テレビニュースを見ながら朝食を食べる。今朝は、ぶどうパンをカリカリに焼いてバターをたっぷり塗ったトーストと、ミルクとハチミツを注いだシリアル。トッピングは・・・トローリング用ルアー のCLASSIC BLUEWATER F18。朝からアホな事をやっているが、男3人が一つ屋根の下に生活しているので、いつも笑いは必要なのである。CLASSIC BLUEWATER F18は、全長20cmある豪州のルアー。日本では間違いなくビッグベイトなのだが、彼の地ではこの程度のルアーが極普通に使われている。初めて見る時はそのサイズの大きさに驚くのだが、見慣れてくると何ら違和感がなくなるから不思議だ。狙う魚は大きく、その餌となるベイトも大きいので使うルアーが大きくなるのは当然の話。キャスティングは困難なのでトローリングが主体。これにより、使うタックルは日本のルアーフィッシングのタックルとは全く違う方向に進化しているようだ。
テレビからは、ちょっと驚きのニースが流れていた。豪州大陸内陸部の砂漠地帯から砂が舞い上がり、大都市が集まっている東海岸に押し寄せているとの事。日本では、中国大陸から飛んでくる黄砂が春にあるがこれと似ている。しかし、違うのは黄色い砂ではなく、鉄分を含んだ赤い砂(レッド・ダスト)であることと、その押し寄せている砂の量。豪州東部では、冬の間は海から吹く東風なのだが、夏(春)になると内陸部から吹く。風向きの変化は季節の変わり目を伝える自然現象で赤い砂も多少は飛ぶのだが、今回の規模は過去70年で最悪・最大の砂嵐とのこと。東海岸は砂嵐に見舞われ、航空便にも影響が出ているだけではく、呼吸不全で病院へ運ばれる人も出ているらしい。もともと内陸部は乾燥した大地なのだが、ここ数年の旱ばつが影響し巨大な砂嵐が起きたようだ。自然現象というより、ここまでくると自然災害になってしまう。
豪州の自然災害と言えば、日本のメディアでも時々流れる山火事がある。乾燥した大地でも生息できるユーカリは、枝葉に揮発性のユーカリ油を沢山含んでおり、簡単に火がつくらしい。テリーに言わせると、ガスコンロに火を付けた時のように 、一瞬にしてボッ、ボッ、ボッと樹木の上部に火が付き燃え広がるとのこと。樹上が燃え広がってから火事である事に気が付くため、人々は逃げ遅れて多くの死者を出すのだそうだ。観光地で有名なブルーマウンテンズは、太陽光がユーカリの樹海から蒸発する油分が含まれる空気の層を通過して一帯が青く見える事で知られる。ここで大火事が度々発生しているのは同じ理由によるのだ。火の元は自然発火か観光客などのタバコの投げ捨てによるらしい。
7時半に出船。一気に下り河口付近のマングローブ林の根際へ向かう。シラサギが集まっている場所を見つけたので、船首を向けて静かに近づく。水位は低く、場所によっては確実に船底がタッチしてしまうようなエリアが広がっているため、スタックしないように注意を払いながら進む。スタートは、イエローマジック・プラス1から。開始早々から激しいバイトがあったが空振り。即座に同じ場所へルアーを入れるとドカンと出た。朝イチから狙いどおりに事が進むというのは本当に楽しい。
周囲をシードライブとGスプラッシュ80で探るが反応はない。続いて、昨夕見つけた数万羽のコウモリが巣くっている島周りへ移動する。マングローブの根がスパイク状に突き出しているエリアは干上がっていたため、付近の少し深い場所をTDポッパーで探った後、ベイスカッド128Fでチェックする。すると、かなり力強い明確なアタリが竿を持つ手に伝わった。一気に巻きアワセをしてフッキング。バラマンディなら直ぐに水面を割って出るのだが、底へグイグイ引き込むファイト。魚種が判らなかったので慎重に対応していると、いかつい顔をしたマゴチ(50cm)が浮いてきた。2匹目を狙ったが反応はなかったが、周囲には25〜30cmのクロダイが群れていた。ここで、すかさずルアーを交換。私はクレイジークレイドル、テリーがマンズのストレッチS5+を試したが不発に終わった。
周囲に家はないのに、何故か岸際にポツンと郵便受けが立っているクリークを進む。このクリークでは倒木周りにマングローブジャックやクイーンフィッシュがウロウロしているので、気合を入れてキャストを繰り返す。マゴチを釣ってボロボロになったベイスカッド128Fではサイズが大きいようなので、途中からX-80トリックダーターに交換。テンポ良く探るが、このルアーとも違うようだ。テリーがDDパニッシュでストラクチャー周りを攻めると、58cmの元気なバラマンディがルアーを咥えた。まだ魚がいるようなので、素早くリリースして2匹でピンポイントを攻める・・・そのつもりが、いきなりテリーがミスキャストでルアーを引っ掛けた。ボートを寄せないと回収できそうにないので置き竿にして、彼は予備のタックルを持って再びキャスト。そうしたら、再び同じ場所にルアーを引っ掛けた。彼は体調がイマイチ本調子ではないので、集中力が下がっているようだ。
