガイドであることを忘れている!! 私達とは明らかに別次元の釣りをするガイドのテリー。ゲストよりも魚を釣るガイドっていったい・・・。
 何の前触れもなく、突然アタリがパタリと止まった。当たり前と言えば当たり前のこと。いつまでも釣れ続けることはあり得ないので、ランチタイムにする。時計を見ると午後1時。このポイントで丸々1時間、良型のバラマンディ釣りに没頭した事になる。アンカーを静かに上げて木陰にボートを寄せ、スーさんが作ってくれたサンドウィッチを食べる。しかし・・・このサンドウィッチには、私の嫌いなチーズがたっぷり入っていた。事前に嫌いな事を伝えてあったにも関わらず、見事にしっかりと入っていたので軽いめまいがした。言葉の壁は厚いのである。
 バラマンディの反応が薄くなってきた時、シゲさんの竿が大きく曲がった。横で見守っていると、今まで掛けてきたバラマンディとは明らかに違うトルクのある強い引き。強引に魚を浮かばせようとしても上がってこない。走り回るのではなく、水底に力強く引き込むようなファイトに驚かされる。ついには水中に隠れている倒木に巻かれて、全く動かなくなってしまった。「これにてジエンドか・・・」と思いきや、テリーが水中の枝を折ったり、絡みついたラインをほどいていると魚が動き出した。このタイミングを逃さずシゲさんが魚をリフトアップする。水面に浮いてきた魚は、今まで見た事もない模様をしている怪魚。テリーがオーシャングリップを使って抱え上げた魚は大きなハタ。デッキに横たわったド太い魚は、クイーンズランドグルーパー。体長は80cmだった。テリーによると、母船ピクーの下に潜み、餌を投げると浮いてくるグレックはコイツと同じ種類。体長はやはり2メートルぐらいあるらしい。
 アボリジニが6人も乗った小型の船が、今にも壊れそうなエンジン音を唸らせ勢い良く上がってきた。明らかに定員オーバーのようにも見えるが、そんな事はお構いなし。多分、上流域で漁をしていたのだろう。軽く手を上げて挨拶をするが、スピードをほとんど落とさず通過するので気持ちは穏やかではない。折角、魚の活性が上がってきたところで、水を注された感じ。引き波が納まり、水面が再び穏やかになった時に、私のバラベイトにヒット。倒木に巻き疲れないよう十分注意しながら魚をコントロールして無事に67cmを釣り上げた。このサイズなら、私の腕なら何とか獲れるようだ。
 再びバラマンディが連発したストラクチャーに戻ってきた。テリーから「水面にルアーが浮いていないか良く見てくれ」と声が飛ぶ。私がロストした2個のルアーが浮いている可能性があるので、周囲に目を配る。バラマンディは口に引っ掛かったルアーをエラ洗いで吹き飛ばす特技を持っており、時としてロストしたルアーが釣り場にプカプカ浮かんでいる事がある。2個の内、せめて1個でも浮いていないかと注意深く見たが、それらしき物はなかった。
 午後5時近くになったので帰路につく。途中、座礁しないように注意しながらメインチャンネルを見定めてボートを走らせる。シャローエリアの高速蛇行航行というスリリングなクルーズを暫く楽しんでいると、水色が変わり海水域に入った。本日のラスト1時間は、クイーンフィッシュ狙いに費やす。魚がいれば何処かで必ずボイルするので、周囲をキョロキョロしながらアンタレスDC7のハイギアを活かしてハイスピードリトリーブを行い、水面で激しくアマゾンジャークを躍らせする。
 その後はミスカルナとジプシーペンを引きまくったが追加は出来ず、いつしか魚が消え去った。時計を見ると午後6時を回っている。ジェフとスーさんが私達の帰りを待ちながら食事の準備をしているに違いない。エンジン全開で突っ走り、母船ピクーに戻った。夕暮れ時は、蚊が一斉に動き出す。デッキにいると刺されるので、素早く片づけをして船内に入る。シャワーをサッと浴びて午後8時に夕食。今宵はバラマンディのフライとライスにインスタント味噌汁、食後には山盛りのアイスとケーキを食べて満腹状態。腹ごなしに後部デッキでフックを外したスラバーチャグを投げてナマズと遊んだ。| 
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TOSHI  | 
 
SHIGE  | 
 
TERRY  | 
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バラマンディ  | 
 
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バラクーダ  | 
 
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クイーンフィッシュ  | 
 
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鉄砲魚  | 
 
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ナマズ  | 
 
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クイーンズランドグルーパー  | 
 
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