「大丈夫かぁ、テリ〜!!」と半分冷やかしながらルアーを放つと、見事に私のルアーもスタック。1つの枝に3つのルアーが引っ掛かった。狙っているポイントから2本のラインが伸びているので、非常にテクニカルなキャストが求められていたのは事実だが、魚を釣るにはもっと高い精度のキャストをしなければならないだろう。もちろん、私ももう1セット・タックルがあるので、これを置き竿にしておけば竿は振れるだろう。しかし、3本もラインが張られているポイントで魚を掛けたら、どんなトラブルが発生するか容易に想像出来る。結局ボートをストラクチャーに寄せてもらい、サンダーバードのテーマソングを口ずさみながらルアーを回収。バラマンディが房なりに巣くっていたかも知れない一級ポイントを潰した。
マングローブの根際を狙っているとテリーがDDパニッシュでバラマンディ(64cm)を掛けた。この魚は口から小魚を何匹も吐き出しながらエラ洗いをして激しくファイトする。結構な数の小魚を食べているくせに、ルアーまで口にしようとするのは凄い。水面に浮いてきた小魚を素早くすくい上げて、じっくりと観察する。サイズを測ると3cm〜6cm。テリーに魚の名前を聞くと、"グラスミノー"だと言う。多分、体が透き通っているからこのような名前が付いているのだろう。バラマンディが捕食しているのは、思いのほか小さい魚なのである。一方、DDパニッシュのリップを除いたボディサイズは9.5cmであり、食われていた小魚より遥かに大きい。このような事例が度々あるので、「"マッチ・ザ・ベイト"って本当なのか?」と疑問に思う事がある。魚達は、きっとその時その時で、食べやすいベイトを捕食しているのだろう。従って、ルアーアクションでも食べやすい"間"をあえて演出してやると効果的なハズ。
テリーに右ならえで、使っていたアスリートS9からDDパニッシュに交換し、彼と同じようにマングローブの根際を狙う。するとマングローブの太い根にやたらと引っ掛かるようになった。しかも、複雑に絡み合った根っこの奥の方。昔から気になってはいるのだが、DDパニッシュはルアーが水中に打ち込まれた際、他のルアーと違って水中でスライドするように流れる気がする。ストラクチャーの奥へルアーが自動的に入って行くので、潜んでいる魚を釣りやすいのだが、その反面、自分が思っている以上に奥深くに入るため根掛かりが増えるというリスクが伴う。シュガーディープの場合、キャスト直後の根掛かりというのは少ないので、こちらの方が安心して使えるのだが、使っているフックハンガー(エイト環)が細くて小さく華奢なので直ぐに変形する。しかも、ここから内部に水が入りトラブルを起こすことが多々あるので、近年は竿先にぶら下げる機会が減ってきている。この部分を強化するマイナーチェンジをメーカーがやってくれたら、豪州で相当人気が出るハズだ。
全体的にフラットシャローなクリークでテリーがロングAを使い、気難しいクロダイと遊んでいる。ここ数年、日本国内ではクロダイ、キビレが新たなターゲットとして注目されているが、豪州では遥か以前からルアーやフライのターゲットとして認知されていた。このようなベースがある中で、日本の小さくて優秀なルアーが豪州に広まるにつれて、クロダイ釣りにおける日本のルアーが非常に注目されているのは事実。オーストラリアン・バスでも日本のルアーが活躍する場面が多いと聞いている。大雑把な作りで良い大き目なルアーはチャイニーズルアーに任せ、お家芸ともいえるスモールサイズのルアーを主体に豪州で販売展開をすれば、まだまだシェアは伸びるに違いない。
私のリーズルアーに巨大なロング・トム(ダツ)が何度も襲い掛かったが、フッキングには至らなかった。魚はいるのだが、釣果が上がらないため、このエリアから出て、遠くに見えた鳥山へ船を走らせアボリジニの小屋がある岩場エリアの前で竿を振る。テリーがフライでクイーンフィッシュ(60cm)をキャッチした後、メタルジグで50cmを2匹キャッチ。彼のメタルジグにはバイト連発なのだが、この間、私のローリングベイト77にはワンタッチもない。リトリーブスピードを変えたり、カウントダウンをしながらリトリーブする層を変えたりしたのだが、このありさま。アレコレ試している間に群れは移動してしまい周囲は沈黙。20分程のチャレンジだったが、メタルジグの威力を見せ付けられっぱなしの状況は、深く私の脳裏に刻まれた。
母船ピクー近くに移動し、マングローブ際を攻める。X-80トリックダーターに60cmUPのバラマンディがヒット。ボート間際で2回の派手なエラ洗いをしてルアーを吹き飛ばして逃げていった。やはりバラマンディ釣りの醍醐味は、間近で見るこのド派手なエラ洗い。ルアーを見事に吹き飛ばす様は、敵ながらアッパレだ。テリーはすかさずX-80SWにルアーを交換し、私がヒットさせたポイントにルアーを打ち込むと2連発バイト。しかし、フッキングには至らず、魚は消えうせた。
ストラクチャーフィッシングがメインとなるバラマンディ釣りだが、気晴らしに反対側の何もない方へアスリートS9をブン投げてトウィッチをしていると、突然ルアーをひったくられた。クイーンフィッシュかトレバリーかと思いきや、60cmのバラマンディ。やはりアラクンのバラマンディは、何もないフラットなエリアをスクールしているヤツがいるようだ。テリーがビーフリーズのコピールアーであるエクスキャリバーのXt3トウィッチベイトを使い50cmを仕留めたのを見て、すかさずアスリートS9から本家のビーフリーズSに交換。1投目で55cmをキャッチ。続いて、25cmのクロダイも釣り上げて、本家としての面目躍如か!?
しかし、豪州においては、どちらが本家か判らなくなっている感じがする。ケアンズ市内のタックルショップでは、ビーフリーズの価格がA$32.95であるのに対し、エクスキャリバーは2ドルも高いA$34.95で売られているのだ。因みにエクスキャリバーはサミーのそっくりさん、ジミーを作っているメーカーでもある。ネーミングからして明らかに確信犯であるが、若干、細部のデザインが異なっておりオリジナル性をさりげなく主張していたりする。
これまで試していなかった新たなクリークに入り、様子を伺うことにした。先ずはクリーク入り口のディープエリアにビーフリーズSを落とし込み、反応を見るが魚信はない。船を進めていると、高速で泳ぎ回る魚の群れを発見。すかさずフライタックルを手にしてキャストを始めたテリーが、クイーンフィッシュ(40cm)をキャッチ。私のCCプレデターにも数回アタックがあったのだが、フッキングには至らない。回遊性の魚は、直ぐに何処かへ姿を消してしまうため、深追いはせず地道な作業を繰り返すマングローブ際狙いに戻る。1か所だけ小さなベイトの群れが集まっている場所を見つけたので、ビーフリーズSを打ち込むとバラマンディ(60cm)が出た。これとは別に数匹の魚がルアーを奪い合うように顔を出したので、即座にフォローを入れる。再びビーフリーズSで同サイズをキャッチ。更なる追加をするため同じポイントにルアーを打ち込むと、25cmの鉄砲魚が飛び出した。
エンジン音を響かせ、こちらに近づいてくる船があった。丁度、魚の食いが立っている時なので、「嫌なタイミングの訪問者だなぁ」と思いつつ竿を振る手を止める。近づいて来たのは洋上パトロールをしている制服2人組み。ワッペンを見ると1人がPoliceで、もう1人がQueensland Boating and Fisheries Patrol。挨拶を交わした後、1人がこちらの船に乗り込んできた。彼は必要な書類と装備品の保管状況を時間をかけてチェック。ライブウェル内を覗き込んでレギュレーション違反の有無を確認、バラマンディのクローズド・シーズン(25/Sep/2009)を示しながら私達の滞在期間を聞き取る。
よっぽど暇なのか、随分ジックリ時間を掛けて検査するが、このようなチェックは、カルンバで釣りをした時にもあった。私自身は違法行為をしている自覚はなくても、ガイドが法を破っていればアウト。日本と違って、豪州では違法行為に対して非常に厳しく対応するため、彼らのチェックを受けるのは結構ドキドキするのである。
パトロール2人組のチェックは問題なくパス。案の定、活性の高かった魚達は、何処かに消えうせてしまいルアーを打てども反応はない。丁度、お昼の時間になったので母船ピクーへ戻る。今日の食事は、普段生活しているフロアの上にあるバーベキュー・デッキで。サイモンが常設されている鉄板に油を引き、料理の準備を始めた頃、聞き覚えのあるエンジン音がする船が近づいてきた。音のする方を見ると、「また、あなた方ですか〜」って感じ。
これから昼飯だというタイミングでパトロールをするのは、悪いヤツラを一網打尽にするために効率が良いからなのだろうか。彼らは母船ピクー船内を調べ始めた。航海日誌や点検整備記録のチェック、安全装備品の確認など、じっくり時間を掛ける。幾つかあった指摘事項はシートに書き込みサイモンに渡す。高圧的な態度ではないため威圧感はないのだが、"不適切な事は見逃さないぞ"という鋭い視線で検査をする姿はちょっと格好良く見えてしまった。
一通りチェックが終わったので、雑談を交わして彼らとはグットバイ。クソ真面目な顔をしていたサイモンがにこやかになり、ステーキを焼き始めた。食欲をそそるイイ匂いが辺りに漂い、お腹が一段と減る。数分後、テーブルに出されたのは1つのお皿に盛られた焼肉定食。今回も私のためにご飯を用意してくれた。しかし・・・お茶と味噌汁がないのである。やっぱり汁物が欲しいというのが率直な気持ちなのだ。テリーのお宅で食事をさせてもらう時があるが、これまで汁物が出て来た記憶がない。豪州人は、汁物を一緒に摂る食習慣がないのだろうか。
テリーとサイモンに、つたない英語を駆使し、身振り手振りをしながら日本の食事を説明する。お茶碗にご飯をよそって、お椀にお味噌汁を入れて、お皿におかずがのって、お茶と漬物があるんだと。ケアンズ市内のスーパーに行けばグリーンティーや味噌は売っているようだが、量が多く小さなパックがないらしい。私以外に日本人客はおらず、今後も予定はないため購入は諦めたようだ・・・と言うことで飲み物は、毎度コーラなどの炭酸飲料になってしまうのである。ご飯とコーラは、とてもミスマッチなのだ。
午後1時半、午後の部がスタート。母船ピクーから少し南下したところにあるクリークに入る。開始5分、ビーフリーズSでバラマンディを掛けたが、マングローブに潜られてフックオフ。直ぐにテリーがX-80SWで魚を掛け、同じようにマングローブに潜られた。しかし、彼は上手に魚を誘導し40cmのバラマンディをキャッチ。プロとアマチュアの違いはこんなところにも現れるのだ。このクリークの魚達は、マングローブの根がタコ足のように盛り上がり、柵状になっている所に付いている様子。引っ掛かる事を恐れずに根と根の間にルアーをバンバン打ち込むと、魚が反応するので面白い。キャスティングの精度が低いと、こんな楽しい事は味わえないのである。
テリーはX-80SWで55cmを追加。一方、私はビーフリーズSでバラマンディを追加した後、トリックダーターで2匹ロスト。定番ルアーのシャッドラップSR9には反応がないのだが、トリプルインパクトTP0012には様々な魚がアタックする。トリプルインパクトで釣れたのはブラシートレバリー(25cm)。魚は良く反応するのだが、フッキングに難があり、何度も悔しい思いをした。このクリークではビーフリーズSでフィンガーマーク(35cm)を釣って打ち止め。ビーフリーズは魚種を選ばず、良く釣れるルアーであることを再確認した。
午後2時半を回り、ボートデッキは目玉焼きが焼けそうなくらい熱くなっている。これまで裸足でいたテリーは、さすがに堪らなくなってクツを履いた。こんな状況なので、魚が沈んで今まで使っていたルアーにパタリと反応がなくなった。何か使えるルアーはないかとボックスの中を覗き込んだ時、ふとアスリートS12が目に留まった。これまでの遠征ではシンキングルアーの出番がなく、ボックスに入れてくる事はなかったのだが、アラクンの釣りについての事前情報が全くなかったので、もしもの時にと、お守りのつもりで持ってきてあった。
「試しに使ってみるかっ」って感じで、使ってみたらビンゴ。今まで何の反応もなかったポイントで突然、70cm前後のバラマンディがルアーに襲い掛かる。口の中にスッポリとルアーが入ったのが確かに見えたのだが、次の瞬間には吐き出された。この間、竿を持つ手は何のアタリも感じず唖然とする。これまで結構な数の魚を釣ってきたが、アタリがあったと感じているのは極一部で、実際は今回のように感じる事が出来ないようなバイトが沢山あるに違いない。
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TOSHI |
TERRY |
バラマンディ |
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バラクーダ |
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マゴチ |
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クロダイ |
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クイーンフィッシュ |
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鉄砲魚 |
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マングローブジャック |
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フィンガーマーク |
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トレバリー |
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